最新の臨床医学 12月23日(日)心療内科についてのQ&A

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

それは日本心療内科学会のHPです

 

心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。

 

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。

 

 

「質問19」40歳代の男性です。

身長165㎝体重85㎏と肥満しているせいだと思いますが、日中身体が重だるく、仕事の能率が上がりません。

 

眠気に襲われることもよくあり、困っています。

 

夜は「いびきをかいてよく寝ているわよ!」と家族には言われるのですが…。

 

 

「答え」

体格(肥満度)の指標として、Body mass index(BMI)が用いられることが多く、体重(kg)を身長(m)の2乗で除して計算されます。

 

標準は22とされ、日本人の場合、25以上を肥満と定義されています。

 

身長165cmで体重85kgの場合には、BMIが31.2と肥満の状態にあります。

 

肥満の場合に、よく合併する疾患として「睡眠時無呼吸症候群」があります。

 

これは、主に、睡眠中に気道(口から肺への空気の通り道)がふさがってしまうために、呼吸が止まってしまうことが一晩に何回も生じるため、日中に眠気に襲われてしまう病気です。

 

成人では、高血圧、脳卒中、心筋梗塞につながる危険性が指摘されていて、適切な治療が必要です。

 

まずは、睡眠時無呼吸症候群であるかどうかの検査が必要ですので、お近くの内科や睡眠専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

 

(吉内一浩)

 

 

<高円寺南診療所の見解>

こうした症例は、高円寺南診療所でも確実に増えてきました。肥満(症)と睡眠時無呼吸症候群とは密接なかかわりがあることは確かです。しかし、このQ&Aがなぜ、日本心療内科学会のHPに掲載されているのかについては、少しわかりにくいのではないかと思われます。

 

眠時無呼吸症候群とは、簡単にいうと睡眠中に通常10秒間以上持続する換気停止(無呼吸)のエピソードが反復してみられる症候群です。

 

 

さて、その前に、肥満(症)について解説します。肥満は「身体に脂肪が過剰に蓄積した状態」であり、過体重と区別する必要があります。つまり、身長と体重だけで肥満の判定はできません。このケースの場合も例外ではありません。

 

したがって、<身長165cmで体重85kgの場合には、体格指数(BMI)が31.2と肥満の状態にあります。>というのは厳密に言えば誤りです。ただし、一般的には臨床的有用性から、WHOの基準では30以上、日本では25以上を肥満と判定します。

 

この症例は、WHO、日本、いずれの基準でも肥満になります。日本の基準では第Ⅱ度の肥満と判定されます。

 

肥満には病態が不明な単純性肥満と肥満になる基礎病態が明白な症候性肥満とがあり、大部分は前者です。

 

この質問のケースでは、肥満Ⅱ度の他に、日中の眠気・仕事の効率低下(集中力・判断力の低下?)、身体の重だるさ、夜間のいびきが報告されています。これらは確かに、睡眠時無呼吸症候群の症状に一致します。

 

軽症では無自覚に過ごしていることもある反面、重症になると、このケースのように全身倦怠、知的能力低下が生じ、さらには、頭重、抑うつ気分、性格変化が見られるようになります。

 

したがって、この症例が睡眠時無呼吸症候群であるとしたら、すでに軽症ではなく中等症から重症へと移行するステージに至っている可能性があります。このように、睡眠時無呼吸症候群では、中等症あたりからさらに重症化すると、気分や性格あるいは行動の異常が出現し易くなるので、心身医学的なアプローチが求められることになります。

 

この睡眠時無呼吸症候群が長期にわたると、肺胞性高血圧、肺胞低換気、ウ診不全、多血症などをきたします。治療としては病因、病態、重症度に応じてアセタゾラミドなどによる薬物療法やC-PAP療法などがありますが、いずれも対症療法に過ぎません。

 

肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群の場合、患者さんだけでなく医師でさえも、呼吸管理のみに注意が向いてしまって、体重コントロールなどの重要な基本的健康管理が二の次になってしまうことが少なくありません。

 

高円寺南診療所では、このようなケースでは、原則として覚醒および起床時間、毎日の運動量(歩数計の歩数)と定時の体重計測の記録を必須として、場合によっては食事に内容なども適宜記録していただいております。これは、セルフモニタリングの技法を用いた行動療法です。

 

つまり、心療内科では、内科的な管理に加えて、行動療法あるいは認知行動療法など、その基本となる治療技法を駆使することができます。それによって、肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群は、病態に基づいたより根本的な治療を行うことができるといえるでしょう。