高円寺南診療所院長のDr.飯嶋は昭和学院短期大学ヘルスケア栄養学科の臨床栄養学概論の初代担当教員として、非常勤講師→客員教授として2001年(平成13年)4月から2016(平成28年)3月まで15年間、毎週金曜日午前中の授業を担当していました。

 

 

この間に、「臨床栄養学」の教科書を2冊「解剖・生理・病理学」の教科書を1冊出版し、栄養士となった卒業生の管理栄養士国家試験合格を支援してきました。

 

 

その間、高円寺南診療所では、一貫して、管理栄養士による<外来栄養食事指導>を行ってきましたが、現在、管理栄養士は空席です。

 

 

高円寺南診療所は、建築物の老朽化および周辺環境悪化のため2019年末までに、移転・拡張による設備・環境改善をはかり、

 

杉並国際クリニック(Suginami International Clinic)<仮称>として、再スタートする予定です。その際には、充実した栄養指導室を整備し、担当者として有能な管理栄養士を招聘する計画です。

 

 

高円寺南診療所では、受診者全員を対象として毎回、血圧測定を励行しております。とりわけ肥満者、高血圧者を対象として自宅血圧自己測定を積極的に推進しております。

 

 

以下の最新の研究から、本年4月より、肥満者、高血圧者を対象として尿中ナトリウム/カリウム比(Na/K比)を定期的に測定し、より適切な健康管理に役立てることを計画しております。

 

予定では、24時間畜尿法ではなく、外来受診時の随時尿(スポット尿)3~4ml程度で尿中クレアチニンとともに検査しますので簡便です。

 

 

食塩による昇圧は他の栄養素で相殺されず

 

栄養と血圧に関する国際共同研究INTERMAP

 

米・Northwestern UniversityのJeremiah Stamler氏らは、1996~99年に4カ国17集団の成人4,680例を対象に実施された栄養と血圧に関する国際共同研究INTERMAPのデータを解析しました。

 

その結果、食事によるナトリウム(Na)摂取が血圧に及ぼす悪影響は、血圧にとって好ましい他の栄養素を摂取しても相殺されない可能性があると発表しました。<Hypertension2018; 71: 631-637)>

 

 

24時間蓄尿に加え80種類の栄養素摂取を調査

 

INTERMAP研究では日本(4集団)、中国(3集団)、英国(2集団)、米国(8集団)の4カ国17集団において、40~59歳の男女4,680例をランダムに抽出しました。

 

24時間蓄尿によるNaおよびカリウム(K)排泄量測定、血圧測定に加え、80種類の栄養素(蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など)の摂取状況を調査しました。

 

年齢、性、集団を調整した多変量解析の結果、24時間尿中Na排泄量の最高四分位群は最低四分位群に比べて収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)が一貫して高値でした。

 

この結果は13種類の主要栄養素、12種類のビタミン、7種類のミネラル、18種類のアミノ酸と栄養素以外の交絡因子を調整後も同様でした。

 

また、24時間尿中Na排泄量の最低四分位群ではK摂取量の増加に伴いNaと血圧の関連が弱まったが、24時間尿中Na排泄量の高値群ではK摂取量による差が小さいものでした。

 

 

Na排泄量134.0mEq増加でSBP/DBP3.5/1.7mmHg上昇

 

栄養素以外の交絡因子、アルコール摂取、24時間尿中K排泄量を調整した多重線形回帰分析では、24時間尿中Na排泄量の2標準偏差〔SD:134.0mEq(3.1g)〕増加によりSBP/DBPが3.5/1.7mmHg上昇しました(P<0.001)。

 

この傾向はNaと血圧の有意な関連は80種類の栄養素を個別に調整したモデルでも維持され、Naと血圧の関連が他の主要栄養素または微量栄養素の任意の組み合わせによって大きく変化しないことが示唆されました。

 

また、栄養素以外の交絡因子を調整した線形回帰モデルで血圧とNa/K比の関連を分析した結果、24時間尿中Na/K比の2SD(3.3)上昇によりSBP/DBPが3.5/1.7mmHg上昇し(P<0.0001)、このNa/K比と血圧の有意な関連は80種類の栄養素を個別に調整したモデルでも維持されました。

