不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。

 

抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。

 

最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。

 

 

Q4 

心房細動になるリスクについてより具体的に教えてください。

 

 

杉並国際クリニックからの回答

心房細動は複数のリスク要因が複合して発症する多因子疾患です。

 

心房細動のリスク要因は、加齢・高血圧・糖尿病・心不全・メタボリックシンドローム・家族歴等がそれぞれ独立したリスク要因です。このリスク要因は、遺伝的素因および後天的素因に分けることができます。

 

とりわけ心房細動の最も強い発症リスク因子として、年齢、弁膜症を含む心不全の有無ならびに高血圧が挙げられます。

 

心房細動は遺伝的素因の寄与が高いとされますが、遺伝的素因に関しては介入の余地はありません。そこで、後天的素因に関しては、生活習慣改善等のリスク因子の治療により心房リモデリングを抑制することで、心房細動の発症や進展を抑制できる可能性があります。心房細動に対するカテーテルアブレーション後に積極的な生活習慣改善を試みると、心房細動の再発が有意に抑制されるという報告があります。

 

以上をまとめると、心房細動は加齢を背景として、高血圧や糖尿病等のリスク因子が複合して心房の線維化が生じ、トリガー興奮が加わって発症するという経過をたどります。

 

しかし、さらに、いくつかの病態において心房細動が発症することが知られています。つまり、一定の基礎疾患があって心房細動が二次的な病気として発症することがあるということです。

 

1)開心術の周術期には心房細動の合併が多いですが、これは開心術に伴う心房の炎症が主な原因と考えられます。

 

2)僧房弁狭窄症では左心房に対する圧負荷が心房の線維化と炎症を強力に惹起することから、高率に心房細動を合併します。

 

3)甲状腺機能亢進症に心房細動の合併が多いことも知られています。

 

したがって、明確な基礎疾患がある場合には、心房細動の治療に加えて、基礎疾患の治療も行う必要があります。

 

また、心房細動の中でも、発作性の心房細動には、主として夜間等の副交感神経優位なときに発作が生じるタイプや運動中等の交感神経活動優位なときに発作が生じるタイプがあります。これらは、互いに逆のメカニズムで発作を生じさせているので、いずれのタイプかを吟味しておくことが必要です。

不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。

不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。

 

最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。

 

Q3 

心房細動になるメカニズムについて教えてください。

 

 

杉並国際クリニックからの回答

心房細動は、遺伝的素因および後天的素因が複合して発症する病気です。

家族歴はリスク因子として報告されています。片親が心房細動を有する場合のリスクは1.85倍、両親共に心房細動を有する場合のリスクは3.23倍です。

 

後天的素因としては、心房筋の線維化等を主体とする心房リモデリングは、高血圧等の基礎疾患に伴い、心房細動発症前から進んでいると考えられています。

また、心房細動の約40%は無症候性、つまり自覚症状を伴わないため治療対象と認識されないケースが多く、脳梗塞を初発症状として発見される場合があります。

 

心房細動になるメカニズムについてのご質問は、メカニズムを知ることによって予防策を講じたいというお考えだと思います。予防のためには、後天的素因について理解しておくことが有用だと思います。後天的素因として中核に挙げられるのは心房のリモデリング(再構築)です。

多くの研究が示しているのは、心房細動のリスク因子が心房リモデリングを促進し、心房細動基質を増加させているという結果です。

 

心房リモデリングに影響を与える因子として、心房炎症によるサイトカイン産生、レニン・アンジオテンシン系の亢進、酸化ストレス、マイクロRNAの発現変化、主要増殖因子TGF-βシグナルの活性化等があり、それらが複合的に関与しています。

 

心房リモデリングは、心筋のイオンチャンネルの変化に代表される電気的リモデリングおよび心筋組織の線維化に代表される構造的リモデリングに分けられます。

そして、いずれのリモデリングも心房での伝導遅延を生じさせ、リエントリーを持続させることになります。

 

リエントリーとは、病的な心臓では,自律的な電気回路が心筋組織の一部分に新たに形成され,そこを異常な興奮がくり返し旋回することです。正常な心臓では,洞房結節で発生した歩調取電位が刺激伝導系を順次伝播し心臓全体の同期した収縮をひき起こします。

  

心房細動になるメカニズムを簡単にまとめると、そもそも電気的な興奮の伝導によって収縮を引き起こす心臓において、さまざまな素因に基づき心房が形の面からも働きの面からも変性するリモデリングが生じることによって、電気的興奮の伝達遅延が生じることによる、と説明することができます。

 

不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。

 

そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。

 

最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。

 

 

Q2 

心房細動の患者さんはどれくらいいるのですか?

