日々の臨床 7月9日日曜日<片頭痛(その2)>

 

神経・精神・運動器

 

テーマ:片頭痛(その2)

 

片頭痛の治療

 

 片頭痛の治療は大きくわけて2種類あります。

 

頭痛発作がおこった時になるべく早く頭痛鎮めるための治療法を

 

急性期治療(頓挫療法)と頭痛がある日もない日も毎日お薬を飲んで

 

頭痛発作を起こりにくくし、

 

また、頭痛発作が起こっても軽くすむようにするための予防療法です。

 

発作回数が月に数回以内で、片頭痛発作による生活への悪影響があまりなければ

・・・急性期治療を中心にします。

 

ただし、高円寺南診療所では、予防医学や自然医療を重視する立場から、

 

なるべく初回は、生活指導(緊張が和らぎ体温が上昇すると発作が出易くなるために、

 

誤った対処法-常に緊張を続け、体を冷やしている-などの修正)、

 

複合ビタミンB(B1,B2,B6,B12)および漢方薬

 

(呉茱萸湯をはじめ、苓桂朮甘湯、釣藤散など、体質に応じて使い分け)

 

を用いて、経過観察をしています。

 

少し、症状が緩和されて、セルフコントロールへの意欲が高まってきた方には、

 

フィットネス検査の後、水氣道®への参加をお勧めしております。

 

 

発作回数が多い場合や、生活への影響が強ければ

・・・急性期治療と予防療法を組み合わせて治療をします。

 

予防療法の効果が現れるまでに、通常1~2ヵ月の期間がかかりますので、

 

少なくとも2ヵ月は継続してみて、効果を判定してください。

 

 

 急性期治療(頓挫療法)には市販薬も含め鎮痛薬が広く使用されています。

 

2000年以降わが国でも、片頭痛に有効なトリプタン系薬剤

(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンなど)

 

が使用できるようになり、多くの片頭痛患者さんが恩恵を受けています。

 

 

 鎮痛薬の上手な使い方としては、

 

①頭痛発作のなるべく早期に使用することと、

 

②過剰に連用しないことです。

 

連用により鎮痛薬誘発性頭痛といわれる別の頭痛がおこってきます。

 

 

 トリプタンの登場により片頭痛の効果的な治療ができるようになり、

 

片頭痛による日常生活の支障やQOLの阻害は軽減できるようになりつつあります。

 

他方で、使用量が増加しトリプタンによる薬物乱用頭痛も報告されています。

 

トリプタン使用量の目安としては1ヵ月に10日以内というのが、多くの専門医の意見です。

 

月に10日を超えてトリプタンを使用している場合には、

 

予防薬を適切に併用してトリプタンの使用が月に10日以内ですむようにコントロールするべきです。

 

ただし、特殊な片頭痛などで専門医の管理の元で

 

一時的に10日以上使用することは問題ありません。

 

 頭痛の発作回数が多い場合や、頭痛の程度が高度の場合、

 

頓挫療法があまり効かない方は予防療法を併用するのがよいでしょう。

 

また、片麻痺性片頭痛や、脳底型片頭痛、遷延性前兆を伴う片頭痛、片頭痛性脳梗塞など

 

重大な神経障害をおこすおそれのある特殊な片頭痛の場合も予防療法が必要です。

 

 

 予防療法の治療目標:

①頭痛発作の回数を半分以下に減少させて、頭痛の程度を軽くすること、

 

②頭痛の持続時間を短縮し、急性期治療薬の効果を増強して、

 

頭痛による日常生活への影響を最小限にして活動性を改善することです。

 

 

予防療法により頭痛発作が完全に抑制できることもありますが、

 

完全に頭痛をなくすことを求めすぎるのは得策ではありません。

 

 

 予防療法にはCa拮抗薬やβ遮断薬といわれる薬剤がよく用いられています。

 

Ca拮抗薬として塩酸ロメリジン(ミグシス、テラナス)が片頭痛治療薬として使用されます。

 

β遮断薬ではプロプラノロール、メトプロロール等がよく用いられています。

 

抗てんかん薬であるバルプロ酸やトピラマートも片頭痛の予防に有効です。

 

また、抗うつ薬、特に三環系抗うつ薬に分類されるアミトリプチリンも用いられています。

 

慢性的な痛みのために抑うつ的になることがありますが、

 

うつ状態でない慢性頭痛の場合にも有効であることが確かめられています。