 

BMIを調整した分析ではNaと血圧の関連が統計学的に有意ではなくなりました。しかし、Na/K比と血圧の関連はBMIを調整後も変化しませんでした。

 

正常体重(BMI 25未満、1,666例)、過体重(肥満度Ⅰ:BMI 25以上30未満、1,861例)、肥満(肥満度Ⅱ以上:BMI 30以上、1,073例)の3群に分類した分析では、Na摂取量の2SD増加によりSBPが正常体重群で1.7mmHg上昇(P=0.08)、肥満群で2.1mmHg上昇(P=0.04)と有意な関連が認められました。しかし、過体重群ではSBP上昇幅が0.5mmHgと小さかった(P=0.54)。

 

 

食品業界による加工食品の減塩努力が不可欠

 

このようなNa摂取およびNa/K比と血圧との直接的な関連は性、年齢、人種、社会経済的地位を問わず認められました。

 

Stamler氏らは「横断研究であるため因果関係を評価することはできない」と研究の限界を指摘した上で、「Na摂取およびNa/K比が血圧に及ぼす悪影響は確認されました。その他の主要栄養素および微量栄養素(血圧に影響するものを含む)はこの悪影響を相殺する効果が非常に小さいことが示された」と結論づけました。

 

「米国をはじめ多くの国におけるNa摂取源の大部分は市販の加工食品なので、高血圧の予防と管理のためには食品業界が商品の大幅な減塩に取り組むことが不可欠である」と付言しています。

 

 

International Study on Macro/Micronutrients and Blood Pressure

 

糖尿性腎腎臓病の分類:

糖尿病患者においては、糖尿病管理の向上と患者の高齢化とともに、以前よく見られていたネフローゼから腎機能低下に至る古典的な糖尿病腎症患者が減る一方で、蛋白尿を伴わずに腎機能低下を示す症例が増えてきました。

 

そこで、これらを総括して糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease)と捉えるようになっています。

 

日本腎臓病学会と日本糖尿病学会の合同委員会で「糖尿病性腎症」の病期分類が改訂されました。

 

血清クレアチニンにより算出されるeGFR30mL//1.73m²未満であれば蛋白尿の程度に関わらず、ステージが進むことになります。

 

ただし、2期を診断するにあたり微量アルブミン尿は必須です。そして、これは実際的には「糖尿病性腎臓病」の分類になっています。

 

 

糖尿病性腎症は糖尿病に罹患後、5年以上経過してから生じます。

 

診断する上で参考になるのが、微量アルブミン尿の検出の他、網膜症や神経障害などの合併症の存在です。

 

一般に、網膜症が腎症に先行することが多いです。

 

糖尿病性腎症初期には、検尿試験紙で蛋白尿を検出できないことが多く、また腎機能が低下しても腎が委縮しないことも多いです。

 

さらに血清クレアチニンは進行期にならないと上昇しません。

 

また糸球体濾過量(GFR)は、初期には糸球体過剰濾過によって増加しますが、末期には著明に低下します。

 

 

尿中微量アルブミン量測定は、早期診断に有効であり、糖尿病性腎症第2期(早期腎症)の診断根拠となり、このステージが糖尿病性腎症のうち76%を占めます。

 

なお尿アルブミン30~299mg/gCr、eGFR30mL/分/1.73m²以上であれば微量アルブミン尿と診断します。

 

このステージの尿中微量アルブミン尿は、不可逆的ではなく、治療によって正常アルブミン尿に戻せることがあります。

 

 

糖尿病性腎症に合併するキンメルスティール-ウィルソン症候群では、光学顕微鏡でキンメルスティール-ウィルソン病変と呼ばれる糸球体結節病変が認められることがあります。

 

 

<糖尿病・耐糖能異常の治療>

糖尿病は糖尿病腎症の原因であり、他の慢性腎臓病(CKD)の悪化因子でもあります。

 

また糖尿病はそれ自体で心血管系疾患(CVD)の強力な危険因子です。

 

糖尿病腎症の管理目標はHbA1c6.9%未満です。

 

しかし、腎機能が低下すると低血糖の危険も増すことに留意します。

 

