<問いの質が変われば、答えの質も変わる>の巻
今回の話題は、2月2日の金曜日のシリーズに関連するテーマです。
ムッシュGPTは、ちょっとした質問の仕方の違いによって、内容や質が大きく異なる回答を寄越してくれます。要は質問の仕方が肝要だということです。
それでは、次に二つの質問と、それに対するムッシュGPTの回答を掲載してみます。
まずは、オリジナルの質疑応答を再掲します。
質問者(オリジナル質問文)
私は60代の高血圧の男性患者ですが、いろいろな病院で、いろいろな薬を飲んでも血圧は下がらないばかりか、イライラして眠れず、夜間頻尿となり困っていました。
最後に内科を受診したら前立腺肥大症と診断され、その治療を始めたところ、夜間頻尿は軽快し、以前より熟睡できるようになり、イライラが収まってきただけでなく、血圧も正常化してきたので不思議です。
それには医学的な根拠があるのでしょうか、それとも自然治癒でしょうか?
ChatGPT
おっしゃるような症状が改善されたことは素晴らしいことです。前立腺肥大症の治療がこれらの症状に対して改善をもたらすことは、医学的な根拠があります。
前立腺肥大症は、男性の前立腺が拡大し、尿路症状を引き起こす状態です。これには、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿の勢いの低下などが含まれます。また、この症状が睡眠障害やイライラを引き起こすこともあります。
前立腺肥大症が進行すると、尿の通り道が圧迫され、尿が十分に排泄されなくなります。これが夜間頻尿や睡眠障害につながります。また、尿が膀胱に滞留することで、膀胱の圧力が上昇し、血圧にも影響を与える可能性があります。
前立腺肥大症の治療は、症状の程度により異なりますが、一般的には薬物療法や手術が行われます。治療により尿路症状が改善され、それに伴って睡眠障害やイライラも緩和されることがあります。
したがって、おそらく前立腺肥大症の治療が、夜間頻尿や睡眠障害、イライラの改善に寄与したと考えられます。
ただし、具体的な状況により個人差があるため、治療の効果は個々の症状や体質により異なる可能性があります。治療が効果的であるかどうかについては、担当医との定期的な相談が重要です。
Dr.飯嶋のコメント
この質問文の本人には、前立腺肥大症に対して内科的な療法である薬物療法を試みました。しかし、前立腺肥大症の治療法としては、外科的な療法である手術療法が必要になるケースもありますが、専門家ではない質問者としては、そこまでは考えが及ばないのは当然です。
ましてや、質問の仕方のちょっとした工夫によって、ChatGPTの回答が、より具体的に焦点が絞り込まれた、したがって、より有益な回答が得られる可能性については認識されていなかったようです。
そのちょっとした工夫とは何かというと、
それは、「その治療」という質問文の一部を「薬物療法」に変更するだけの操作を加えてみました。
質問者(改訂質問文)
私は60代の高血圧の男性患者ですが、いろいろな病院で、いろいろな薬を飲んでも血圧は下がらないばかりか、イライラして眠れず、夜間頻尿となり困っていました。
最後に内科を受診したら前立腺肥大症と診断され、そのため薬物療法を始めたところ、夜間頻尿は軽快し、以前より熟睡できるようになり、イライラが収まってきただけでなく、血圧も正常化してきたので不思議です。
それには医学的な根拠があるのでしょうか、それとも自然治癒でしょうか?