 

杉並国際クリニックからの回答

日本人の心房細動有病率は、総人口あたりで0.6%程度、高齢者で2~4%と報告されています。日本循環器学会疫学調査では、70歳代で2.1%(男性3.4%、女性1.1%)、80歳以上では3.2%(男性4.4%、女性2.2%)です。

 

しかし、症状を伴わない無症候性の心房細動が発見されにくいことに加えて、心房細動は初期には発作性であるため、発作のタイミングによって、発見されにくく、なかなか診断に至らない場合も多いということから、実数はこれよりはるかに大きいことが推測されます。

 

このように心房細動発症に影響を与える要因の一つとして、年齢が大きく関わってきます。超高齢社会を迎えたわが国では、心房細動の有病率は着実に上昇しています。

 

かつてはリウマチ性弁膜症(多くは僧房弁狭窄症)に伴う心房細動が多かったです。しかし、この病気が減少するにつれて、リウマチ性心房細動は減少しました。そのかわりに増えているのが、生活習慣病や加齢を背景とした非弁膜性心房細動です。

 

心房細動は、現在では高齢者に多くみられる不整脈疾患であり、日常診療でも遭遇することの多い、普通の病気であるといえます。

 

不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。

 

そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。

 

最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。

 

 

Q 1 

心房細動とは、どのような病気ですか?

 

 

杉並国際クリニックからの回答

心房細動は心房が高頻度に興奮することによって起こる不整脈です。心房細動は発作性にはじまり、徐々に発作の持続時間が長くなって慢性化するという自然経過をたどります。

 

始めて心房細動が確認されたものを初発心房細動といいますが、心房細動発作が7日を超えて持続せず自然停止するものを発作性心房細動と呼びます。これに対して、心房細動の発作が7日を超えて持続するものを持続性心房細動、さらに1年以上持続するものを長期持続性心房細動、心房細動が持続し、除細動不能で洞調律に復帰しないものを永続性(慢性)心房細動と呼びます。

 

洞調律とは、正常な脈拍であり、上大静脈と右心房の境界付近にある洞結節から発生する活動電位が心房、心室へと伝わり、心臓が1分間に60~80拍の心拍数で規則的に収縮する状態です。

 

このような心房細動の進行に心房のリモデリング(再構築)が関与します。心房のリモデリングが進行すると、電気的除細動等により洞調律に復帰しても、すぐに心房細動が再発し持続するようになります。

 

心房細動は、遺伝的要因に加えて、加齢や生活習慣による後天的素因が複合して発症し、徐々に慢性化していく病気です。心房細動の最大の合併症は心原性脳梗塞であり、塞栓症リスク・出血リスクの評価に基づく凝固療法が大切です。

日本腎臓病学会のHPには、有益情報が満載されています。

 

そこで今回から、テーマは腎臓内科の慢性腎臓病(CKD)です。

「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン2018」を紹介します。

 

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

慢性腎臓病(CKD)とは、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場合と定義されています。症状が出現することはほとんどないため、永らく見落とされてきた新たな国民病であり、多くの皆様に関わってくる病気です。蛋白尿や腎機能異常(eGFRの測定)により診断されます。

 

慢性腎臓病のケアには栄養管理が不可欠です。具体的な推奨について理解を深めてください。

 

 

第5章 腎硬化症・腎動脈硬化症

CQ 1 

高血圧を伴う腎硬化症によるCKDに厳格な降圧は推奨されるか?

 

推奨 

高血圧を伴う腎硬化症によるCKDにおいて,特に蛋白尿A1区分では収縮期血圧120 mmHg未満への厳格な降圧は,AKIのリスクがあるため行わないよう提案する.降圧目標としては,140/90 mmHg未満への降圧を提案する

 

CQ 2 

腎動脈狭窄を伴うCKDに推奨される降圧薬は何か?

 

推奨 

片側性腎動脈狭窄を伴うCKDに対してRA系阻害薬はそのほかの降圧薬に比して降圧効果に優れ,死亡,CVD発症,腎機能低下を抑制する可能性があり,使用することを提案する.ただしAKI発症のリスクがあるため,少量より開始し血清CrとK値を投与開始から2週間を目安に確認しつつ注意深く用量を調節する必要がある.両側性腎動脈狭窄が疑われる際は原則として使用しない

 

CQ 3 

腎動脈狭窄症を疑うCKDステージG1~3に推奨される画像検査は何か?