重篤な腎障害ではインスリン治療を原則とします。インスリン自己注射を行っている者の多くにインスリン抗体が検出されますが、インスリン抗体の存在自体は治療の対象にはなりません。

 

 

糖尿病性腎症の食事療法として、顕性腎症期あるいはG3以上では低蛋白食が推奨されます。

 

 

糖尿病性腎症第4期(腎不全期)は尿アルブミン300mg/gCr以上,eGFR30mL/分/1.73m²未満ですが、このステージでは多量の蛋白尿が漏出し、ネフローゼ症候群を伴うものも少なくはありません。

 

糖尿病性腎症に伴って糸球体硬化が認められる場合は、腎機能が進行性に低下し腎不全となりやすいです。

 

病期分類4期に相当する2型糖尿病患者において、体液貯留に対しては利尿薬を投与し、高カリウム血症が是正されればRA阻害薬投与を検討します。

 

しかし、ビグアナイド薬とSU薬は禁忌です。

 

 

糖尿病性腎症に合併した高血圧にはACE阻害薬、ARBが第一選択です。

 

ACE阻害薬であるイミダプリル(タナトリル®)は糸球体の輸出細動脈をアンジオテンシンⅡ生成阻害作用により拡張して糸球体内圧を低下させることで腎症の発症や進展を予防します。

 

他のACE阻害薬、ARBも同様の作用を示すと考えられます。

 

Ca拮抗薬が追加される場合もありますが、サイアザイド利尿剤は血糖値を上げることがあるため、第一選択にはなりません。

 

なお、高度腎機能低下時に使用可能な経口血糖降下薬は限られています。

 

 

糖尿病性腎症での透析導入は、慢性腎不全の透析導入基準に従って、臨床症状、腎機能、日常生活障害度から判定します。

 

しかし、高齢者や糖尿病患者では血清クレアチニン値が5~7mg/dLでも早期から導入せざるを得ない場合があります。

 

なお、糖尿性腎症で透析導入患者では心血管イベントでの死亡率の割合が増加し、5年生存率は50%程度です。

 

糖尿病を合併した血液透析患者では、日本透析学会のガイドライン透析によると患者の血糖コントロールの指標には、HbA1cは参考程度に用いること、管理目標をGA20.0%未満(心血管イベントの既往があり、低血糖傾向のある患者では、GA24.0%未満を暫定的目標値)とすることが提唱されています。

 

糖尿病を合併した血液透析患者では、赤血球寿命が短縮し、透析に伴う失血やエリスロポイエチン製剤投与による幼弱赤血球増加などの要因によりHbA1cは平均血糖値と乖離して低値となります。

 

そのため、糖尿病を合併した血液透析患者の血糖管理の指標として適切にはなりえないからです。適切な指標としてグリコアルブミン(GA)が用いられます。

 

GAはアルブミンの糖化産物であり、赤血球寿命やエリスロポイエチン製剤投与の影響を受けず、過去約2週間の平均血糖値を反映します。

 

より具体的には、なおCペプチドはプロインスリンの構成成分でありインスリンと同じモル等量が分泌されるため、インスリン分泌能評価のために測定されます。

 

しかし、腎で代謝され尿に排泄されるため腎機能低下時の評価には注意を要します。

 

透析を要する高度腎機能低下時にはインスリン分泌が枯渇しているか否かの判断のみが可能です。

 

つまり、インスリン分泌の多寡の判断に用いることはできません。

 

「あせって、あわてて、………」

 

 

Nogucciの仕事ぶりです。

 

何でもないところで焦る、慌てて行動が雑になる。

 

「バタバタ」していてドクトル飯嶋にも「バタバタ」という言葉を使うな!

