呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:テーマ:アナフィラキシー・ショック対策(その2)

 

<エピペンの使い方®について>

 

蕁麻疹

 

アナフィラキシーショックの症状には悪心(おしん)と嘔吐(おうと)がみられます。

 

<原因> 

抗菌薬などの薬剤、食物(そば)、虫刺症(ハチ毒)、物理的刺激など多岐にわたります。

 

たとえば、お好み焼き粉などの粉製品を開封後、

 

長期間室温保存することで混入したダニが繁殖し、

 

その製品を摂取したことによるアナフィラキシーが報告されています。

 

 

アナフィラキシーショックは、IgE抗体を介する免疫学的抗原・抗体反応であり、

 

2回目以降に強く起こることが重要です。

 

 

<症状> 

起因物質投与後、数分で粘膜浮腫、気管支痙攣(けいれん)、

 

血圧低下などの広範な症状を呈します。

 

早期の対応のためには前駆症状についての知識が役に立ちます。

 

気分不快感、違和感、唇や手足のしびれ、

 

心悸亢進(動悸)などから始まることが多いです。

 

症状は次第に、血圧低下、頻脈(脈拍数の増加)、皮膚紅潮、

 

蕁麻疹(じんましん)、顔面蒼白(顔が真っ青になる)、

 

喘鳴(呼吸がゼイゼイする)、呼吸困難、下痢などが生じます。

 

 

違和感として、悪心・嘔吐があります。

 

胃内容物(ときに十二指腸・小腸内容物)が不随意に逆流し、

 

食道・口腔から体外に排泄されることを嘔吐といい、

 

嘔吐したくなる差し迫った感覚を悪心(嘔気、吐き気)といいます。

 

なお、重症になると意識が消失し、死に至ることがあるため緊急対応が必要です。

 

 

<治療>

迅速な処置が決め手になります!

 

①アドレナリン自己注射用キット(エピペン®)を携帯していれば、それ使用します。

 

②エピペン®をもってなければ、呼吸、循環(脈拍数など)の状態を直ちに把握して、

 

援助者(救急隊、可能であれば蘇生チーム)に連絡する。

 

③医療機関でアドレナリンを大腿部(中央前外側)に筋注し、

 

患者を仰臥位(あおむけ)にして下肢を挙上する。

 

ここまでは、原理的には①と同じです。

 

 

その後、必要に応じて酸素投与、静脈ルート確保、心肺蘇生を行います。

 

 

補足説明)専門的な話になりますが、アドレナリンを投与するのは、

 

血圧を回復させるだけでなく、c AMPを介して

 

アナフィラキシー反応を抑制に直接役立つことが知られています。

 

 

<検査>

症状が落ち着き、投与薬剤の影響を受けなくなった時期に行います。

 

そこでアレルゲンの同定検査を行います。

 

①血清特異的IgE抗体検査

 

②プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト

 

高円寺南診療所では①のみを実施しています。

 

感度は低いもののアナフィラキシー反応を誘発するリスクがないからです。

 

②は感度が高いのですが、アナフィラキシー反応を誘発するリスクがあります。

消化器系の病気

 

テーマ:胃がん検診(その1)

 

<胃がん検診の意義と目的>

 

 

国の指針(2016年4月1日から適用)では

 

胃がんの一次検診では:問診、胃X線検査、胃内視鏡検査が勧められています。

 

 

日本対がん協会が2015年度に全国の支部で行った胃がん検診の結果では、

 

胃がん検診を1万人が受けると、638人が「異常あり」と判定され、

 

精密検査(二次検診)を受けるように勧められます。

 

精密検査を受けた人は516人で、その中から12人に胃がんが発見され、

 

1万人中12人という割合になります。

 

 

この数字をどのように判断するかは、個人の価値観によって異なるのではないかと思います。

 

ただし、高円寺南診療所のポリシーとしては、

 

1万人中9988人の方のメリットも同時に考慮するようにしています。

 

 

①「胃X線検査」

 

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2006年)で、

 

「対象とする集団の胃がんによる死亡率を減少させる」

 

という胃がん検診の目的に合致すると科学的に証明され、

 