ChatGPT
前立腺肥大症の治療が血圧の正常化やその他の症状の改善に寄与したと考えられる医学的な根拠があります。以下はその主な要因です:
1. 交感神経の影響:
前立腺肥大症は、尿路の圧迫や排尿の困難を引き起こす可能性があります。これにより、交感神経活動が増加し、血圧が上昇することがあります。前立腺肥大症の治療が症状を改善すると、交感神経の活動が緩和され、血圧が正常化する可能性があります。
2. 睡眠とストレスの関連:
夜間頻尿や睡眠障害は、心身のストレスや不快感を引き起こし、それが血圧に影響を与えることがあります。前立腺肥大症の治療により夜間頻尿が改善され、睡眠の質が向上することで、ストレスが軽減され、それが血圧の正常化に寄与する可能性があります。
3. 薬物療法の影響:
前立腺肥大症の治療に使われる薬物が、血圧にも一定の影響を与える可能性があります。一部の薬物は血圧を降下させる効果があり、それが治療開始後の正常化に寄与することが考えられます。
自然治癒ではなく、前立腺肥大症の適切な治療が症状の改善に貢献したと考えられます。ただし、具体的な状況や個々の患者によって結果は異なる可能性があります。
定期的な医師のフォローアップと相談が重要です。
Dr.飯嶋のコメント
オリジナル質問文と改訂質問文のメッセージの内容は、一見してほぼ同じ内容です。
しかし、ほんのわずかな文言の違いが、回答内容に大きな違いを生み出していることがお判りになるはずです。
改定質問文に対して、ムッシュGPTは、薬物療法の影響についても適切なコメントしています。
前立腺肥大症の適切な治療が症状の改善に貢献した、と歯切れよく答えています。たしかに、私が使用した薬剤はミニプレス®というα₁遮断薬で、この薬剤は❶本態性高血圧症、腎性高血圧症、❷前立腺肥大症に伴う排尿障害、この両者の治療薬です。
私は一般の高血圧症や前立腺肥大症のそれぞれ単独の治療のために、この薬剤を使用することはほとんどありませんが、排尿障害を伴う高血圧のケースでは好んで用いて大いに効果を挙げています。
それでは、このような回答文に大きな違いが生じる原因は何なのでしょうか?
まず、質問者の用いる重要情報であるキーワードがどれだけ明確で限定的か、いいかえれば、質問者自身が知りたいと考えている対象にどれだけ密接な具体性を備えているか、ということがとても大きく働いている可能性があります。
前者の文言「その(前立腺肥大症)治療」と後者の「前立腺肥大症のための薬物療法」という記述の意味する内容は重なりますが、前者はすべての標準的な治療法を意味するものとムッシュGPTは理解します。
すなわち、質問者が暗黙のうちに想定している内科的薬物療法ばかりではなく、おそらくは想定外であると思われる外科的な手術療法も含まれることになります。
これに対して、後者は、より限定的で、質問者にとって直接関心の対象となっている薬物療法に焦点が当てられます。
ついで、ムッシュGPTの回答文の形式について比較してみると、序文、本文、結論の三段階の構成になっていることが分かります。
また、より比較が容易な数値化データとして使用単語数を確認してみると、前者は504、後者は508です。
つまり、ムッシュGPTの回答文は、質問の内容にかかわらず概ね500語程度になっています。
この結果から考えられることは、質問の的を十分に絞って、可能な限り、知りたいことを特定して焦点を定めておくと、回答文も、より内容の濃い、密度の高い、必要な情報がより多い有益なメッセージを生成しやすくなるということです。
つまり、質問者にとって関心が少ない対象についての無駄な情報を省いた分だけ、興味深い関心の対象に関する情報が確保されるということになるのだと思います。
こうした事例をつぶさに検討することで改めて気づかされることは、小学校からすでに始まっている教育の課程で、徐々にスキルアップしていくことが望ましいのは、「質問の技術」なのではないか、ということです。そうはいっても、先生に質問をすることも、得手不得手があります。
しかし、質問を繰り返さなければ、上手な質問をする能力は身につきません。
そのためもあってか、ときには先生が質問者になって、生徒に回答させる授業進行の方法が採られることがあります。
これなども、相手の立場や役割を経験することによって、円滑なコミュニケーションを促す手助けになると思います。
そうして、授業に参加して、先生に質問できること自体が有意義な学びの成果なのではないだろうか、と私は考えます。
質問と回答を繰り返す中で、質の高い問いによる、質の高い回答が容易されやすくなっていくのではないでしょうか。
日常の診療においても、質問上手な患者さんに恵まれた医師は必ず名医になれるのではないかという気がします。
これも一長一短ではなく、医師(ドクターの語源は教師)が患者さんに適切な質問を繰り返したり、質問を促したりする日々の心掛けが不可欠であるように感じます。
日常の健康管理において、主治医の役割は、一方的に診断して治療を始めることではなく、互いに学び合って、スキルアップしていくことによって、より望ましい成果を挙げることが可能になっていくことを私は経験してきました。
ですから、これからも私に対して、遠慮せず質問してください。わたしの勉強にもなるばかりでなく、このシリーズのテーマの生きた材料にもなり、ひいては多くの読者の皆様に対して有益なメッセージをお届けすることが可能になると思います。
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