 

と注意を受けます。

 

確かに焦って動いていると仕事をしたつもりになっています。

 

体は動かしているのに、頭は動いていません。

 

 

それで、余計な仕事が増えたり、物を落したり、角にぶつかったりと効率が悪くなり、周りに迷惑をかけてしまいます。

 

すぐに結果を欲しくなって焦ってしまう。とういうこともしょっちゅうです。

 

 

ですので、前回の言葉「焦らず、慌てず、あきらめず」

仕事も、焦らず慌てず。

すぐに結果が出なくてもあきらめず。

 

こつこつと一歩一歩を大切に工夫を重ねているところです。

 

 

 

血小板が減少すると、皮下出血や粘膜出血を来します。

 

健常人では、止血機構が正常なので、出血傾向血栓傾向はみられません。

 

その理由は、血栓形成作用と抗血栓形成作用が均衡しているからです。

 

もし、このバランスが崩れると出血傾向や血栓傾向が生じます。

 

出血傾向は血栓形成作用より抗血栓形成作用が優勢出る場合に生じ、その原因は、血小板数の低下・機能異常、凝固因子の欠乏・機能異常、線溶系の亢進です。

 

 

さて、血小板数の減少により出血傾向を呈するものには、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)があります。

 

国際的には一次性免疫性血小板減少症(primary immune thronbocutopenia)という病名に置き換えられています。

 

重症度分類でステージⅡ以上のITPは指定難病の対象となります。

 

 

ITPでは、骨髄において自己血小板に対する抗体が産生され、抗体に感作された血小板が早期に網内系で破壊されます。

 

つまり、ITPは血小板の寿命が短縮する病気であり、正常の寿命は7~10日であるのに対して、急性期では3日以下となります。

 

また、赤血球数は通常正常範囲ですが、鉄欠乏性貧血を示すことがあります。

 

 

除外診断が主体で、自己血小板抗体の標的抗原は、GPⅡb-ⅢaおよびGPⅠb-Ⅸであることが明らかにされているので診断に有用ですが、残念ながらこの自己抗体測定検査は普及しておらず、また保険適応もないのが問題です。

 

またPAIgGは自己抗体のみならず、非特異的IgGも測定するため診断的意義は低いです。

 

 

一方ITPの原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌があります。

 

国内における高齢者のITP患者の約半数はヘリコバクターピロリ菌と関連があるため、『成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2011年版』では、診断後緊急時を除き、まずピロリ菌検査(尿素呼気試験、便中ピロリ抗原)をすることが求められています。

 

ヘリコバクターピロリ抗体陽性の場合は2010年に承認されたヘリコバクター・ピロリ除菌療法を行うと血小板増加が期待でき、奏功することがあります。

 

 

骨髄検査:

巨核球数が増加傾向となり、巨核球の大きさも増大傾向を示します。

 

ITPにおいて、個々の血小板の機能は亢進傾向にあるため、血小板数が5万/μL以下になっても、必ずしも著しい出血は生じません。

 

 

ステージⅠ:

無症状もしくは皮下出血(点状出血紫斑斑状出血、血小板数5~10万/μL

ステージⅡ:

無症状であっても、血小板数5万/μL未満

粘膜出血(歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、月経過多を含む)

 

ステージⅢ:

無症状であっても、血小板数2万/μL未満

皮下出血があれば、血小板数5万/μL未満

 

 

重症出血(生命を脅かす危険のある脳出血や重症消化管出血があればステージⅣ以上

 

さらに血小板数2万/μL未満でステージⅤ

 

 

 

治療:

ITPの治療は血小板数と出血症状によって決まります。

 

 

急性型ITP(血小板数≦2万/μL)では短期ステロイド投与(ステロイドパルス療法)の適応となります。

 

緊急時には血小板輸血が基本ですが、血小板数<1万/μLで、広範な紫斑や明らかな粘膜出血があるケースでは、大量免疫グロブリン静注療法およびステロイド療法を行います。

 

なお、免疫グロブリン製剤の投与は、

 

無症状+血小板数>3万/μL(ステージⅠおよびⅡの軽症型):無治療

 

無症状+血小板数2~3万/μL(ステージⅡの進行型):注意深い経過観察

 

血小板数<2万/μL、あるいは重篤な出血症状:少なくとも血小板数>3万/μLを保てるように治療する

 

 

1次:ステロイド(プレドニゾロン経口投与)

 

2次:脾摘(術前に血小板数を上昇させたり、著明な血小板数低下をきたしたりしたときの治療として免疫グロブリン製剤投与が行われます)

 

