血液・造血器の病気
<免疫チェックポイント阻害薬>
最近の血液病学は、私が専門とするアレルギー学やリウマチ学その他の内科領域と同様に急速に分子医学化が進んでいる領域です。
分子医学とは、遺伝子、蛋白、その他の細胞分子がどのように機能しているのかを理解することによって疾患の診断法や治療法を開発していく医学の一分野です。
分子医学では、がんなどの疾患において特定の遺伝子、分子、細胞の機能がどのようにして異常化するのかを調べる研究がその基礎となっています。
アレルギー学やリウマチ学の基礎は免疫学にありますが、この免疫学自体が分子医学化して久しいため、私は多方面の最先端の医学専門領域と無関係ではいられない状況です。
とはいえ、学問としてではなく日常診療で臨床医学として実践できることは限られていますが、かつて不可能とされていたことが、次々に実現されていくわけですから、無関心のままで居続ける勇気はありません。
このような背景の中から、免疫チェックポイント阻害薬という、最先端の抗がん剤についてお話いたします。
私にとっても難しいので、皆様は読み流していただき現代の最先端医学の雰囲気だけでも味わっていただけたらと思います。
免疫チェックポイント阻害薬とは、自己のT細胞を利用して癌細胞を制御しようとする薬剤です。
免疫チェクポイント阻害薬の作用機序は免疫細胞に抑制のシグナルを入れる受容体あるいはリガンドを抗体でブロックし、
抗原提示細胞や腫瘍細胞からの抑制シグナル(ブレーキ)が入らないようにしてT細胞の活性化を持続させ、がん細胞を攻撃させることです。
抗原を認識して活性化したT細胞に発現する「抑制シグナルが入る補助刺激分子(受容体)」免疫チェックポイント分子と呼びます。
免疫チェックポイントの主たる働きはT細胞の活性化を抑制する信号を発する分子によるもので、CTLA-4分子, PD-1分子に代表されます。
CTLA-4はT細胞が樹状細胞から抗原提示を受けて教育・活性化される際(プライミング期)に、PD-1は活性化したT細胞ががん細胞を攻撃する際(エフェクター期)に作用します。
免疫チェック機能阻害薬には、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)、抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体(未承認)の3種があります。