最新の臨床医学 2月19日(火)

内科Ⅱ(循環器・腎臓・老年医学)

 

日本腎臓病学会のHPには、有益情報が満載されています。

 

そこで今回から、テーマは腎臓内科の慢性腎臓病(CKD)です。

 

「エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン2018」を紹介します。

最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。

 

 

慢性腎臓病(CKD)とは、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場合と定義されています。症状が出現することはほとんどないため、永らく見落とされてきた新たな国民病であり、多くの皆様に関わってくる病気です。蛋白尿や腎機能異常(eGFRの測定)により診断されます。

 

少し専門的で難しい部分もあるので、全てを理解する必要はありませんが、CQ2とCQ4は知っておくと良いと思います。私のコメントを読んでください。

 

 

第1章    CKDの診断と意義

 

CQ 1-1 

CKDはどのように診断されるのですか?

 

A

推奨 CKDの定義は以下の通りであり,①,②のいずれか,または両方が3カ月以上持続することで診断します。

 

 

① 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿(30 mg/ gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要.

 

②糸球体濾過率(GFR)<60 mL/分/1.73 ㎥ 

 

なおGFRは日常診療では血清Cr値,性別,年齢から日本人のGFR推算式を用いて算出します。  

 

eGFRcreat(mL/分/1.73 m2)= 194×血清Cr(mg/dL) -1.094×年齢(歳) -0.287  

女性の場合には×0.739

 

注:酵素法で測定されたCr値(少数点以下2桁表記)を用いる.18歳以上に適用します。

 

 

CQ 1-2 

CKDの重症度はどのように評価するのですか?

 

A

推奨  CKDの重症度は,原疾患(Cause),腎機能(GFR),蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria)に基づく CGA分類で評価します A 1 .

 

CQ 2 

尿蛋白1+以上の健診受診者は医療機関への受診が推奨されるか?

 

A

推奨  健診受診時に尿蛋白1+以上の受診者は-や±の受診者と比べてESKDに至るリスクのみならず, 心血管死や総死亡のリスクも高いことが示されています。医療機関での診療を受けることにより,これらのリスクを軽減できる可能性があるため受診が推奨されます。 

 

 

CQ 3 

65歳以上の健診受診者でeGFR 45未満の場合,医療機関への受診が推奨されますか?

 

A

推奨  65歳以上であってもeGFRが45より低値では,総死亡およびESKDのリスクが上昇することから,eGFR 45未満の場合には腎臓専門医・専門医療機関への受診が推奨されます。 B 1 .

 

 

CQ 4 

特定健康診査(メタボ健診)においてアルブミン尿・蛋白尿検査は推奨されるますか?

 

A

推奨  メタボ健診においてアルブミン尿・蛋白尿陽性者は全死亡, CVD発症,腎機能低下の高リスク群であるため,アルブミン尿・蛋白尿検査を行うよう推奨します .

 

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

高円寺南診療所開設の初期から、初診時には尿検査を行ってきました。採尿用の紙コップに尿を採っていただければ、簡単に蛋白尿を調べることができます。

杉並区の健診などにも基本的な検査項目に含まれています。この検査は、半定量法といって、アナログ数値ではなく、

「ー ± + ⧺・・・」

で評価します。

 

なお測定対象は尿蛋白であり、尿アルブミンではありません。アルブミンは蛋白の主要な成分の一つです。

 

CQ-2の回答では<健診受診時に尿蛋白1+以上の受診者は-や±の受診者と比べてESKDに至るリスクのみならず, 心血管死や総死亡のリスクも高いことが示されています。>と説明しているとおり、健診受診時に尿蛋白1+以上であれば、再検査することをお勧めします。

そして、その際には、より厳密な方法で、尿中のタンパク濃度のみならずアルブミン濃度の数値データを得ることが大切です。

 

またCQ-4は、特定健康診査(メタボ健診)におけるアルブミン尿・蛋白尿検査の必要性についてですが、回答では<アルブミン尿・蛋白尿陽性者は全死亡, CVD発症,腎機能低下の高リスク群>であることを説明しています。国民的な広がりを持つのがCKDであり、しかも、初期には症状に乏しいために、見落とされがちなので、特定健康診査(メタボ健診)においてアルブミン尿・蛋白尿検査を実施することは、受診者にとってCKDの早期診断のために価値のあるものだと思います。