3次:トロンボポイエチン(TPO)受容体作動薬免疫抑制剤(アザチオプリンなど)

 

 

TPO受容体作動薬の効果は、脾摘の有無とは無関係であり、また内因性TPOとは構造が全く異なるため、抗体産生は誘導されません。

 

なお、ITPに対して血漿交換は無効です。

 

 

 

<妊娠合併ITP

妊婦の5~12%が15万/μL未満の血小板減少を来します。そのうち70~80%が妊娠性血小板減少で、妊娠2期の後半から3期に7~15万/μLの軽~中等度の血小板減少症です。

 

ただし、8万/μL未満の場合は経過観察と原因検索が必要です。

 

妊娠中のITPの治療は、血小板数を妊娠中は3万/μL以上、分娩時は5万/μL以上を維持することを目標とします。

 

 

妊娠中にITPを合併した場合には、出産に備え、血小板を増加させておくことが必要です。

 

妊娠合併ITPで安全に使用できる薬剤は副腎皮質ステロイドと免疫グロブリン製剤です。

 

ステロイドは中止せず継続します。ただし、胎児への影響や、帝王切開や会陰切開の縫合不全、感染のリスクを考え、緊急時でなければ、プレドニゾロン10~20mg/日で内服を開始し、血小板の反応をみて少量投与にとどめることが推奨されています。

 

副腎皮質ステロイドが無効または禁忌の場合や緊急時には、免疫グロブリン大量療法がおこなわれます。血小板数は投与後1週間程度で最大値となり、2~3週間で前値に戻ります。

 

 

なおTPO受容体作動薬は妊娠時に使用したデータは無く、胎児への影響も不明であるため、現時点では妊娠時に投与するのは勧められません。

 

また、ヘリコバクターピロリ抗体陽性の約60%が除菌により血小板が上昇しますが、除菌に用いるプロトンポンプ阻害薬と抗菌薬の妊婦と胎児に対する安全性と妊娠中の除菌の血小板増加効果は確立していません。

 

そのため、「妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド」では、除菌療法は分娩後に行うことが推奨されています。

 

 

参考:成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版(厚生労働科学研究班)

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「乳根(にゅうこん)」です。

 

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場所は乳頭から指2本分下にあります。

 

 

「母乳不足」「乳腺炎」「咳」「嚥下困難」「肋間神経痛」等に効果があります。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

消化器症状がありながら、その症状を説明できる器質的病変を特定することができない病態を機能性消化管障害といいます。

 

つまり、内視鏡検査や造影検査、血液検査などでは原因となる異常を認めません。

 

そのうち、大腸・小腸由来の消化器症状(下痢・便秘・腹痛)を呈するものを過敏性腸症候群(IBSといいます。

 

IBSでは、機能的疾患であるため下痢、便秘、腹鳴がみられますが、発熱や粘血便、体重減少などの警告症状は伴いません。

 

 

また急性胃腸炎は感染後過敏性腸症候群ともいわれます。IBSは一般人口の約15%にみられる頻度の高い疾患です。

 

ストレスの関与が考えられていますが、その明確な原因はいまだ不明です。

 

また、便の性状により、便秘型、下痢型など4つのサブタイプに分けることができます。

 

 

受診の数か月以上前から、腹痛・腹部不快感(排便で軽快する)、下痢や便秘(排便回数や便性状の変化)が見られます。

 

患者さんの性格、労働適応、ライフスタイル(特に食習慣など)が発症に関連します。

 

 

過敏性腸症候群の重要な診断基準:排便で腹痛と腹部不快感とが軽快します。

 

 

治療は、心療内科で心身医学療法を行うなど、本人の不安を軽減したうえで、薬物治療を行います。

 

1)患者さんへの説明:癌などの重大な病気ではないので、慌てないで治療に取り組むことの大切さをお伝えします。

 

2)生活指導:生活習慣やストレスも大いに影響するので、規則正しい生活や暴飲暴食・欠食の是正を指導します。

 

3)薬物療法:一般的には高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム)ラモセナロン塩酸(男性下痢型に有効)や消化管運動調整薬(マレイン酸トリメプチン)を投与した上で、腹痛・下痢・便秘に対して対症的に薬剤を選択します。高円寺南診療所では、漢方薬による治療を主体に行っています。