 

推奨 

スクリーニング検査として腎動脈超音波検査をまず行い,次のステップとして単純MRアンギオグラフィを行うよう提案する. CT血管造影,ガドリニウム(Gd)造影 MRアンギオグラフィを実施する場合,造影剤腎症や腎性全身性線維症のリスクを十分に考慮する必要がある.これらの検査で診断に至らない場合や血管形成術の適応を検討する場合は腎動脈造影検査を行うよう提案する

 

CQ 4 

動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに血行再建術は推奨されるか?

 

推奨 

動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに対する血行再建術は,腎障害進行抑制やCVD発症のリスクを減少させないため,合併症のリスクを考慮し,原則として行わないよう提案する

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

慢性腎臓病(CKD)は高血圧を伴いやすく、進行すれば腎硬化症・腎動脈硬化症を来します。その場合の降圧治療や、画像検査等には特別な配慮を要し、また血行再建術などの治療手段にも制限が加わります。結論が解り易くなるように再整理してみました。

 

CQ 1 

高血圧を伴う腎硬化症によるCKDに厳格な降圧は推奨されますか?

 

A1:

高血圧を伴う腎硬化症によるCKDにおいて,特に蛋白尿A1区分では厳格な降圧(収縮期血圧120 mmHg未満)は推奨されません。その理由は急性腎障害(AKI)のリスクがあるためです。

 

 

CQ 2 

腎動脈狭窄を伴うCKDに推奨される降圧薬は何ですか?

 

A2:

腎動脈狭窄を伴うCKDに対して片側性腎動脈狭窄の場合に限り、RA系阻害薬の少量からの投与が推奨されます。その理由は、他の降圧薬より降圧効果に優れ,死亡,CVD発症,腎機能低下を抑制する可能性があるからです。ただし、AKI発症のリスクに注意する必要があります。

 

 

CQ 3 

腎動脈狭窄症を疑うCKDステージG1~3に推奨される画像検査は何ですか?

 

A3: 

①スクリーニング検査として腎動脈超音波検査をまず行います。

②次のステップとして単純MRアンギオグラフィを提案します。

CT血管造影ガドリニウム(Gd)造影 MRアンギオグラフィを実施する場合,造影剤腎症や腎性全身性線維症のリスクを十分に考慮する必要があります。

④これらの検査で診断に至らない場合や血管形成術の適応を検討する場合は腎動脈造影検査を行うよう提案します。

 

 

CQ 4 

動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに血行再建術は推奨されますか?

 

A4:

動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに対する血行再建術は,原則として行わないよう提案します。その理由は、腎障害進行抑制やCVD発症のリスクを減少させないため,合併症のリスクを考慮する必要があるためです。

日本腎臓病学会のHPには、有益情報が満載されています。

 

そこで今回から、テーマは腎臓内科の慢性腎臓病(CKD)です。

 

「エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン2018」を紹介します。

 

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

 

慢性腎臓病(CKD)とは、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場合と定義されています。症状が出現することはほとんどないため、永らく見落とされてきた新たな国民病であり、多くの皆様に関わってくる病気です。蛋白尿や腎機能異常(eGFRの測定)により診断されます。

 

慢性腎臓病は、腎臓という単一臓器の疾患ではなく、生活習慣病としての側面をもつ多臓器疾患、すなわち全身病へと発展するリスクのある疾患であることを理解してください。

 

 

第2章    生活習慣

 

Q 1 

CKD患者に禁煙は推奨されるか?

 

A1

 CKD進行やCVD発症および死亡リスクを抑制するためにCKD患者に禁煙は推奨されます。

 

Q 2 

CKD患者の適度な飲酒量はどの程度か?

 

A2

CKD患者を対象とした観察研究が少なく,適度な飲酒量についての推奨は困難です。

 

 

Q 3 

CKD患者の睡眠時無呼吸症候群に対する治療は推奨されるか?

 

A3 

CKD患者の睡眠時無呼吸症候群に対して治療を行うよう提案します。

 

Q 4 

CKD患者にワクチン接種(肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチン)は推奨されるか?

