今月のテーマ「膠原病の最新医療」

 

 

<関節リウマチ③…メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患>

 

わが国の関節リウマチ臨床の問題点の一つは、欧米に比べて、

 

悪性リンパ腫を含むリンパ増殖性疾患の発症率が優意に高いことです。

 

 

特に関節リウマチの第一選択薬であるメトトレキサート療法経過中に

 

リンパ増殖性疾患が発症することがあり、「メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患」と呼ばれます。

 

 

これは、原因不明の発熱、寝汗、体重減少、リンパ節の腫れなどが現れます。

 

 

原因となったメトトレキサートを中止することで症状が消失することもあります。

 

 

しかし、自然に小さくならない場合をはじめ、触診で肝臓や脾臓の腫れを認め、

 

血液検査で貧血や血小板減少、白血球分画異常、高LDH血症を認めた場合には、

 

早めに血液内科の専門医と協議して、化学療法を検討します。

 

 

リンパ節以外の病変も比較的多く、皮膚病変などにも注意が必要だとされています。

 

 

以上を「メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患」と一括りにしていますが、

 

実際には、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫など様々な組織型が認められています。

 

B細胞リンパ腫ではびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)という型が多いです。

 

なお、EBウイルス感染との関連が強く示唆されています。

 

今月のテーマ「膠原病の最新医療」

 

 

<関節リウマチ①…米国・欧州リウマチ学会関節リウマチ分類基準(2010)>

 

これは2010年に米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で作成した

 

関節リウマチの新しい分類基準です。

 

 

この基準を用いれば、発症から6週未満の症例でも関節リウマチの診断が可能です。

 

 

関節リウマチは、早期診断が特に重要な疾患の一つです。

 

 

それによって、より早く治療を開始することができます。

 

 

しかしながら、リウマチ診療で最も重要なポイントは

 

類似の症状を来す他の疾患との鑑別です。

 

 

特に、関節が腫れる他の病気の鑑別が必要になります。

 

 

以下が、米国・欧州リウマチ学会関節リウマチ分類基準(2010)の対象項目です。

 

1)罹患関節数(大小の関節)

 

2)血清学的検査(リウマチ因子、抗CCP抗体)

 

3)急性反応物質(CRP、血沈)

 

4)症状の持続期間(6週未満か以上か)

 

 

従来から、朝の手のこわばりの持続時間なども重視されてきましたが、

 

早期診断には適していないためか、分類基準には含まれていません。

 

 

関節リウマチに絞り込んだうえで、分類基準の点数化システムを活用します。

 

分類基準の項目の中に、6週間以上続く滑膜炎があります。

 

滑膜炎の診断には関節超音波検査が極めて重要です。

 

そこで高円寺南診療所でも関節超音波を積極的に活用しています。

今月のテーマ<脳神経内科>

 

 

50代男性。「左目の奥が痛み、まぶたが下がり、物が二重に見える」

 

 

そこで眼科を受診したところ、

 

「視力も正常だし、目に異常はないので、神経を診て貰いなさい」と言われた。

 

「どこを受診してよいかわからない」と妻に伝えたら、

 

「そういうときは高円寺南診療所で相談してみたら」と勧められて来院。

 

 

左目の奥が痛みだしたのは1週間前、同じく左目のまぶたが挙がりにくくなり、

 

物が二重に見えるようになったのは4日前から、とのことでした。

 

 

左側の瞳が外側を向いているのに気付いたため、

 

「左側の目で鼻の方向をみてください」と指示し

 

指先の動きを目で追っていただこうとしましたが、

 

瞳を内側(鼻側)に向けることはできませんでした。

 

 

神経学的検査:四肢の筋力、深部腱反射はすべて正常で、項部硬直もありませんでした。

 

ただし、額の左側の表在感覚は低下していました。

 

 

ドクトル飯嶋の推理:左目の奥の痛み、左側の額の皮膚感覚低下より

 

三叉神経(第一枝)の障害を疑いました。

 

 