「効果あり」と判定されています。

 

 

検査法は、まず、空気を出して胃を膨らませる発泡剤を飲みます。

 

その後、X線を反射するバリウムという造影剤を飲んで、胃にX線を当てながら撮影します。

 

撮影したいところにバリウムがうまく付着するように体を上下左右に動かして、

 

7~8枚撮影するのが一般的です。

 

胃X線検査は、一次検診で「異常あり」と判定された場合、

 

さらに詳しく検査するために精密検査でも利用されます。

 

検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は70~80%といわれています。

 

胃がんのほかに、胃潰瘍(かいよう)やポリープも発見でき、治療に結びつけられます。

 

 

高円寺南診療所では胃X線検査を高く評価しています。

 

その理由は、胃がんや胃潰瘍、その他器質的胃炎の診断に役立つばかりではなく、

 

慢性胃炎の大多数を占める症候学的胃炎(器質的病変を認めないもの)や、

 

健診受診者の約15%にみられる機能性ディスペプシア

 

(胃のもたれ、みぞおちの痛みなどの腹部症状を呈するが

 

症状の原因となる器質的・全身的・代謝性疾患を認めないもの)

 

のケースであっても、胃全体の解剖学的位置や周辺臓器との位置関係をはじめ、

 

胃の形態と機能の全体像を観察することができ、

 

その後の治療に役立てることができるからです。

 

 

問題点として、X線による放射線の被曝(ひばく)がありますが、

 

自然のなかで浴びる放射線と同程度なので、健康に大きな影響を及ぼすことはありません。

 

 

②「胃内視鏡検査」については2014年に同ガイドラインが見直され、

 

一次検診の方法として推奨されました。

 

ただし、死亡率減少効果を判断する証拠が不十分で、

 

対策型検診として実施することはすすめられていません。

 

また麻酔薬や鎮痙剤を使うので、これらの薬による副作用もあります。

 

薬に対するアレルギーのある人は必ず医師に相談しましょう。

 

高円寺南診療所では現在、この検査を積極的に行っていませんので、

 

必要な場合は、適切な医療機関にご紹介いたしております。

テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その1)

 

<ピア・カウンセリングについて>

 

 

高円寺南診療所のオフィシャルホームページをご覧くださっている皆様に

 

お知らせがあります。

 

 

高円寺南診療所の最大の看板は、患者の皆様だという考えについては、先週ご紹介した通りです。

 

 

たとえば、根本的な解決に向けての医師としてのアドバイスに対して、

 

「はい。…でも」と乗り気でなく、

 

まるで他人事のような反応の患者さんとのやりとりで

 

手詰まりを感じることがたびたびありました。

 

そのような場合に、同性で同年齢層かつ同じ病気の方の成功例のお話をさせていただくと、

 

一転して熱心に耳を傾けてくださることがありました。

 

こうした数々の例を通して、患者さん同士のもつ影響力が大きいことを学びました。

 

それが、ピア・カウンセリングとの出会いの端緒となりました。

 

 

皆様は、ピア・カウンセラーとか、ファシリテーターいう言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

 

今回はまずピア・カウンセリングとはどういうものなのかご紹介します。

 

 

ピアカウンセリングの「ピア」とは「仲間」「対等な立場の人」という意味です。

 

 

ピアカウンセリングとは、同じような立場や悩みを抱えた人たちが集まって、

 

同じ仲間としておこなうカウンセリングのことです。

 

以前は医療や福祉の分野で、障害を持った人たちの間で実践されていました。

 

現在は思春期の悩みやこころのケアが必要な人たちの間でも行われています。

 

しかし、これからは、慢性的な病気から難病に至るまで、

 

多くのことで困っている多くの患者さんの間でも

 

有効な取り組みになるのではないかと思います。

 

 

なぜか、というと、高円寺南診療所の患者の皆様同志が、

 

すでに自然発生的な、初歩的ピア・カウンセリングをはじめていたからです。

 

高円寺南診療所では、体と心の症状ばかりでなく

 

家庭や職場での社会適応が困難で苦しんでおられる方が少なからず通院されております。

 

そうした方々が、待合室など、ふとした切っ掛けで、

 