 

A4

CKD患者における肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザワクチン接種の感染予防効果は明らかではないが,ワクチン接種後の抗体価の上昇が認められており,接種するよう提案します。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

禁煙は、患者指導の基礎の基礎であり、教養ある社会人として、東京のような人口密度の高い大都市で生活するのであれば、なおさら最低限度のマナーの一つであると考えます。そして、ワクチン接種(肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチン)は必ず接種してください。

 

喘息や慢性気管支炎あるいは狭心症や心筋梗塞の既往があるにもかかわらず、禁煙する意思のないかたも少なくありません。中には肺癌で手術を受けて片肺になって酸素療法をしているのにタバコを吸い続ける強者までいらっしゃいます。

 

喫煙者は喫煙継続のためには実にしたたかな言い訳をして、ときには禁煙指導者を敵視することさえあります。そうした喫煙者の口からしばしばこぼれ出てくる言葉が「医師はサービス業ではないのか?」とか、「患者中心の医療の時代だろ?」などの表現です。こうした言葉を頻繁に使っている患者さんの中には、言葉の意味を弁えていない人が少なくありません。  

 

まさか<無料で物や労務の提供をする業務をする人である>とまで思い込んでいるひとは居なくなりましたが、<お客様相手の商売人で、お金さえ払えばわがままをきいてくれて当然の仕事をする人>と考えている方は、残念ながら未だに後を絶ちません。このような方たちは、無責任で無教養なカタカナ日本語のニュアンスで感覚的に受け止めている人たちであって、彼らの理解のレベルといえば、ひどいものです。試みに、サービス業に関する彼らの認識のレベルを分類してみます。

 

レベルⅠ:商売で、値引きしたり、おまけをつけたりすること。

 

レベルⅡ:商売で、客をもてなすこと。

 

少なくとも、そうした彼らには、以下のレベルでの理解を期待することは経験上極めて困難です。言語である英語のServiceには以上のような意味はありません。

 

「医師はサービス業ではないのか?」とか、「患者中心の医療の時代だろ?」と発言する人は、せめてレベルⅢもしくはレベルⅣの意味を前提として発言していただきたいものです。

 

 

レベルⅢ:人のために力を尽くすこと。

 

レベルⅣ:質的財貨を生産する過程以外で機能する労働。用役。役務。

 

これに対して杉並国際クリニックが目指す医療は、次のレベルⅤの意味を前提とするものです。

 

 

レベルⅤ:プロフェッションとして人のために尽くすこと。プロフェッションとは,西欧で,宗教家・医師・法律家の3つを指し,「人のために尽くすよう天地神明に誓うことが求められる専門職」という意味の言葉です。

少し脱線してしまいましたが、この記事をお読みになっている皆様には必要のないコメントであったかもしれません。

内科Ⅱ(循環器・腎臓・老年医学)

 

日本腎臓病学会のHPには、有益情報が満載されています。

 

そこで今回から、テーマは腎臓内科の慢性腎臓病(CKD)です。

 

「エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン2018」を紹介します。

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

 

慢性腎臓病(CKD)とは、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場合と定義されています。症状が出現することはほとんどないため、永らく見落とされてきた新たな国民病であり、多くの皆様に関わってくる病気です。蛋白尿や腎機能異常(eGFRの測定)により診断されます。

 

少し専門的で難しい部分もあるので、全てを理解する必要はありませんが、CQ2とCQ4は知っておくと良いと思います。私のコメントを読んでください。

 

 

第1章    CKDの診断と意義

 

CQ 1-1 

CKDはどのように診断されるのですか?

 

A

推奨 CKDの定義は以下の通りであり,①,②のいずれか,または両方が3カ月以上持続することで診断します。

 

 

① 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿(30 mg/ gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要.

 

②糸球体濾過率(GFR)<60 mL/分/1.73 ㎥ 

 

なおGFRは日常診療では血清Cr値,性別,年齢から日本人のGFR推算式を用いて算出します。  

 

eGFRcreat(mL/分/1.73 m2)= 194×血清Cr(mg/dL) -1.094×年齢(歳) -0.287  

女性の場合には×0.739

 

注:酵素法で測定されたCr値(少数点以下2桁表記)を用いる.18歳以上に適用します。

 

 

CQ 1-2 

CKDの重症度はどのように評価するのですか?

 

A

推奨  CKDの重症度は,原疾患(Cause),腎機能(GFR),蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria)に基づく CGA分類で評価します A 1 .