左目の瞼が垂れ下がり(眼瞼下垂)、物が二重に見え(複視)、

 

左目が外転し、内転不能であることから左動眼神経麻痺を考えました。

 

症状が左目周辺に限局し、全身的には異常が認められないので、

 

頭蓋内の局所的病変と判断しました。

 

 

動眼神経も三叉神経もともに12対ある脳神経の仲間であり、

 

それぞれ第3、第5脳神経です。

 

 

複数の脳神経が障害を起こしている場合は、両者に共通する病態を考えてみます。

 

これに該当するのは、頭蓋内の海綿状脈洞付近に病変が表れる病態です。

 

この症例の場合、トローザ・ハント病が疑われます。

 

 

ドクトル飯嶋の指示:発症してから数週間を経ないと診断が確定できないため、

 

トローザ・ハント病ではなく、トローザ・ハント症候群(疑い)

 

として某大学の脳神経外科に紹介状を書きました。

 

 

この患者さんは、大学病院恐怖症のため、受診を渋っている間に、

 

左目痛のみならず激しい頭痛を来たし、再度来院されました。

 

 

必ず精密検査を受けることを条件に、副腎皮質ステロイドを少量投与しましたが、

 

大学病院受診の頃には、症状がかなり軽減してきたそうです。

 

 

最終診断:海綿状脈洞部の炎症性肉芽腫、およびそれによる

 

Tolosa-Hunt Syndrome(トローザ・ハント症候群)とのことでした。

 

 

後日譚:脳神経外科に定期受診中ですが、手術を免れ、

 

副腎皮質ステロイド剤のみの処方を受けているそうです。

今月のテーマ<脳神経内科>

 

 

「脳神経障害」No.2

 

 

前回<昨日>の <医学クイズ>の解答は、E 舌下神経です。

 

 

舌下神経は舌の運動を支配しますが、一側の舌下神経が障害を受けて麻痺すると、

 

左右の舌筋の緊張のバランスが崩れて、舌の先端は障害側(麻痺側)の反対側(健側)に偏ります。

 

 

これは、高円寺南診療所での実際の経験例です。

 

 

40代半ばの女性ソプラノ歌手です。

 

 

活躍中の声楽家で、「歌唱に際して、息が持たなくなった」という

 

深刻なご相談で、耳鼻咽喉科と女性科(婦人科)と心療内科を経て来院されました。

 

 

最初に掛りつけの耳鼻咽喉科を受診して異常なしとされました。

 

 

冷えがきつくなり、気分が不安定であったため、

 

更年期障害を疑い女性外来を受診したが、女性ホルモン等も異常なし。

 

 

そこで、心療内科(実は、精神科)を受診したところ、

 

抑うつ神経症と診断され、抗うつ薬を処方されたとのことでした。

 

 

一息でできるだけ長く「あー」と声を出した時間を最長発声持続時間といいます。

 

 

平均的には男性30秒、女声20秒程度とされています。

 

 

また9秒以下は呼吸機能や声門閉鎖に何らかの異常があるとされます。

 

 

この方の最長発声持続時間は、12秒でしたが、現役の声楽家であり、

 

以前の3分の1以下に短縮したとしたら、職業上大きなハンディになることでしょう。

 

 

最長発声持続時間が以前より顕著に短縮したばかりでなく、

 

声のかすれ(嗄声:させい)も気にされていました。

 

 

神経学的検査:

 

三叉神経(Ⅴ)は顔面の感覚や舌の前3分の2の温痛覚や触覚、

 

咬筋の運動に関与します。

 

 

顔面神経(Ⅶ)は顔面の筋の運動、舌の前3分の2の味覚に関与します。

 

 

舌咽神経(Ⅸ)は咽頭の働き、舌の後3分の1の感覚に関与します。

 

 

迷走神経(Ⅹ)から反回神経が枝分かれし、声帯を支配します。

 

 

副神経(Ⅺ)は胸鎖乳突筋や僧帽筋の運動を支配します。

 

 

三叉神経 

 

