今月のテーマ<内分泌の特定内科診療>

 

 

高浸透圧高血糖症候群を合併した「糖尿病性ケトアシドーシス」 Vol.3

 

 

教訓:Ⅰ型糖尿病の患者さんはインスリンの継続的な補充が不可欠です。

 

注射を自己判断で中断することによって、急性の糖代謝障害が生じます。

 

 

1)著しい高血糖(細胞内に糖が吸収されなくなります)

 

 

2)脱水(高血糖により利尿が促進されます)

 

 

3)意識障害(脳神経細胞が糖を活用できなくなります)

 

 

4)高ケトン血症によるケトアシドーシス

 

(インスリン欠乏により、糖が利用できなくなると、

 

エネルギー源として脂肪酸が利用され、

 

その結果、有機酸であるケトン体が生じ、血液が酸性に傾くため、

 

呼吸数を増やして二酸化炭素を排出して平衡状態を保とうとし、呼吸困難が生じます。)

 

 

医療サイドとしては、インスリンの再投与開始により、急激な血糖低下を来たすと、

 

浸透圧も急速に低下するため脳浮腫や低カリウム血症が

 

起きやすいことに十分注意しなくてはなりません。

 

 

ただし、今回のケースでは、非常に高い血糖値のために糖尿病性昏睡を来していたことから、

 

その調節の兼ね合いの決定は困難を伴ったであろうことが推察されます。

 

認知行動療法の柱の一つである「問題解決法」は、「行動」に変化を与える方法です。

 

「行動」に変化を与えるには、ほんの少し、人によってはかなりの勇気が必要です。

 

とくに、「人間関係がうまくいかない、苦手だ」とおっしゃる方は、工夫を試みてみましょう。

 

 

「ひとりでは無理、自信がない、勇気がない」と思っている方でも、カウンセラーと一緒に

 

作戦を立てることからはじめてみるのはいかがでしょうか。

 

 

工夫すればうまくいく人間関係もたくさんあります。

 

それを端から「苦手」と決めつけていては、克服する大事なチャンスを失います。

 

ますます苦手になって支障が出てきます。

 

 

さらに別の場所に移っても、同じようなタイプの人・状況に出くわします。

 

「苦手意識」がずっとくっついてくることになります。

 

 

確かに行動に移さなければ、それによる直接的な、

 

その場の小さな失敗だけは避けられるでしょう。

 

しかし、それは長い目で見れば問題の先延ばしに過ぎません。

 

 

結局、その繰り返しとなり、将来へのツケを大きくしてしまうことになります。

 

 

『まずは実行あるのみ!但し、綿密な計画を立てて‼』というのが「問題解決法」です。

 

将来への展望や自身に繋がる成功への道を、少しずつ確かなものにしていきましょう。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 今月のテーマ<内分泌の特定内科診療>

 

 

高浸透圧高血糖症候群を合併した 「糖尿病性ケトアシドーシス」 Vol.2

 

 

現症:バイタルサイン 意識水準JCSⅡ-20、脈拍92/分、血圧118/72mmHg,

 

呼吸数28/分、体温37.1℃

 

 

栄養状態:身長180㎝、体重62㎏⇒BMI19.1(概ね正常範囲)

 

 

診察所見:眼球結膜(黄疸なし)、眼瞼結膜(貧血なし)、舌は乾燥、

 

心音・呼吸音に異常を認めず、腹部平坦・軟で、肝・脾を触れず。

 

 

尿検査:蛋白(-)、糖(4+)、ケトン体(4+)

 

 

ドクトル飯嶋の見立て:現病歴から、シックデイにおけるⅠ型糖尿病のインスリン注射中断による

 

糖尿病性ケトアシドーシス

 

 

シックデイとは、糖尿病患者が、心身のストレス、

 

消化器疾患や外傷、感染症などにより体調不良となり、

 

食欲不振となることで食事ができない状態を指します。

 

 

その他、舌の乾燥は脱水、発熱は感染症,検尿での高度尿糖は高血糖状態、

 

ケトン体高度出現はケトアシドーシスを裏付けます。

 

 