 

 

なお、過敏性腸症候群にも整腸剤が有効であり、整腸剤を用いたプロバイオティクス治療は症状改善に有用です。

 

三環系抗うつ薬は、抗コリン作用をもつため下痢型では効果がありますが、便秘型では悪化する可能性があります。

 

 

2016年Rome委員会より改訂RomeⅣが発表され、IBSの診断基準が示されました。

 

2017年に新たな過敏性腸症候群治療薬リナクロチド(リンゼス®)が承認されました。

 

 

参照:過敏性腸症候群の診断基準(RomeⅣ,2016

 

機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS)(日本消化器病学会、2014

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、10秒間以上の呼吸停止(無呼吸)や低呼吸が睡眠中に頻回に生じるものす。

 

そのいくつかはノンレム期にも出現し、昼間の過眠、集中力の減退や夜間の不眠が生じる病態を言います。

 

患者さんの受診動機としては、パートナーや同室者から指摘された睡眠中のいびきや無呼吸が最も多く、本人の自覚症状ではありません。

 

受診者本人は無呼吸に気づいておらず、自覚症状として最も多いのは日中の過剰な眠気ですが、これを感じていない受診者は不眠のみを訴えます。

 

また、逆に眠気あるいは睡眠障害を訴えても睡眠時無呼吸が見逃され、睡眠薬等を投与されることによってさらに増悪するケースもみられます。

 

 

SASの確定診断には終夜睡眠ポリグラフィ検査(ポリソムノグラフィ)が最も有用で必須です。

 

これは睡眠中の脳波、筋電図、眼電図、換気モニター(鼻・口の気流、いびき音、胸・腹部の換気運動)、パルスオキシメーター(SpO₂)、心電図などの様々な生理機能を連続してモニターし、SASの型、無呼吸/低呼吸、睡眠パターンなどを評価します。

 

一般には無呼吸や低呼吸の回数が睡眠1時間あたり5以上の場合、あるいは7時間の睡眠中に30回以上の場合に睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断します。

 

また、最近では、スクリーニング検査には、在宅で簡易睡眠時呼吸モニター(携帯型)も行われます。

 

 

閉塞型と中枢型に分けられますが、そのほとんどは閉塞型です。両者の混合型もあります。

 

閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSASは、睡眠時に仰臥位をとることで舌根部が沈下し、上気道が狭小化します。

 

上気道が閉塞することによる無呼吸では、その無呼吸中に呼吸努力、すなわち胸部や腹部の呼吸運動は観察されます。

 

これに対して、中枢型では呼吸努力が消失するという特徴があります。

 

 

SASの原因で一番多いのは、成人の場合は肥満です。生活歴では飲酒歴が問題となります。

 

ただし、わが国において閉塞型患者の約30%が肥満を伴わず、欧米より肥満を伴わない患者が多いです。

 

この理由として、頭蓋顔面骨の形態異常の上気道への関与が示唆されています。

 

甲状腺機能低下症(橋本病など)による粘液水腫に伴う巨舌で、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が生じるケースもあります。

 

 

軽症から中等症のSAS患者の不眠治療では、睡眠薬を服用しても呼吸状態は悪化しないとの報告があります。

 

特にメラトニン受容体作動薬ラメルテオンの安全性が優れています。

 

 

眠気を自覚症状として感じていない人はあまり苦痛を感じていないため、治療としての鼻マスク式持続陽圧呼吸<nCPAP>の導入および継続が進まないことが多いようです。

 

これに対して、重症例では睡眠薬の影響を否定できないため、低流量の酸素投与持続陽圧呼吸療法(CPAPなどで十分にSASの管理をしたうえでの睡眠薬等与が望ましいです。

 

SAS患者においてCPAP治療初期に睡眠薬を併用すると、その後の長期的なアドヒアランスの向上が期待できます。

 

通常この場合は、マウスピース使用、鼻腔持続陽圧呼吸療法、アセタゾラミドを用いて腎からの重炭酸イオン排泄を促進し、代謝性に呼吸を促進させるなどの方法があります。

 

 