 

CQ 2 

尿蛋白1+以上の健診受診者は医療機関への受診が推奨されるか?

 

A

推奨  健診受診時に尿蛋白1+以上の受診者は-や±の受診者と比べてESKDに至るリスクのみならず, 心血管死や総死亡のリスクも高いことが示されています。医療機関での診療を受けることにより,これらのリスクを軽減できる可能性があるため受診が推奨されます。 

 

 

CQ 3 

65歳以上の健診受診者でeGFR 45未満の場合,医療機関への受診が推奨されますか?

 

A

推奨  65歳以上であってもeGFRが45より低値では,総死亡およびESKDのリスクが上昇することから,eGFR 45未満の場合には腎臓専門医・専門医療機関への受診が推奨されます。 B 1 .

 

 

CQ 4 

特定健康診査(メタボ健診)においてアルブミン尿・蛋白尿検査は推奨されるますか?

 

A

推奨  メタボ健診においてアルブミン尿・蛋白尿陽性者は全死亡, CVD発症,腎機能低下の高リスク群であるため,アルブミン尿・蛋白尿検査を行うよう推奨します .

 

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

高円寺南診療所開設の初期から、初診時には尿検査を行ってきました。採尿用の紙コップに尿を採っていただければ、簡単に蛋白尿を調べることができます。

杉並区の健診などにも基本的な検査項目に含まれています。この検査は、半定量法といって、アナログ数値ではなく、

「ー ± + ⧺・・・」

で評価します。

 

なお測定対象は尿蛋白であり、尿アルブミンではありません。アルブミンは蛋白の主要な成分の一つです。

 

CQ-2の回答では<健診受診時に尿蛋白1+以上の受診者は-や±の受診者と比べてESKDに至るリスクのみならず, 心血管死や総死亡のリスクも高いことが示されています。>と説明しているとおり、健診受診時に尿蛋白1+以上であれば、再検査することをお勧めします。

そして、その際には、より厳密な方法で、尿中のタンパク濃度のみならずアルブミン濃度の数値データを得ることが大切です。

 

またCQ-4は、特定健康診査(メタボ健診)におけるアルブミン尿・蛋白尿検査の必要性についてですが、回答では<アルブミン尿・蛋白尿陽性者は全死亡, CVD発症,腎機能低下の高リスク群>であることを説明しています。国民的な広がりを持つのがCKDであり、しかも、初期には症状に乏しいために、見落とされがちなので、特定健康診査(メタボ健診)においてアルブミン尿・蛋白尿検査を実施することは、受診者にとってCKDの早期診断のために価値のあるものだと思います。

内科2

 

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。

 

糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、たいていの糖尿病専門医よりは、糖尿病について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

Q1-7 

糖尿病の病型分類(成因)と病態(病期)の関連はどのようなのですか?

 

【要点】

成因(発症基準)と病態(病期)は明確に区別しなければなりません。各疾患について、両方を併記する必要があります。

 

糖尿病は、その成因によらず、糖尿病が発病するまでの過程で、種々の病態を経て進展するものと考えられ、また治療に寄っても病態が変化する可能性があります。

 

糖尿病はインスリン作用不足の程度によって3段階を区別することは有用です。

① インスリン治療が不要なもの

②血糖コントロールのためにインスリン注射が必要なもの

③ケトーシス予防や生命維持のためにインスリン投与が必要なもの

 

インスリン依存状態とはインスリンを投与しないと、ケトーシスを来し、生命に危険が及ぶような状態をいいます。

 

ケトーシス予防や生命維持のためのインスリン投与は不要だが、血糖コントロールのためにインスリン注射が必要なものはインスリン非依存状態にあります。したがって、インスリン治療中の患者はインスリン依存状態にあるとは限りません。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

糖尿病を理解するために、まず、糖尿病は一種類ではないということ、同じタイプの糖尿病であっても、病期といって病状の進み具合が異なれば、それに応じた対応が必要であることを弁えてください。

 

そこで、まず糖尿病を成因によって分類してみます。従来、糖尿病は基本的に1型、2型という用語で大きく分類されてきました。しかし、近年明らかになってきた遺伝子異常による糖尿病は「遺伝因子として遺伝子異常が同定された糖尿病」として、これらとは別の括りになります。ただし、一人の糖尿病患者さんの成因は必ずしも一つである場合ばかりではなく、現時点ではいずれにも分類できない「分類不能」の糖尿病もあります。