意識障害は、脱水症と異常高血糖、糖尿病性ケトアシドーシスによる糖尿病性昏睡と考えます。

 

 

ドクター飯嶋の対処法:安全な環境下で血糖値のコントロールを図る必要があるため、

 

某病院の内分泌代謝科(糖尿病科)を紹介しました。

 

 

入院先の病院での経過:入院直後に簡易測定器で測定した血糖値は

 

測定可能範囲を超える異常高値であったため、

 

ただちに生理食塩水の点滴と静脈内インスリン持続注入を行うことによって、

 

患者の意識レベルは改善しました。

 

 

しかし、翌朝から再び意識障害が進行してしまいました。

 

 

頭部CT検査で脳浮腫を認めました。

 

不整脈を伴っていたため心電図で確認すると低カリウム血症の所見があり、

 

補正を試みたが、呼吸困難に陥り、不幸な結果になってしまったとのことです。

今月のテーマ<内分泌の特定内科診療>

 

 

高浸透圧高血糖症候群を合併した 「糖尿病性ケトアシドーシス」 Vol.1

 

 

 

血糖値が著しく高くなると高浸透圧をきたし、

 

また高度な脱水状態に陥ることから、多彩な精神神経症状を呈します。

 

特に意識障害が進行する糖尿病性昏睡は、一旦発症すると、

 

適切で速やかな処置がなされないと、

 

生命にとって、とても危険な状態になります。

 

これが高浸透圧高血糖症候群です。

 

 

 

また、高度のインスリン作用不足により、高血糖と著しいケトン体の蓄積により、

 

脱水と意識障害(糖尿病性昏睡)をきたす病態が、糖尿病性ケトアシドーシスです。

 

 

 

症例を提示します。

 

50代男性。

 

意識障害を主訴に妻に伴われて来院。

 

 

 

現病歴:今朝、意識がもうろうとしているところを家族が気づきました。

 

2日前に食欲がなく、吐き気もあって食事がとれないためインスリン自己注射を中止したそうです。

 

1週間前から38℃台の発熱と頭痛とのどの痛みが続いたとのことでした。

 

 

インスリン治療は5年前に現在通院中の病院で1型糖尿病と診断されて以来、続けてきたとのことです。

 

 

家族歴:糖尿病等はありません。

 

 

この男性の診察所見は、次回ご紹介いたします。

高円寺南診療所は<自然志向>の外来医療機関です。

 

<自然志向>の医療は栄養管理をとても大切な柱の一つとします。

 

そこで高円寺南診療所の<自然志向>とは何か、簡単にご説明いたしましょう。

 

 

 

1)御自分の頭(判断)と足で通院していただくこと(なるべく入院しないで済むように!)

 

 

2)働きながら、社会参加しながら無理なく健康の維持増進をはかること

 

 

3)自然療法(生活リズム維持食事・運動・心理療法)を基本に据えること

 

(なるべく過剰な薬物療法や手術療法のお世話にならないように!)

 

 

4)<養生>と<鍛錬>のバランスを維持することこそが最高の予防法であり、

 

その予防に勝る治療はないことを悟ること

 

 

5)制度的な医療に委ねるだけでは健康になれないし、

 

(ライフワークを見つけ、生き甲斐をもち、自分と他人の幸福のために投資し、

 

 芸術的な感動を他者と共有すること!)

 

自分の健康ばかり気に掛けていても決して幸福になれないことを悟ること

 

 

 

つぎに保険が適用される外来栄養食事指導の対象者についてご説明いたしましょう。

 

 

それは厚生労働大臣が定める特別食を医師が必要と認めた患者さんです。

 

(初診月は2回まで、以降は月に1回までが保険適用となります)

 

 

以下の対象疾患をご覧ください。

 

 

高円寺南診療所で実績のあるものは、特に

 

◎すでに多数の実績がある疾患

 

〇医師のみで対応してきたが、今後は管理栄養士による指導が望ましい疾患

 

としましたので、ご参考になさってください。

 

 

<消化器>

 

〇胃・十二指腸潰瘍、食道胃腸の切除術後、

 

〇クローン病、 〇潰瘍性大腸炎、

 

〇急性・慢性肝炎、〇肝硬変、ウィルソン病、閉塞性黄疸、

 