喉が腫れぼったく見えたため、

 

甲状腺を触診してみると、確かに腫れているようでした。

 

甲状腺超音波、血液検査(甲状腺ホルモン、自己抗体など)により

 

慢性甲状腺炎(橋本病)であることがわかりました。

 

発声中に喉頭鏡で観察しましたが、

 

声帯の動きに麻痺が生じているかどうかは微妙でした。

 

 

 

それでは、以上の情報をもとに頭の体操をしてみましょう。

 

特別な専門知識がなくても、クイズ感覚でチャレンジしてみてください。

 

 

<医学クイズ>麻痺によって最長発声持続時間が短縮するのはどれでしょうか。

 

 

A 三叉神経 B 顔面神経 C 舌咽神経 D 迷走神経 E副神経

 

 

答えは D 迷走神経です。

 

迷走神経の枝である反回神経が発声に重要な声帯の動きを支配します。

 

この方は、慢性甲状腺炎により甲状腺が腫大して、

 

その近くを走行する反回神経に障害を起こしていたことが推定されました。

 

 

慢性甲状腺炎の治療開始により、頸部の腫れ、冷え性、かすれ声は解消し、

 

最長発声持続時間も徐々に延長し、

 

以前とほとんど変わらない状態にまで回復しました。抗うつ薬も不要になりました。

 

 

現在は、名ソプラノ歌手として、今まで以上にご活躍中です。

 

今月のテーマ<脳神経内科>

 

 

「脳動脈瘤破裂」

 

 

脳動脈瘤破裂がくも膜下出血の原因の8割を占めることは、

 

昨日ご説明した通りです。

 

 

今回は、典型例である「脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血」の場合、

 

そのあと、どのような経過となりうるかについてのお話です。

 

 

その前に、前回<昨日>のクイズの正解は、

 

D 片麻痺 以外のすべて でした。

 

 

解説:特徴的な症状とは、その症状だけで、

 

病気の原因を絞り込むことができる症状を意味します。

 

 

くも膜下出血の自覚症状は、急激な発症(B突発性発症)、激しい頭痛(C)

 

悪心・嘔吐(A)、羞明(まぶしさに過敏な状態)等を特徴とします。

 

 

その他、意識喪失も頭痛とほぼ同時に、約半数の症例で生じ、

 

多くは一過性で数分から1時間以内に回復されますが、

 

急激に昏睡に陥る場合もあります。

 

 

くも膜下出血の他覚所見としては、脳の髄膜が刺激されて生じる症状(髄膜刺激症状)として、

 

うなじが硬くなり動かしにくくなる項部硬直(E)やケルニッヒ徴候などが重要です。

 

ただし、急性期や高齢者では、これが認められないことが多いので厄介です。

 

 

D片麻痺や不全片麻痺などの神経症状は脳実質の局所症状として重要です。

 

その場合は、脳の内部に血液の溜り(血腫)を形成した場合や、

 

血管が痙攣して脳梗塞を併発した場合に生じることが多いです。

 

 

脳動脈瘤破裂⇒くも膜下出血の流れについてご説明しましたが、

 

急性期や慢性期の合併症や後遺症もなかなか厄介な問題です。

 

 

意識障害、認知症、尿失禁、歩行障害のほか、

 

くも膜下出血そのものでは特徴的ではないと、前回説明させていただいた

 

片麻痺が、遅れて発症することがあります。

 

今月のテーマ<脳神経内科>

 

 

「くも膜下出血」

 

 

くも膜下出血は、三大脳卒中の一つです。

 

原因は、脳動脈破裂によるものが全体の80%を占め、

 

次いで脳動静脈奇形が5~10%を占めています。

 

 

一般の頭部CT検査でくも膜出血が確認できれば診断が確定します。

 

しかし、はっきりしない時は、MRI検査(専門的にはフレア像)を行います。

 

さらに、それでもはっきりしないことがあります。

 

 

最終的には髄液の検査で確認します。

 

しかし、出血により頭蓋内の圧が高まっているときに検査をすることで

 

