金曜シリーズ < よくある問い合わせ ⑨ >

 

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ChatGPTに東洋医学に関する質問をする場合は注意が必要です。


なぜなら、ChatGPTの情報源の大半は、ムッシュGPTの回答によれば英語主体の情報です。そして英語圏の医学すなわち西洋医学的な思想では、平均値や基準値を基に健康状態を判断するため、大規模データを収集し易く、エヴィデンスも集めやすい強みがあります。

 

しかし、そのエヴィデンスはあくまでも多くの標準的な体質の方には良く適合しても、少数の特別な体質の方のためには役に立たないことがあります。

 

したがって、そのような発想では、個別性を尊重する東洋医学、とりわけ漢方薬について的確に判断することは難しいと私は考えています。


YさんがムッシュGPTに質問をされたので、その点に注意しながら、検討してみましょう! 

 

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質問者:Yさん(オリジナル版)

漢方薬についての質問ですが、よろしいでしょうか?

 

私は20代の女性ですが、かかりつけの内科の先生から2週間ごとに当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)と加味逍遙散(かみしょうようさん)というお薬を交互に処方されていただくようになってから、体調も気分も共によくなっています。

 

私は不思議に思うのですが、医学的な根拠があるのでしょうか?

 

 

ChatGPT
漢方薬に対する医学的な根拠は、研究が進んでいるものの、西洋医学のように確立された臨床試験や科学的なエビデンスが十分に揃っているわけではありません。

 

ただし、一部の漢方薬は特定の症状に対して一定の効果があるとされ、その使用は一部の医師によって支持されています。


当帰芍薬散や加味逍遙散は、伝統的な漢方薬で、特に女性の生理調整やストレス対策に使われています。これらの漢方薬に含まれる様々な植物成分が、体の調和を促進し、特定の症状の緩和に寄与するとされています。

ただし、個人差があり、全ての人に同じような効果があるわけではありません。


医師がこれらの漢方薬を処方した理由は、あなたの症状や体調に合わせて、伝統的な漢方医学の観点から効果が期待できると判断されたためかもしれません。

ただし、これらの漢方薬の効果については科学的に確定された情報が不足しているため、医学的根拠を求めるのは難しい場合があります。


大切なのは、漢方薬を使用する際にかかりつけの医師と十分にコミュニケーションをとり、体調や効果、副作用について報告し合うことです。医師は適切な治療法を提供するために、患者との信頼関係を築くことが重要です。

 


ドクター飯嶋のコメント:

ムッシュGPTは、自分の能力の範囲で誠実に回答しています。


ニュアンスの違いかもしれませんが、『確立された臨床試験や科学的なエビデンスが十分に揃っているわけではありません。』というのは若干言い過ぎのような気がします。

 

ここでいう科学的なエビデンスというのは、いわゆる西洋医学的なエビデンスであって、東洋医学には東洋医学のエビデンスがあるということをムッシュGPTは、十分には理解できていないように思われます。


もしくは、彼は漢方薬を民間療法薬と同列に位置付けている可能性があります。現代においては漢方薬ですら、動物実験によるデータが収集されています。

 

一部の漢方薬が特定の症状に対して一定の効果があり、一部の医師によって支持されている、という限定的な表現にも注意していただきたいと思います。

一部の漢方薬といっても、保険診療で処方可能な漢方薬は100種類を遥かに超えています。

 

また、一部の医師というのは、英語圏においては妥当する事実ですが、日本の医師は、私の様に漢方専門医の資格をもつ医師ばかりでなく、広く使われ役立てられています。

 

なお日本の医師の数少ない特権の一つとして、西洋薬と漢方薬の両方の処方権が与えられていることが大切です。

 

英語圏だけでなく中国や韓国などでも西洋医学の医師と伝統医学の医師(中医や韓医)では資格制度からして明確に区別されています。

 

ですから、日本の医師でなければ、両者の長所と短所を認識したうえで上手に使い分けることはできません。

私は日本の医師が東西両医学を併用した統合医学の旗手になるべきではないかと考えています。

 

ムッシュGPTは、医師ではないので、彼の能力を十分に引き出すためには質問の工夫が必要です。来週の金曜日は、私が質問の仕方を工夫して、改めて彼の回答を確認してみたいと思います。