互いに同じ立場や体験をした仲間であったことに気づくことがあります。

 

このように同じ立場だからこそ分かり合える、

 

あるいは、こころの支えになることができるという

 

ピア・カウンセリングの基本に添う形でのご縁が自然に形成されていっています。

 

 

しかしながら、外来での待ち時間が長くならないよう、

 

一層配慮するようになってきてからは、自然発生的ピア・カウンセリングの場は、

 

水氣道の稽古や聖楽院でのレッスンなどに移行しつつあるようです。

 

そこでは、待合室より、一層、仲間意識が育まれやすい環境にあります。

 

このように、「同じ仲間」という意識を持つだけで、

 

解決に向けて開かずの門であると思い込んでいた関所の門を

 

スムーズに開くことができます。

 

 

また、ピア・カウンセリングで私たちは、

 

「機会があれば自分の問題を解決できる能力を持っている」と考えます。

 

そのためその人が自分の力で問題を解決できるように、

 

グループを通してサポートしていくことが目的になります。

 

専門家であるカウンセラーでさえ、来談者に代わって問題を解決するのではなく、

 

その支援を行っているのです。

 

 

したがって、望ましいピア・カウンセリングとは、

 

共感はするけれど個人的なアドバイスを与えない、

 

自分の思い込みで解釈をしない、その人の問題の結果責任は取らない

 

(つまり、その人の問題はその人の個人的な責任)

 

などの基本ルールについて十分に理解して実践できることが大切です。

 

 

ピア・カウンセリングの担当者をピア・カウンセラーといいますが、

 

職業的カウンセラーではないので、

 

専門家であるカウンセラー等の指導を受けておく必要があります。

 

いずれ、そのための環境整備をしたいと考えております。

血液・造血器の病気

 

テーマ:後天性血友病

 

(循環抗凝固因子による出血傾向)

 

 

血友病とは、血液中の凝固因子の異常により出血傾向を来すものです。

 

 

第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の先天的な活性低下によるものがそれぞれ、血友病Aまたは血友病Bです。

 

いずれも遺伝性疾患で先天性の病気なので小児科疾患と考えがちですが、

 

成人になってから後天的に発症するものがあるため、

 

内科医もこの病態を把握しておかなければなりません。

 

アレルギー専門医は、たとえ血液病の専門医ではなくとも、

 

自己抗体による病気の診断と治療のエキスパートであるため、

 

これを見逃すことがないよう心がけています。

 

 

これは特定の凝固因子に対する阻害物質(インヒビター)が

 

後天的に形成されて出血傾向を来す病態が知られています。

 

 

血友病Aの患者に輸血や第Ⅷ因子製剤を補充(補充療法)して

 

同種抗体による第Ⅷ因子インヒビターが出現することがある一方で、

 

輸血や補充療法とは無関係に自己免疫疾患(関節リウマチ、SLEなど)、

 

妊娠、悪性腫瘍、薬剤投与後などに出現することや、

 

全くの健常者に突然出現することもあります。

 

 

第Ⅷ因子活性の低下から全身の出血傾向を呈するものを特に後天性血友病Aと呼びます。

 

 

これは成人期以降に第Ⅷ因子に対するインヒビター抗体の出現が最も多く、

 

70歳代を中心に高齢者に好発し、

 

広範な斑状紫斑や皮下出血・筋肉内出血など全身の出血傾向を来たします。

 

活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長します。

 

 

採取した血液に外因系血液凝固因子を活性化させる部分トロンボプラスチンと

 

内因系の始まりである第Ⅶ因子を活性化させる薬剤(ヘパリンやカオリンなど)を加え、

 

血液が凝固するまでの時間(APTT)を調べます。

 

この検査で凝固時間の延長(時間がかかる)が見られたら、

 

内因系の異常が疑われ、血友病をまず疑います。

 

 

凝固第Ⅷ因子活性と出血の重篤度は相関しません。

 

凝固第Ⅷ因子活性が残存していても、タイプⅡのインヒビターが多く、

 

このインヒビターは希釈されるほど力価が高くなるという特性をもっているため、

 

重篤な出血を認めることがあります。

 