致命的な転帰となることがあるので扱いには細心の注意を要します。

 

 

そこで、基本に戻って、患者さんの症状から、

 

くも膜下出血に特徴的なものを見落とさないことが大切になります。

 

 

セルフ・ケアのための感覚を養っていただくために

 

クイズを出題いたしますので、チャレンジしてください。

 

 

<医学クイズ>くも膜下出血で特徴的な症状はどれか 

 

A 悪心・嘔吐 B 突発性発症 C 激しい頭痛 D 片麻痺 E項部硬直

 

 

ヒント:くも膜下出血の出血の拡がりの特徴により、

 

発症による身体症状の左右差は他の脳卒中よりも少ないです。

 

 

解答と解説は次回<明日>です。

今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

 

仕事が残っていて、周りに迷惑をかけている。

 

どうしても入院したくない、とおっしゃるので、

 

最悪、明日以降も外来受診の可能性を考えながら血液検査をしました。

 

 

幸い、同居人の彼氏が同伴していたので、彼に十分説明したところ、

 

彼氏が、緊急入院を説得してくれました。

 

 

以下は、翌日に届いたデータです。

 

血液検査所見:赤血球370万、ヘモグロビン11.8g/dL、Ht36%、

 

白血球数15,800(桿状核好中球16%、分葉核好中球63%、単級4%、リンパ球17%)、

 

血小板16万。CRP30mg/dL

 

以上のデータを入院先の病院の担当医に送ったところ、

 

以下の返事をいただきました。

 

 

「緊急入院直後、ただちに頭部単純CTを撮り異常を認めませんでした。

 

そこで腰椎穿刺により脳脊髄液を採取し、

 

グラム染色をして鏡検(光学顕微鏡での検査)したところ、

 

グラム陽性双球菌を検出しました。

 

ご紹介ありがとうございました。」

 

 

この症例は、最終的に肺炎球菌による細菌性髄膜炎という診断でした。

 

髄膜炎を見逃すと、患者さんは不幸な転機をたどります。

 

 

しかし、髄膜炎と診断できても、原因はさまざまで、それによって対処法が異なります。

 

原因を突き止めずに、手当をすることは無謀です。

 

「解熱剤と痛み止めをください。」という患者さんの希望に添うだけで

 

帰宅していただいたら大変な事態を招いていたことでしょう。

 

 

髄膜炎の原因が細菌であることが早期に判明し、

 

適切な抗生物質が投与されたことによって無事に退院できたそうです。

今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

 

「髄膜炎」Vol.1

 

 

20代の女性。激しい頭痛のため来院。

 

「市販の薬が効かないので、良く効く解熱剤と痛み止めをください。」

 

とのご希望でした。

 

今朝は高熱とともに頭がぼんやりするんで会社を休んで受診することにしたとのことでした。

 

 

簡単にお話をうかがうと、

 

頭痛の部位は額(前頭部)で3日前の金曜日に発熱とともに出現し、

 

いずれの症状も次第に増強して、月曜の朝を迎えた模様でした。

 

 

診察中にすでにウトウトしだし、

 

普通にお名前を呼び掛けると容易に開眼するため、

 

JCSⅡ-10と評価しました。

 

 

その他のバイタルサイン:

 

脈拍140/分、脈不整なし。血圧128/76mmHg,

 

体温39.8℃(平熱36.2℃)

 

 

神経学的検査:

 

うなじが硬くなって動かない(項部硬直)

 

ケルニッヒ徴候(陽性)

 

対光反射、眼球運動、四肢運動および腱反射は異常なし。

 

バビンスキー反射、異常なし。

 

今後の対応のため採血を実施しました。

 

 

発熱、頭痛、意識障害、項部硬直、ケルニッヒ徴候陽性という所見から、

 

すぐに髄膜炎を疑い、緊急入院先を手配しました。

 

 

 

今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

重症脳卒中(JSS30以上)」Vol.2

 

 

幸いこの男性は、一命を取り止め、少しずつ回復していきました。

 

