『水氣道』週報

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.9

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続・続々)

 

私たちは、筋肉の構造を単純に理解するためには、タマネギの皮を重ねたような筋肉のイメージを使うことができます。
 

水氣道の稽古では、三次元的な透過性のある息の流れを構築するために、筋肉の最内殻層を活性化させようとします。そして、水氣道の稽古のねらいは、心で筋肉の活動をコントロールすることを通して、どんどん成功体験を増やしていくことにあります。それが感情の解放や体の浮遊感にもつながるのです。

 

そこで水氣道の上達のための「秘訣のツボ」を紹介します。この「秘訣のツボ」を呼び覚ますことで、水氣道の上達が飛躍的に促進されます。

 

この「秘訣のツボ」を呼び覚ます方法は通常二つあります。

 

1) 一連の筋肉を作動させること、

 

2) 関係する筋肉部位の自然な連鎖反応を起こさせること、

 

筋肉を解剖学的に正しい名称で特定することで、体内での連鎖反応のプロセスを把握することができます。

それでは、水氣道の稽古によって、無意識のうちに活性化されるで特別な5つの「秘訣のツボ」を列挙します。

 

(1)  内股(大腰筋が大腿骨に付着する点が中心)

姿勢と歩行と呼吸とを結びつける最重要ポイント

 

(2)  尾骨(骨盤を持ち上げる筋肉や靭帯が多く付着している点が中心)

水氣道の基本姿勢を決定するポイント
能楽の仕舞のときの姿勢によく似ています。

 

(3)  第12胸椎(横隔膜、大腰筋、横筋が交わる部分)

姿勢と呼吸と発声とを連結し、姿勢と動作を支える重要ポイント
中腰の姿勢や、お辞儀などの前屈動作、重いものを持つなどの重力負荷は、第12胸椎を中心とする胸腰移行部(胸椎と腰椎の移行部)に圧力が集中します。


そのため高齢になると最も圧迫骨折が生じやすい部位です。圧迫骨折のほとんどが骨粗鬆症に起因して尻もちなどの軽微な外力により生じます。

 

(4)  内肋間筋から腋窩(わきのした)にかけての筋肉(前鋸筋)

水氣道では、腹式呼吸法を過度に偏重せず、肋骨の動きを主体とする呼吸法である胸式呼吸法も適切に鍛錬します。それは呼吸運動に伴い肋骨が引き上げられたり、引き下げられたりすることは大切だからです。

 

呼気に働く筋肉は内肋間筋です。 呼気時には内肋間筋が収縮して肋骨を引き下げることによって胸郭を縮めて、呼気を助けます。また前鋸筋は、肩甲骨を前外方に引き、肩甲骨が固定されていると肋骨を引き上げる作用があります。

 

(5)  肩甲骨の裏面(菱形筋、肩甲挙筋、小胸筋の挿入部、肩甲舌骨筋との接続部)

猫背になると胸郭が広がりにくくなりますが、これは肩甲骨が正しい位置にないからです。菱形筋自体は呼吸筋というよりも、肩甲骨を内側に引きつける筋肉です。肩甲骨が適切な位置にくることで、前鋸筋という肩甲骨と肋骨をつないでいる筋肉が適切に作用して胸郭が広がりやすくなるので、菱形筋は間接的な役割を果たします。

 

菱形筋の活動が低下すると肩甲骨が外側に開き、猫背になりやすくなります。こうした状態では胸郭の動きが制限され、つまり、呼吸が制限されてしまうのです。

 

現代人のライフスタイルは頭部が前のめりになり猫背になる「フォワードヘッド&ラウンドショルダー」と呼ばれる姿勢をもたらします。この姿勢には、次の特徴があります。

 

• 息を吸う時に肋骨を引き上げて呼吸を助ける小胸筋が硬くなり、胸の前側から肩甲骨が引っ張られるような感じになりやすい。

 

• 肩甲骨が外側に開き、肩が前のほうへ巻き込みやすくなる(巻き肩:ラウンドショルダー)。

 

• 肩甲骨が引き上げられ、頭が前のほうに突き出た状態(フォワードヘッド)になる。頭を支えるために首の後ろの筋肉が引っ張られるように常に緊張した状態になるため、肩こりの原因になりやすい。

 

さらにこうした姿勢は、胸郭の動きが制限されるので、必然的に呼吸が浅くなります。

このような状況であっても身体に必要な空気を取り込むためには、呼吸の回数を増やして対応しなければなりません。不安やストレスが多いと呼吸が浅くなりやすいですが、その一方で姿勢の悪さなどから胸郭の動きが制限されて呼吸が浅くなってしまいます。

 

呼吸数を増やさざるを得ない状況となると、浅くて速い呼吸が続くことになります。それによって不安やストレスが助長されるといった悪循環に陥り易くなります。これは常に不安にさらされていることを意味し、身体的にもメンタル的にもさまざまな悪影響が及ぶと考えられます。