 

診断後は直ちに副腎皮質ステロイドなど免疫療法を開始し、

 

インヒビター力価を速やかに低下させることが必須です。

 

 

フォン・ビルブラント因子に対するインヒビターが発生しると、

 

後天性フォン・ビルブラント病を発症します。

 

 

抗リン脂質抗体症候群のループスアンチコアグラントは

 

リン脂質またはリン脂質に結合したタンパク質に対する自己抗体であるため、

 

特定の因子でなく多くの凝固因子(第Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ因子)の活性を阻害する。

 

この場合、出血傾向はみられず、血栓形成が問題になります。

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:薬物相互作用(1)

 

<喫煙継続を勧める困った精神科医の話>

 

 

精神科受診(困ったことに本人は99%、「心療内科受診」と申告しますし、

 

精神科医はほとんどが内科医でないのに心療内科を標榜しています。

 

また、精神科でなく神経科・心療内科のみを標榜する例が多数に登ります)の中断者で、

 

高円寺南診療所を受診される方は、昔も今も少なくありません。

 

その多くは喫煙者です。そして、さらにそのほとんどの方が

 

精神科医から禁煙を勧められたことが無いとの報告を受けます。

 

その中には困ったケースが紛れています。

 

喫煙を勧める精神科医が少なからず存在しているのです。

 

それには医学的な理由があります。

 

 

それは禁煙すると中毒症状が出る薬を内服させているケースです。

 

 

高円寺南診療所は、禁煙を積極的に推進していますが、

 

その理由は、喫煙が多くの病気の回復を根底から揺るがす元凶だからです。

 

そこで問題になるのが、精神科でオすでにオランザピン(シプレキサ®)

 

の処方を受けている喫煙者の方への対処です。

 

オランザピンは、統合失調症や双極性障害の治療に用いる非定型抗精神病薬です。

 

オランザピンは薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)のCYP1A2などで

 

主に代謝分解されます。

 

 

この事実を把握しないまま、単純に禁煙を勧めると、

 

オランザピンの中毒症状(錐体外路症状など)が出現する可能性があります。

 

 

ここで、錐体外路症状についてごく簡単に説明を加えます。

 

パーキンソン病に似た一連の症状です。

 

主に、手足がふるえる(振戦)、動きが遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(固縮)、

 

体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)、といった症状がみられます。

 

これらによって、顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股・突進歩行など、

 

いわゆるパーキンソン症状といわれる運動症状が生じます。

 

 

なぜ禁煙すると中毒症状がでるのかというと、

 

喫煙がオランザピンを分解するCYP1A2を誘導するからなのです。

 

わかりやすく言えば、喫煙はオランザピンの効き目を弱めてしまうのです。

 

そして禁煙によりCYP1A2が誘導されなくなると、

 

結果的に過剰に投与され続けていたオランザピンが

 

分解されなくなるため血中濃度が急上昇数するからです。

 

 

逆に言えば、まず、禁煙を成功させていれば、

 

オランザピンの処方は少量で済んだ可能性があります。

 

高円寺南診療所でもオランザピンを使用することがありますが、

 

喫煙しない患者さんに限定して処方しているためか少量で効果が発現します。

 

 

いずれにしても、相互作用の可能性を十分に説明し、

 

頻脈、激越 / 攻撃性、構語障害、種々の錐体外路症状、

 

および意識障害(鎮静から昏睡に至るまで程度は様々)などの症状が生じた場合には、

 

速やかに来院していただく必要があります。

 

 

神経・精神・運動器

 

テーマ:片頭痛(その2)

 

片頭痛の治療

 

 片頭痛の治療は大きくわけて2種類あります。

 

頭痛発作がおこった時になるべく早く頭痛鎮めるための治療法を

 

急性期治療(頓挫療法)と頭痛がある日もない日も毎日お薬を飲んで

 

頭痛発作を起こりにくくし、

 

また、頭痛発作が起こっても軽くすむようにするための予防療法です。

 

発作回数が月に数回以内で、片頭痛発作による生活への悪影響があまりなければ

・・・急性期治療を中心にします。

 