 

①1型糖尿病:主に自己免疫を基礎にした膵β細胞の破壊性病変のためにインスリンが欠乏することによって発症する糖尿病

 

ウイルス感染など何らかの誘因・環境因子が加わってHLAなどの遺伝因子に作用して起こります。他の自己免疫を合併することが多いです。

 

多くの症例では、発病初期に膵島細胞抗原に対する自己抗体(膵島関連抗体)が証明されます。

 

ただし、なかには「特発性」といって自己抗体が証明されないままインスリン依存状態に至る例があります。

 

その場合、清涼飲料水ケトーシスなどによって、一次的にインスリン依存状態に陥るもの、遺伝子異常など他の原因が特定されるものは特発性には含めません。

 

なお発症・進行の様式によって、劇症、急性、緩徐進行性に細分類されます。

 

 

② 2型糖尿病:インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)・運動不足などの生活習慣、およびその結果としての肥満が環境因子として加わりインスリン作用不足を生じて発症する糖尿病、インスリン非依存状態である糖尿病の大部分がこれに属します。

 

2型糖尿病も遺伝子との関連がありますが、大部分の症例では多因子遺伝が想定されています。単一の遺伝子によるものとは異なり、肥満が環境因子として加わることによって発病し易くなります。その理由の一つは、肥満になるとインスリン感受性が低下するからです。インスリン分泌では、特に糖負荷後の早期の分泌反応が低下します。

 

結果的にインスリン分泌低下とインスリン感受性低下の両者が発病にかかわっており、この両因子の関与の割合は症例によって異なります。

 

膵β細胞機能は、ある程度保たれており、生存のためにインスリン注射が必要になることはまれです。しかし、感染などが合併するとケトアシドーシスという病態を来すことがあります。この病態を招くメカニズムを説明します。

 

まず、糖尿病などでインスリンが不足すると、血液中のブドウ糖を代謝できなくなり、高血糖状態になります。 すると、体はその代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくり出します。 このときに副産物としてつくり出されるケトン体が血液中に急に増える(高ケトン血症)ことで、血液が酸性になり(ケトアシドーシス)、体に異常が発生するというしくみです。

 

これを糖尿病ケトアシドーシスといいます。糖尿病ケトアシドーシスは、若い人で発症しやすいといわれています。 高血糖の症状と、悪心・嘔吐・腹痛などの消化器の症状、またグルコースが尿の中に大量に排泄されることで起こる浸透圧利尿により、体液や電解質が失われることで脱水状態になります。 脱水やアシドーシスになると、低血圧や頻脈がみられることがあります。

日本循環器病学会のHPには、有益情報が満載されていますので、それを紹介します。

 

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

 

心疾患など、慢性疾患を有する人たちは以前には病状の悪化を恐れるあまり、医師でさえも運動を禁止する傾向にありました。

 

それが、最近では運動によって患者の生活の質・人生の質(QOL)が改善することが明らかにされてきました。

 

現在では、むしろ許容範囲内であれば運動・スポーツへ参加することを勧めています。

 

心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)では、学校、職域、スポーツにおける心疾患の重症度に応じた運動許容条件を示しています。

 

 

Q4

心疾患における運動強度は、どのように決定するのですか?

ちなみに私は高血圧で降圧薬を服用しています。    

 

A

高血圧患者はリスクの層別化と、高リスク例に対する適切な運動許容条件が必須となります。身体活動のリスクに影響する因子として、年齢、冠動脈疾患の存在、血行動態と心筋酸素消費量に直接関連する運動強度などが挙げられます。

 

リスクの層別化には、高血圧の重症度、標準的臓器障害及び他の冠危険因子の有無を確認します。

 

リスクの層別化は、特に冠動脈疾患の有無の確認が最重要です。そのため、運動負荷試験(自転車エルゴメータなど)は可能な限り実施します。

 

 

高血圧患者の運動実施に際しては、以下のような配慮が必要です。

 

①β-遮断薬や利尿薬は、高温・多湿環境下における体温調節機能を阻害する可能性があるので、熱中症予防対策は重要です。

 

②α-遮断薬やカルシウム拮抗薬、血管拡張薬は、運動後低血圧を誘発することがあるのでクールダウンを必ず行うように指導します。

 

 

