現代医療は専門分化や取り扱いの細分化が進行している結果、受診者の専門医志向も高まっています。
しかしながら、長寿社会(受診者の高齢化)に伴う併発疾患の増加などのため、単一の専門医に主治医としての役割を求めることには限界があります。
現に、3ヵ月に1回程度の受診頻度での健康状態の改善にどれほどの期待ができるでしょうか?
以下は、肝臓専門医から見放されたと嘆くDさんからの質問です。
なおDさんは私の音楽関係の知人ですが、アクセスの都合上、近くに主治医を確保するようアドヴァイスして差し上げた方です。
質問者:Dさん(飲酒歴30年、ほぼ毎日飲酒)
私は愛飲家でしたが、肝臓専門医から、肝臓の線維化が進んでいるため、主治医の元で禁酒をはじめ栄養療法を実行するよう指導を受けました。飲酒は良くないとする一方で、栄養療法が必要であるという理由について教えてください。
ChatGPT
まず、おっしゃる通り、飲酒は肝臓にとって悪影響を及ぼす可能性があります。肝臓はアルコールを分解し、代謝する役割を果たしていますが、過剰な飲酒によって肝細胞が損傷を受け、炎症が引き起こされることがあります。これが繰り返されると、肝臓の組織が線維化し、最終的に肝硬変や肝癌などの合併症が発生するリスクが高まります。
一方で、栄養療法は、肝臓の健康をサポートし、線維化を抑制するために重要です。特に、以下の点が栄養療法の一環として考慮されることがあります:
1. タンパク質摂取の調整:
適切な量のタンパク質を摂ることが重要です。一部の肝疾患では、過剰なタンパク質摂取が負担となることがありますが、十分なタンパク質は肝臓の修復や機能の維持に役立ちます。
2. ビタミンとミネラルの補給:
特にビタミンB、ビタミンC、およびミネラル類は、肝臓の機能に不可欠です。これらの栄養素は食事やサプリメントを通じて摂取され、肝臓の健康をサポートします。
3. 脂質の制限:
飽和脂肪やトランス脂肪酸の摂取を制限し、代わりに健康な脂肪(オメガ-3脂肪酸など)を摂取することが推奨されることがあります。
4. 塩分の制限: 塩分の摂取を制限することが、肝臓の水分蓄積を抑制し、高血圧などの合併症を防ぐ助けになります。
5. 適切な体重維持:
適切な体重維持が重要であり、肥満は肝臓の病気のリスクを増加させる可能性があります。
主治医の指導に従い、禁酒と共に栄養療法を実践することで、肝臓の線維化の進行を抑制し、肝臓の機能をサポートすることが期待されます。個々の状態に応じて、主治医が具体的な食事指導を提供してくれるでしょう。
ドクター飯嶋のコメント:
私は、過日Dさんから「食物線維は肝臓に良くないのか?」という唐突な質問を受けました。食物繊維が肝臓にとって悪い、という医学的常識はありません。そこで、そもそもなぜ、そのような問題意識を持たれるに至ったのかが気になったため、詳細にお話をうかがったところ、「肝臓の線維化」と混同されていたことが判明しました。
肝臓の線維化が進むと、積極的に働いている肝細胞が減少していきます。その結果、肝細胞の働きである代謝機能が損なわれることになります。そして、代謝機能は全身に及んでいるため、この障害は肝臓のみならず筋肉、心臓、腎臓などさまざまな臓器との関連が破綻する原因になります。
基本的には、ムッシュGPTの回答通りなのですが、大切なのは、結論部分の「個々の状態に応じて」実施すべきであるということです。
これは肝硬変診断ガイドライン2020改訂第3版(GL2020)の栄養療法フローチャートに示されています。肝硬変とは肝臓の線維化が進行した病態なのですが、肝硬変に至る前に活用することが大切なのではないかと私は考えています。
このフローチャートは、肝硬変に対する栄養アセスメントと栄養食事指導の流れが示されています。
その最初の手続きが、「栄養アセスメント」です。
その内容は、
❶肝予備能の評価
❷栄養指標の測定(アルブミン、コリンエステラーゼ、プロトロンビン時間、
腎機能、HbA1c、アンモニア、亜鉛、カルニチン分画、BTRなど)
❸身体測定(BMI、握力、骨格筋量、脂肪量、体液貯留の評価)
❹栄養調査
❺栄養アセスメント
❻肝硬変合併症の評価:肝性脳症、腹水、サルコペニア、筋痙攣など
杉並国際クリニックは、概ね3カ月に1回、「体組成・体力測定票」に基づくアセスメントを実施しています。たとえ、肝硬変ではなくとも、上記❷❸❹は日頃から、一般的な健康管理のための指標として確認しておく必要があると考えています。上記の中で、下線を施した項目は、当クリニックにおいてルーチン化している項目です。
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