ただし、高円寺南診療所では、予防医学や自然医療を重視する立場から、

 

なるべく初回は、生活指導(緊張が和らぎ体温が上昇すると発作が出易くなるために、

 

誤った対処法-常に緊張を続け、体を冷やしている-などの修正)、

 

複合ビタミンB(B1,B2,B6,B12)および漢方薬

 

(呉茱萸湯をはじめ、苓桂朮甘湯、釣藤散など、体質に応じて使い分け)

 

を用いて、経過観察をしています。

 

少し、症状が緩和されて、セルフコントロールへの意欲が高まってきた方には、

 

フィットネス検査の後、水氣道®への参加をお勧めしております。

 

 

発作回数が多い場合や、生活への影響が強ければ

・・・急性期治療と予防療法を組み合わせて治療をします。

 

予防療法の効果が現れるまでに、通常1~2ヵ月の期間がかかりますので、

 

少なくとも2ヵ月は継続してみて、効果を判定してください。

 

 

 急性期治療(頓挫療法)には市販薬も含め鎮痛薬が広く使用されています。

 

2000年以降わが国でも、片頭痛に有効なトリプタン系薬剤

(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンなど)

 

が使用できるようになり、多くの片頭痛患者さんが恩恵を受けています。

 

 

 鎮痛薬の上手な使い方としては、

 

①頭痛発作のなるべく早期に使用することと、

 

②過剰に連用しないことです。

 

連用により鎮痛薬誘発性頭痛といわれる別の頭痛がおこってきます。

 

 

 トリプタンの登場により片頭痛の効果的な治療ができるようになり、

 

片頭痛による日常生活の支障やQOLの阻害は軽減できるようになりつつあります。

 

他方で、使用量が増加しトリプタンによる薬物乱用頭痛も報告されています。

 

トリプタン使用量の目安としては1ヵ月に10日以内というのが、多くの専門医の意見です。

 

月に10日を超えてトリプタンを使用している場合には、

 

予防薬を適切に併用してトリプタンの使用が月に10日以内ですむようにコントロールするべきです。

 

ただし、特殊な片頭痛などで専門医の管理の元で

 

一時的に10日以上使用することは問題ありません。

 

 頭痛の発作回数が多い場合や、頭痛の程度が高度の場合、

 

頓挫療法があまり効かない方は予防療法を併用するのがよいでしょう。

 

また、片麻痺性片頭痛や、脳底型片頭痛、遷延性前兆を伴う片頭痛、片頭痛性脳梗塞など

 

重大な神経障害をおこすおそれのある特殊な片頭痛の場合も予防療法が必要です。

 

 

 予防療法の治療目標:

①頭痛発作の回数を半分以下に減少させて、頭痛の程度を軽くすること、

 

②頭痛の持続時間を短縮し、急性期治療薬の効果を増強して、

 

頭痛による日常生活への影響を最小限にして活動性を改善することです。

 

 

予防療法により頭痛発作が完全に抑制できることもありますが、

 

完全に頭痛をなくすことを求めすぎるのは得策ではありません。

 

 

 予防療法にはCa拮抗薬やβ遮断薬といわれる薬剤がよく用いられています。

 

Ca拮抗薬として塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)が片頭痛治療薬として使用されます。

 

β遮断薬ではプロプラノロール、メトプロロール等がよく用いられています。

 

抗てんかん薬であるバルプロ酸やトピラマートも片頭痛の予防に有効です。

 

また、抗うつ薬、特に三環系抗うつ薬に分類されるアミトリプチリンも用いられています。

 

慢性的な痛みのために抑うつ的になることがありますが、

 

うつ状態でない慢性頭痛の場合にも有効であることが確かめられています。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「丘墟(きゅうきょ)」です。

IMG_1873

 

場所は外踝の前縁の直下線と下縁の水平線が交わるところの窪みにあります。

 

 

このツボを刺激すると胆嚢の断面積を大きくするそうです。

 

 

「胆嚢炎」「下肢の運動麻痺」「胸脇痛」「項頚部痛」に効果があります。

 

 

マッサージ、お灸をすると良いかもしれません。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:高プロラクチン血症は医原病か?