〇急性・慢性膵炎

 

 

<循環器>

 

◎心臓疾患(食塩6g/日未満)、

 

〇高血圧症(食塩6g/日未満の指示がある場合)

 

 

<腎臓>

 

〇急性•慢性腎炎、〇急性•慢性腎不全、〇ネフローゼ症候群

 

 

<代謝>

 

◎高度肥満症(BMI≧35)肥満度3以上

 

◎脂質異常症

 

(LDL-コレステロール:≧140mg/dL HDL-コレステロール:<40mg/dL、

 

中性脂肪:≧150mg/dLのうちいずれかに該当する場合)、

 

◎痛風、◎糖尿病

 

 

<貧血>

 

◎鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン:≦10g/dL)

 

 

<妊娠>

 

妊娠高血圧症候群(食塩6g/日未満)

 

 

<アレルギー>

 

食事性アレルギー(9才未満)

 

 

注意していただきたいこと

 

<保険適用対象外となるケース>

 

◎中等度までの肥満(BMI25~35、肥満度2まで)、

 

◎高尿酸血症(痛風発作の未経験者)、◎ 糖代謝異常、 ◎鉄欠乏由来以外の貧血、

 

〇9才以上の食事性アレルギー、〇がん、◎拒食症については自由診療(全額負担)になります。

今月のテーマ<内分泌の特定内科診療>

 

 

「重症急性膵炎」

 

 

外来で腹痛や背部痛、吐き気や嘔吐を訴える患者さんは少なくないのですが、

 

そのような場合に、いつも頭を過ぎるのは急性膵炎や急性虫垂炎(俗に盲腸炎)などです。

 

診察ベッドに横になっていただき、前かがみで腹痛が軽快するときは、特に急性膵炎を疑い、

 

ただちに腹部超音波検査と胸や腹部のレントゲン検査を行います。

 

中高年の男性が大量飲酒後に起こすアルコール性急性膵炎が代表的です。

 

 

しかし、女性も男性の半数程度の頻度で発症し、

 

その原因は胆石による胆石性急性膵炎あることが多いです。

 

 

急性膵炎と診断したら、次には重症度の判定が必要ですが、

 

まず、年齢です。70歳以上は要注意です。

 

そして、動脈血中の酸素分圧≤60㎜Hg

 

または人工呼吸を必要とするような呼吸不全かどうかどうかを見極めます。

 

動脈採血して酸素分圧を分析することは緊急設備がある病院でないと実施できないので、

 

簡便にかつ迅速に測定できる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)計により、

 

動脈血酸素飽和度が90%未満かどうかで判断しています。

 

 

次のステップとしては

 

全身性炎症反応症候群に該当するかどうかを迅速に判断しなければなりません。

 

 

具体的には、以下の項目です。

 

1)体温>38℃あるいは<36℃

 

2)脈拍数>90/分

 

3)呼吸数>20/分あるいは動脈血中二酸化炭素分圧<32mmHg

 

4)白血球数>12,000/ または<4,000/ または10%超の幼弱球の出現

 

 

以上のうちで、一般の診療所で即座に確認できるのは①、②および③のみです。

 

しかし、この3項目が該当すると全身性炎症反応症候群と診断できることになっています。

 

 

そうすると、激しい腹痛を訴える患者さんの多くが、これに該当してしまいます。

 

急性膵炎の重症度判定を判定基準により厳密に行うためには、

 

血液検査の結果を待たなくてはならないため、手遅れにならないよう注意が必要です。

 

 

したがって急性膵炎を疑った場合は、重症度に関係なく、

 

緊急入院できる準備をし、24時間安全が確保される環境に移送することが大切です。

今月のテーマ<消化器・内分泌の特定内科診療>

 

 

「劇症肝炎」

 

 

劇症肝炎とは、肝炎のうち、

 

症状が表れて8週間以内に高度の肝機能障害を来たすものです。

 

そのために特徴的な羽ばたき振戦をはじめ

 

昏睡(肝性脳症)や血液凝固機能の低下による出血を来します。

 

B型肝炎によるものが約4割で最多ですが、

 

