消化器・代謝内分泌内科Vol.1

今月のテーマ<消化器・内分泌の特定内科診療>

 

 

「劇症肝炎」

 

 

劇症肝炎とは、肝炎のうち、

 

症状が表れて8週間以内に高度の肝機能障害を来たすものです。

 

そのために特徴的な羽ばたき振戦をはじめ

 

昏睡(肝性脳症)や血液凝固機能の低下による出血を来します。

 

B型肝炎によるものが約4割で最多ですが、

 

原因不明が約25%に及びます。

 

なおB型肝炎による急性肝炎の2%近くが劇症化します。

 

 

「劇症肝炎」では、肝臓の解毒分解機能が低下して、

 

血中のアンモニアが増加(高アンモニア血症)する結果、脳障害をもたらします。

 

それが肝性脳症ですが、Ⅱ度以上が本症の診断基準です。

 

しかし、臨床現場で大切なのは、肝性昏睡Ⅰ度を見落とさないことだと思います。

 

 

 

それでは、肝性脳症Ⅰ度の精神症状をご紹介いたします。

 

睡眠、覚醒リズムの逆転(昼夜逆転)、多幸気分(何となくハイ)、

 

ときに抑うつ状態

 

だらしなさ、気に留めないぞんざいな態度

 

 

 

いかがでしょうか、上記の症状だけで専門医が肝臓病を見抜くことが可能だと思いますか。

 

少なくとも昼夜逆転の生活の上に、

 

情緒不安定な受診者が少なくない都市部の医療機関では、

 

残念ながら、ほぼ不可能だと思います。

 

可能だとしたら、それは普段からその人の情緒状態や行動パターンを熟知していて、

 

その微妙な変化に気づくことのできる家族と主治医との連携ができている場合、

 

普段から患者さんを心身両面から継続的にケアしている

 

心身医学の専門家(心療内科専門医)などによる診療の場合に、

 

ほぼ限られると思います。