 

 

若い女性の原因不明の無月経の約20%が、高プロラクチン血症によるものだといわれています。

 

原因は、私ども内科医や精神科医あるいは婦人科医等の処方薬の副作用によるものが多いです。

 

 

概念:

プロラクチン産生下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)は、脳下垂体の腫瘍の一つで、

 

プロラクチンというホルモンを産生し、高プロラクチン血症を来たし、

 

無月経乳汁漏症候群を来たします。

 

 

 

生理:

プロラクチンに限らず、生体内にはホルモン分泌量を制御する仕組みがあります。

 

妊娠・授乳行為⇒プロラクチン分泌↑⇒LH(黄体化ホルモン)↓・

 

FSH(卵胞刺激ホルモン)⇒(中枢性)性腺機能(ゴナドトロピン)↓

 

⇒無月経・不妊

 

 

 

原因:

Ⅰ.抗ドパミン作用を有する向精神病薬:

 

①三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミン)

 

②抗精神病薬ブチロフェノン系(ハロペリドール)

 

③フェノチアジン系(クロルプロマジン、ベルフェナジン)

 

 

Ⅱ.抗ドパミン作用を有する消化器系薬剤:

①制吐剤(メトクロプラミド、スルピリド、ドンペリドン)は

 

ドパミン受容体を遮断するため、プロラクチン分泌も亢進します。

 

②H2受容体拮抗薬(シメチジン、ラニチジン)

 

 

Ⅲ.中枢ドパミン系に影響を与える降圧剤(α-メチルドパ、レセルピン)

 

 

Ⅳ.経口避妊薬(エストロゲン製剤)

 

原発性甲状腺機能低下症では、視床下部からのTRH分泌が上昇する結果、

 

プロラクチン分泌も亢進します。

 

症状:

高プロラクチン血症が女性に見られた場合、無月経、乳汁漏出、

 

不妊等を伴い無月経乳汁漏症候群としてしられています。

 

男性では自覚症状が出現しにくく、勃起不全などが出現しても

 

申告しにくい症状であるためか発見が遅れがちです。

 

下垂体性の高プロラクチン血症では、しばしば視野狭窄がみられます。

 

分娩後、長期間の授乳によりプロラクチンの分泌が亢進し、

 

ゴナドトロピン分泌が低下することによって生じる高プロラクチン血症は

 

キアリ・フロンメル症候群と呼ばれますが、

 

分娩と関係ないものではアルゴンツ・デル・カスティージョ症候群と呼ばれてきましたが、

 

いずれも微小な下垂体腫瘍の存在が否定できないことがあるため、

 

無月経乳汁漏症候群に括られるようになりました。

 

 

 

検査:

① 血中プロラクチン値を複数回測定して、いずれも≧20ng/mL

 

とくに100ng/mLを超える場合にはプロラクチン産生腫瘍の可能性を考えます。

 

②画像検査:MRIで下垂体および下垂体茎・鞍上部の病変を見つけます。

 

 

治療:

他の下垂体腫瘍と比較して特徴的なのは、

 

薬物療法が有効なので手術療法より優先されることです。

 

 

#1.持続性高プロラクチン血症の治療

 

1-1:薬剤によるものであれば、原因薬物の中止・変更をします。

 

1-2:原発性甲状腺機能低下症、先端肥大症、下垂体茎・鞍上部病変など、

 

     他疾患に伴うものは原疾患の治療をします。

 

 

#2.プロラクチノーマの治療

 

2-1:薬物療法はドパミン作動薬が第一選択です。

 

高プロラクチン血症では、原因と背景状況によって治療法が異なり、

 

妊娠や薬剤性のものでは、ブロモクリプチンを使わないこともあります。

 

ただし、産褥期の多くの高プロラクチン血症による母乳分泌抑制に用いられるのは

 

ブロモクリプチンです。

        

第一選択薬となるドーパミンD2受容体作動薬(ブロモクリプチン、テルグリドなど)には、

 

強力なプロラクチン分泌抑制作用があり、

 

血清プロラクチン値の正常化、腫瘍縮小効果は70%以上です。

 

ただし、副作用として消化器症状(嘔気・嘔吐)、起立性低血圧などが多いため、

 