本症候群の閉塞型に対しては持続陽圧呼吸療法(CPAP)の導入が優先されます。

 

呼吸刺激薬は呼吸中枢を直接(中枢性呼吸刺激薬)あるいは間接的に末梢化学受容体を介して(末梢性呼吸刺激薬)を刺激することにより、換気量を増加させることを目的に用いられます。

 

また閉塞型の場合は口蓋垂軟口蓋形成術(UPPP口腔装置(ORAPなども用いられます。

 

 

睡眠時無呼吸症候群に適応がある炭酸脱水素酵素阻害薬であるアセタゾラミド(ダイアモックス®)は腎尿細管でのHCO₃⁻の再吸収を抑制して代謝性アシドーシスをもたらし、pHを低下させることによって化学受容体を介して換気を刺激し呼吸を促進します。ただしその効果は限定的です。

「2018年水氣道に期待すること(中間報告)」

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今回は水氣道会員の皆様から寄せられた、今年の目標、

 

そして水氣道への要望等を簡単にまとめましたので

 

ここにお知らせしたいと思います。

 

 

これからも皆様の屈託のないご意見を

 

お待ちしておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

多系統萎縮症(MSA)は、孤発性(非遺伝性)の神経変性疾患です。

 

病理学的な特徴としては、オリーブ-橋-小脳系、線条体-黒質系、および自律神経系に神経細胞脱落を認めることです。

 

 

比較的急速に進行する錐体外路症状(パーキンソニズム:パーキンソン病様症状)と自律神経障害が主要所見であるため、パーキンソン病との鑑別が難しいことがあります。

 

 

小脳失調錐体路症状を伴っていれば、多系統萎縮症を疑います。

 

 

具体的には、3疾患があります。

 

画像所見としては、橋・小脳、中小脳脚、被殻の萎縮とMRIでのT2高信号、T2強調像で橋底部に十字サインを認めます。

 

病理組織学的に共通する特徴的なマーカーはグリア細胞内に封入体を認めることです。

 

MSA-C(オリーブ橋小脳萎縮症OPCA)

小脳失調(四肢協調運動障害、ふらつき、構音障害、眼振など)優位:経過が進むにつれて筋強剛(固縮)に置き換っていきます。

 

CT・MRIで小脳・橋下部の萎縮、MRIにて第四脳室拡大、MRI(T2強調像)で橋底部の十字サインを認めます。

 

 

MSA-P(線条体黒質変性症SND)

錐体外路症状優位:MRI(T2強調像)で被殻外側にスリット上の高信号域を認めることもあります。

 

 

シャイ-ドレイガ-症候群(SDS)

自律神経症状(起立性低血圧、膀胱直腸障害、発汗障害など)優位

 

ただし、病状が進行するにつれて、いずれの疾患も、パーキンソニズム(錐体外路症状)、錐体路徴候および自律神経症状が出現します。

 

わが国に多いのは、MSA-Cです。

 

 

 

根治療法はなく、対症療法が中心です。

 

たとえば、自律神経症状である起立性低血圧に対しては、血圧上昇効果を期待して、アドレナリン前駆物質であるドロキシドパ(ドプス®)を投与しますが、この薬剤は、パーキンソン病(ヤール重症度Ⅲ)におけるすくみ足、立ちくらみ;シャイ・ドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチーにおける起立性低血圧、失神、立ちくらみなども適応になっています。

 

リハビリテーションは、感覚や動きのトレーニングによる日常生活の活動度(ADL)や生活の質(QOL)の維持と向上を目的としています。

 

MSAの根本的な治療法ではありませんが、適切に行うことで症状を和らげ、身体の機能の低下を防ぎ、普通の社会生活を支障なく長く続けていくことが十分に可能となります。

 

 

また、なかには身体を動かさないため、廃用症候群と呼ばれるさまざまな障害を起こすケースがありますが、こうした症状も継続的なリハビリテーションにより改善できます。

 

MSAは原因が不明で進行性のため、途中でリハビリテーションをあきらめる方もおられます。

 

しかし、「難病だからこそ」「進行性だからこそ」、それを少しでも遅らせるために水氣道®によるリハビリテーションが必要です。