しかし、1ヶ月後に、妻からの報告をうかがうと、

 

「食膳の左側にあるものをまったく食べようとしません。」

 

ということでした。

 

 

患者さんの嫌いな食べ物が左側に配置されているからではありません。

 

左側にあるものを認識できない状態で、半側空間無視といいます。

 

 

この症例の脳梗塞による脳障害が右の頭頂葉に及んでいたためだと判断することができました。

 

右の頭頂葉障害があると、反対側である左の空間半側無視が生じ、

 

左側にあるものを認識できなくなることがあります。

 

 

この患者さんを診察したところ、ゲルストマン症候群を認めました。

 

 

補足解説:大脳には左右一対の半球がありますが、

 

それぞれ役割分担をしていて、一方が優位半球、他方が劣位半球となります。

 

右利きの人のほぼ100%、左利きの人の50%では、左大脳半球が優位半球です。

 

 

優位半球の頭頂葉が障害されると、

 

左右失認(左右の区別がつかない)、手指失認(指定された指を示せない)、

 

失算(簡単な計算ができない)、失書(簡単な文書を読めない)

 

の4つを主徴とするゲルストマン症候群を来すことが知られています。

今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

 

「重症筋無力症クリーゼ」

 

この症例は70代女性でした。女子大生の寮の受付に従事していた方です。

 

 

「午前中は問題ないが、午後になると上瞼が重たくなり、頭を支えていることが辛くなる」

 

とのことでした。

 

疲れやすく、力が入りにくくなるが、休息すれば回復するという報告だったため、

 

水氣道に毎週1回参加していただくことになりました。

 

       

素朴ですが物静かで落ち着いた方でしたが、団体生活の中での悩み等もあり、

 

慢性疲労による軽度抑うつ状態であると考えていました。

 

 

しかし、抑うつ状態に比して、疲れやすさが増強してくる傾向があり、

 

ちからを使えば使うほど力が入らなくなる、という訴えに対して、

 

身体的精査に取り掛かるためのお話をはじめようと準備していました。

 

 

その矢先のことでした。

 

「しゃべりずらく、飲み物が飲みにくく、ろれつが回らなくなってきたことを同僚に指摘され

 

某病院に入院することになりました」

 

とのご報告を受けました。

 

 

精密検査の結果は、重症筋無力症、でした。

 

 

この病気の後発年齢は、小児や20から40歳代までの女性、50から60歳代の男性で、

 

初発症状は眼瞼下垂(まぶたが下がる)、複視(物が二重に見える)で、

 

次第に筋力低下が明らかになってきます。

 

彼女は、下半身はしっかりしていて、水氣道の稽古により、体調も良く、

 

午前中の生活に関しては全く支障がありませんでした。

 

 

胸部CT検査で胸腺腫が発見されたため、胸腺摘除術を受けることになりました。

 

ただし、手術ストレスやその後の過労や治療薬により、

 

筋無力性クリーゼという重症化発作を経験されたそうです。

 

その後は、ステロイド内服療法と免疫抑制薬療法を継続されているとのことです。

 

 

四肢の脱力や呼吸困難といった顕著な症状が出現する前の段階で、

 

この病気を早期発見することのむずかしさを経験しました。

 

元来体力が低下していて永年運動習慣のない方であったため、

 

入院や手術の前に、水氣道一定程度の体力と抵抗力を養っておくことができたのは、

 

せめてもの幸いだったと思います。

 

 

解説:重症筋無力症

 

神経と筋肉をつなぐ部位である神経筋接合部において、

 

アセチルコリン受容体に対する自己抗体が出現することによって、

 

神経筋伝達障害をきたす疾患です。

 

自分の体の一部を異物と錯覚して攻撃してしまう病気を自己免疫疾患といいますが、

 

関節リウマチをはじめとする膠原病や、

 

バセドー病や橋本病などの甲状腺の病気もその仲間です。

 

有病率は10万人あたり1ないし2です。しばしば、胸腺腫を合併します。