服薬中止例が多く、薬剤中止によるプロラクチン値の再上昇、腫瘍の再増大が問題となります。

 

 

そこで、他の第一選択としては長時間作用型の選択的ドーパミン作動薬

 

カベルゴリン)が用いられます。

 

この薬剤は、週一回の低用量服薬で済み、寛解率も高く、

 

消化器症状などの副作用が少ないです。

 

この薬剤は、従来、パーキンソン病に使用されていましたが、

 

高用量では炎症性線維化反応により心臓弁膜症を起こすことが問題視されていました。

   

 

2-2:手術では薬物療法が無効な場合、

 

巨大な腫瘍による腫瘍圧迫症状(視力障碍など)が認められる場合、

 

将来挙児を希望する場合は、手術(経蝶形骨洞下垂体摘出手術:Hardy法)も検討されます。

   

 

2-3:放射線治療としてガンマナイフ、サイバーナイフがあります。

       

薬物治療無効例で手術で全摘できなかった症例、

 

再発した増殖性の高い腫瘍などを対象にします。

 

ただし、有効率は低く、下垂体前葉機能低下症をもたらすことがあるため、

 

必ずしも血清プロラクチン値の低下を目的として行う必要はありません。

 

<第5ステップ> その1

 

「人に助けを求めよう、人の力を借りよう」と決断できたら、

 

次は「助けを求める人を決める」段階に入ります。

 

 

この段階では、こんな考えを巡らせるでしょう。

 

○自分の悩みのために、時間や労力を割いてくれそうな人はいるだろうか。

 

○悩みを相談することで、その人の負担になりはしないだろうか。

 

●自分の気持ちに、真剣に寄り添ってくれる人はいるだろうか。

 

●自分より知識を持っていて、教えてくれそうな人はいるだろうか。

 

●自分の問題が解決するよう、良い助言をくれる人はいるだろうか。

 

●印は、今まで何度も挙げている通り、

 

相手に①情緒的サポート、②手段的サポート、③情報的サポートを求める、

 

ということです。

 

(第16~19回をご参照ください)

 

 

第14回の「コンボイ・モデル」でお話したように、

 

あなたの周りの人たち(サポーター)が、どの円に含まれ、

 

どのくらいいるのか、まずは当てはめてみましょう。

 

 

そして、自分が抱えている、今ある大事な問題について、

 

周囲のサポーターたちの誰に助けを求めるのが適切か、考えてみましょう。

 

もちろん、複数の人の力を借りることも大きな助けとなるでしょう。

 

 

臨床心理士は、自身が直接のサポーターであると同時に、

 

「その人が抱えている、今ある大事な問題について、

 

周囲のサポーターたちの誰に助けを求めるのが適切か」

 

ということをともに考え、検討するパートナーともなり得る専門家なのです。

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

 

テーマ:心不全の予防と治療(その1)

 

心不全は身近な病気です!

 

 

心不全は、患者・家族教育が最も重要で、

 

生活指導や服薬アドヒアランスを高めるチーム医療が効果的です。

 

超高齢社会にあって独居者の増加もあり、早期からの積極的介入が望まれます。

 

心不全の話は、どうしても難しく専門的になってしまうので、

 

無理をなさらず、理解できる範囲で、ご参考になさってください。

 

 

医師は、こんなふうに考えているのだという雰囲気だけでも、

 

感じ取っていただければ、と存じます。

 

 

心不全の症候:脈拍、血圧、呼吸数といったバイタルサイン、

 

爪の色、手足の冷たさ、皮膚の湿っぽさ、動悸、息苦しさ、だるさ、食欲、

 

咳、痰、浮腫、尿量などを常にチェックして、心不全の悪化を防止します。

 

 

心不全の病態:

心不全は慢性的な交感神経系緊張状態にあります。

 

ですから、交感神経系の緊張を更に強める刺激となる

 

過労、睡眠不足、精神的ストレスなどはしばしば致命的となります。

 

自律神経系である交感神経の過緊張は

 

RAA(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系、エンドセリン-1分泌、

 

