遷延する症状で苦しむ方のために

 

前回はこちら

 

 

認定内科医、認定痛風医

アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医

 

飯嶋正広

 

見落とされがちな微量栄養欠乏症

<25OHビタミンD>No1

 

新型コロナウイルスや従来からのインフルエンザウイルスなどの感染症を予防するためには、免疫力を高めることが重要だと考えられています。そこで期待されているのが、免疫機能を調節する栄養素「亜鉛」や「ビタミンD」です。そのうち、「亜鉛」については、前回までに詳しくご紹介してきました。

 

当クリニックでは本年のゴールデンウィークまでは、新型コロナ感染者は、2,3人だけでしたが、その後、少しずつ増えてきています。その理由は、免疫力の低下にあることが疑われます。

 

若干名ではありますが、新型コロナ感染症に罹患した方の血液データには共通の所見がありました。それは第一に、亜鉛欠乏症もしくはビタミンD欠乏症であるということでした。第二に、一例を除いて、すべて新型コロナワクチン接種済み(2回以上)であったこと、第三に、私が一昨年から推奨してきた漢方薬による免疫増強に無関心であったこと、などです。

 

そこで今回からは、しばらくの間、免疫機能にかかわる「ビタミンD」の働きや効果的な摂取方法をお伝えします。その前に、まず「免疫」とは何かについて、説明しておきたいと思います。

 

 

免疫とは?

 

免疫とは、ウイルスなどの有害な物質から体を守る仕組みです。そして、免疫力は体に入ってきたウイルスなどと戦う防衛体力のことをいいます。

 

体内にウイルスが侵入してきたとしても、それを有害な「非自己」として認識して排除し、病気にならないような働きを自動的にしてくれるのが免疫機能です。これには自然免疫と獲得免疫との連携によって担われています。

 

免疫力が低い人はウイルスに対しての抵抗力が弱いため、感染症だけではなく、様々な病気にかかりやすくなります。

この場合、自然免疫が十分に機能すれば感染しにくくなるので、予め自然免疫を強化しておけばよいのですが、自然免疫は一朝一夕に強化できわけではありません。ですから、短期間に免疫力を増強するためには従来型のワクチン(ⅿRNAワクチンは注意を要します!)などにより獲得免疫を活性化させる必要があります。

 

一方で自然免疫力が高い人はウイルスに対する抵抗力が強いため、たとえワクチンを接種しなくとも病気にかかりにくく健康な状態でいることができるのです。

 

免疫力が低下した人は、新型コロナウイルスなどの感染症にかかりやすくなります。なお、武漢株を目的に作られたワクチンは、仮に武漢株ウイルスに特異的に有効であったとしても、変異株には効きにくいと考えるのが医学上の常識です。

 

これに対して自然免疫の素晴らしさは、病原体などの異物の侵入に対して即時的・直接的に生体防御反応が起こり、しかも非特異的に働くことにあります。

 

つまり、特定のウイルスにだけに対応するのではないのと同様に、さまざまな変異株にも対応可能だということです。この自然免疫は、生体が生まれながらに、だれでもが持っている免疫機構です。この自然免疫は、2段階の防御機構を有していて、体表面における機構と対組織内における機構によって成り立っています。

 

 

まず体表面における自然免疫は、異物の侵入を未然に防いでくれる反応です。皮膚・粘膜面からの分泌液や常在細菌叢により、異物の侵入を未然に防ぐバリア機能を持っています。このようなバリア機能はワクチンに期待することはできません。

 

次に対組織内における自然免疫は、体表面のバリアを突破し、組織内に異物(病原体)が侵入した際に、免疫応答により炎症を惹起させることによって生体を防禦する機構です。

 

これら2段階の自然免疫機構は、相互の連携プレーによって効率的に防御力を発揮することができます。受動的にワクチンの接種を繰り返すのみでは、のこのような2重のバリアー機構を強化することはできないのです。