原因不明が約25%に及びます。

 

なおB型肝炎による急性肝炎の2%近くが劇症化します。

 

 

「劇症肝炎」では、肝臓の解毒分解機能が低下して、

 

血中のアンモニアが増加(高アンモニア血症)する結果、脳障害をもたらします。

 

それが肝性脳症ですが、Ⅱ度以上が本症の診断基準です。

 

しかし、臨床現場で大切なのは、肝性昏睡Ⅰ度を見落とさないことだと思います。

 

 

 

それでは、肝性脳症Ⅰ度の精神症状をご紹介いたします。

 

睡眠、覚醒リズムの逆転(昼夜逆転)、多幸気分(何となくハイ)、

 

ときに抑うつ状態

 

だらしなさ、気に留めないぞんざいな態度

 

 

 

いかがでしょうか、上記の症状だけで専門医が肝臓病を見抜くことが可能だと思いますか。

 

少なくとも昼夜逆転の生活の上に、

 

情緒不安定な受診者が少なくない都市部の医療機関では、

 

残念ながら、ほぼ不可能だと思います。

 

可能だとしたら、それは普段からその人の情緒状態や行動パターンを熟知していて、

 

その微妙な変化に気づくことのできる家族と主治医との連携ができている場合、

 

普段から患者さんを心身両面から継続的にケアしている

 

心身医学の専門家(心療内科専門医)などによる診療の場合に、

 

ほぼ限られると思います。

最終的には、食べたら嘔吐、飲んだら下痢」という状態になりました。

 

 

その結果体重が2ヶ月ほどで73㎏から66㎏まで落ちてしまいました。

 

 

体が干からびるか?』 と思いました。

 

  

 

 

一睡もできない状態も続き、まともに思考することなど到底できませんでした。

 

 

このまま死ぬのではないか?』 という恐怖に支配されていました。

 

 

自分を責めてばかりいました。

 

 

地獄のどん底にいた私にも、やがて転機が訪れました。

 

 

高円寺南診療所お世話になったのでした。

 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

前回からのテーマである認知行動療法のもう一つの柱、「行動」に変化を与える方法、

 

すなわち「問題解決法」について具体的にお示しいたしましょう。

 

 

例えば、職場に怖くて苦手だなと思う上司がいたとしましょう。

 

「できればその上司とはやりとりしたくない。」

 

でも避けていると、ますます慣れずに苦手になってしまいます。

 

 

そこで、「逃げずにあえて上司と会話をする」というミッションを掲げます。

 

 

まず、成功するためにどんな準備をしたらいいのか、カウンセラーと作戦会議をします。

 

そこで、自分と上司との間に起こりうることを予測します。

 

そうすることで、その時、具体的にどう対処するのかを予め用意しておくのです。

 

 

もちろん失敗するかもしれません。

 

しかし、一度や二度の失敗でへこたれてはいけません。

 

これは「実験」だと思ってください。

 

「実験」してみることで検証することができます。

 

 

何事も試しに取り組んでみること、実行することこそ大事なことです。

 

たとえ失敗しても、そこから学ぶことはたくさんあります。

 

それを無駄にせず、次の機会に生かせばよいわけです。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

今月のテーマ<循環器の特定内科診療>

 

 

「解離性大動脈瘤」

 

 

<症例報告>50代の男性。職場の検診の胸部レントゲンで異常陰影を指摘され来院。

 

自覚症状はない。

 

6か月前に背部痛のため整形外科を受診し、鎮痛剤を処方されたが改善せず。

 

 

聴診:第4肋間胸骨左縁に3/6度の拡張期雑音

 

 

胸部レントゲン写真読影:胸部大動脈瘤

 

 

高血圧のため降圧療法を開始しました。

 

手術目的で某大学の心臓血管外科に紹介しましたが、ご本人は手術を拒否されました。

 

その代り、ご本人は禁煙をはじめ減塩につとめ「水氣道」に参加して減量にも成功されました。

 

半年に1回ほど継続して通院し、やっと手術を受ける覚悟ができましたが、担当の外科医から、

 

手術しないで経過で行けそうだと保証されて、

 

喜んでおられました。その後、米国に移住されました。