ADH(抗利尿ホルモン:バゾプレシン)などのホルモン分泌を亢進させます。

 

Na利尿ペプチドやアドレノメドュリンは、

 

交感神経系、RAA系、エンドセリン-1分泌、

 

ADH(バゾプレシン)に対して拮抗的に作用します。

 

 

交感神経終末から放出される神経伝達物質は

 

ノルエピネフリン(ノルアドレナリンとも呼ばれる)です。

 

副腎髄質からもホルモンとして血中に分泌されます。

 

これはエピネフリンと共に、交感神経系を動かし、心拍を増加させ、

 

脂肪からエネルギーを放出し、筋肉の反応を増強する、

 

すなわち闘争反応あるいは逃避反応を制御する物質です。

 

このノルエピネフリンとよく似た物質に

 

123I-MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)があり、

 

心不全の重症度や予後予測に有用です。

 

 

心不全では交感神経活性の亢進により、

 

MIBGの交感神経終末からの消失が早くなるため、

 

継時的に集積が低下します。

 

123I-MIBG投与3~4時間後の後期像での

 

心筋シンチグラフィでの心縦隔比(H/M比)は増大します。

 

 

臨床像:

うっ血性心不全の呼吸困難は仰臥位(あおむけ)では

 

静脈還流が増加するため増悪し、坐位により軽快します。

 

浮腫は下肢や背側に顕著であり、

 

漏出液(タンパク質が少ない)の貯留によるため圧痕を生じます。

 

 

左心不全所見:

肺水腫は、肺うっ血とともに呼吸困難を来します。

 

心臓カテーテル検査で計測される肺動脈楔入圧の上昇は、左房圧上昇を反映します。

 

左室駆出圧(収縮能)が正常でも左室拡張能が低下すれば

 

うっ血性心不全となることがあります。

 

 

洞調律で左室駆出率が低下した心不全において、

 

最も実用的な心臓超音波所見は、僧房弁輪運動速波形のパターン分類で、

 

左室充満圧の上昇を示唆する左室駆出率のE / e’>15を見出すかどうかが有用です。

 

 

左室駆出率が維持された心不全の診断には、

 

心臓超音波検査等で左室駆出率≧40~50%が用いられています。

 

 

高拍出性心不全を来す病態には

 

①重症貧血、②甲状腺機能亢進症、③動静脈瘻があります。

 

 

心臓局所でのアンジオテンシンⅡは線維芽細胞からのエンドセリン分泌を介し、

 

心筋細胞でのBNP発現を亢進させます。

 

BNPとは主に心室で合成される心臓ホルモンです。生理活性があり、

 

腎機能の影響を受けますが、NT-proBNPはBNP前駆体のN端側フラグメントであり

 

生理活性が無いが、腎機能の影響をより受けやすいです。

 

 

治療:

心不全に有効な薬が多数あるとはいえ、

 

日常生活上の注意点を、医師に指示された通り守ることがすべての基本です。

 

安静度、運動プログラム、塩分・水分制限、体重コントロールに留意しながら、

 

処方された以下のような強心薬や利尿薬の規則正しい服用、

 

定期的な医師の診察が不可欠となります。

 

 

<慢性心不全>の治療には無症状の心機能低下例から心不全例まで、

 

β遮断薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬を用いると予後改善が認められます。

 

 

<浮腫を伴う心不全>では、まず浮腫、肺水腫等の全身のうっ血の改善のために、

 

速効性の利尿薬(フロセミド)を投与します。

 

従来の利尿薬に治療抵抗性の場合には、

 

バゾプレシン拮抗薬であるトルバプタンを使用します。

 

 

<心不全を合併した高血圧>に対しては、降圧利尿薬、ACE阻害薬、ARBが適応です。

 

 

<心不全に合併した頻拍性心房細動(Af)>では、

 

心原性塞栓症予防として抗凝固療法を行います。

 

また心拍数調整のためβ遮断薬、Ca拮抗薬を用います。

 

それでもコントロールがつかないときはアミオダロンを選択します。

 

ただし、抗不整脈薬の使用は慎重を要します。

 

たとえばⅠ群抗不整脈薬の使用は生命予後を悪化させてしまいます。