高血圧の重症度別運動強度

血圧120~139/80~89mmHgでは、生活習慣是正を行い、運動への参加は可とします。また血圧の高値が続く場合には、心エコー検査で左室肥大の有無を確認します。左室肥大が認められた場合には薬物療法を開始し、血圧の正常化が確認されるまでは参加する運動を制限します。

 

血圧140~159/90~99mmHgで、臓器障害を伴わない場合には、競技スポーツの参加は制限しません。ただし、約3か月ごとに血圧を確認します。

 

血圧160/100mmHg以上では、臓器障害を認めなくても、高度静的スポーツへの参加は、生活習慣修正及び薬物療法により血圧がコントロールされるまで禁止します。

 

他の心血管疾患を合併する場合には、疾患の種類と重症度により参加の可否を決定します。冠動脈疾患の合併例のような高リスク患者では、虚血性心電図変化や狭心症発作を誘発する心拍数よりも10bpm以上低くなる運動強度とします。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

ガイドラインでは、スポーツあるいは運動の強度をMETs表示で示しています。

 

成人の心筋症については、大規模な臨床試験はほとんどありません。そして、運動中の心事故・突然死の機序や危険因子については不明な点が多いです。この疾患は左心室の収縮機能は正常に保たれ、死因の過半数は突然死(特に40歳以下)が占めることが問題です。突然死はスポーツ、労作中やその直後に多く発生すると報告されています。

そこで、この疾患ではリスク評価で分類し、以下の危険因子がなければ軽度リスクと評価します。

軽度リスクの場合

軽度および中等度の作業・運動は許容されますが、強い運動や競技スポーツは禁忌です

 

中等度リスクの場合

軽い運動は許容されます。また中等度の運動は自覚的強度(Borg)13以下で危険な不整脈がなければ許容されます。

 

高度リスクの場合

自覚的強度(Borg)13以下で危険な不整脈や心不全が無ければ軽い運動は条件付き許容とします。

 

肥大型心筋症における突然死の危険因子とリスク分類

中等度リスク

50歳未満の早発性突然死の家族歴、原因不明な失神、

高度な左室壁肥厚(≧30mm)、運動中の血圧上昇反応不良、

非持続性心室頻拍

 

高度リスク

心停止(心室細動)の病歴、自然発症の持続性心室頻拍

 

 

 

 

内科2

 

日本循環器病学会のHPには、有益情報が満載されていますので、それを紹介します。

 

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

 

心疾患など、慢性疾患を有する人たちは以前には病状の悪化を恐れるあまり、医師でさえも運動を禁止する傾向にありました。

 

それが、最近では運動によって患者の生活の質・人生の質(QOL)が改善することが明らかにされてきました。

 

現在では、むしろ許容範囲内であれば運動・スポーツへ参加することを勧めています。

 

心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)では、学校、職域、スポーツにおける心疾患の重症度に応じた運動許容条件を示しています。

 

ただし、心疾患患者の運動許容条件については、無作為化比較試験のような高いエビデンスがありません。

 

Q3.

心疾患における運動強度は、どのように表示するのですか?

 

A 

ガイドラインでは、スポーツあるいは運動の強度をMETs表示で示しています。これは一般的にもよく使われている表示方法です。高血圧症や心疾患を有する方には、運動許容条件判断の上で有用な分類方法として第36回べセスダ会議より提示されている方法があります。これは、動的運動あるいは静的運動が各々どの程度関与しているかによって分類しています。

 

疾患別運動許容条件

 

職業スポーツ選手など強い運動が必要な場合を除いて、基本的には最大運動能の40~60%または嫌気性代謝閾値(AT)レベルを上限とします。

 

その上で、疾患ごとの特異的制限事項を勘案して許可条件を決定します。

 

たとえば、心房細動の合併例では安静時の心拍コントロール状況ばかりでなく、運動に対する心拍応答を考慮して血行動態の面からも検討されます。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

 

心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)では、学校、職域、スポーツにおける心疾患の重症度に応じた運動許容条件を示していますが、心疾患患者の運動許容条件については高いエビデンスがありません。

 

しかし、心疾患患者の水氣道®稽古における運動許容条件を『疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)』から学ぶことはとても意義があるといえるでしょう。

 

水氣道®では、心疾患患者の重症度の判定やそのための検査についてのエビデンスを利用して、参加者のフィットネス検査(体組成・体力検査)を実施し、運動療法としての有効性を検証するとともに、その前提として安全性の高いプログラムを構築してきました。