最新の臨床医学 4月23日(火)内科Ⅱ(循環器・腎臓・老年医学)

不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。

 

抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。

 

最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。

 

 

Q4 

心房細動になるリスクについてより具体的に教えてください。

 

 

杉並国際クリニックからの回答

心房細動は複数のリスク要因が複合して発症する多因子疾患です。

 

心房細動のリスク要因は、加齢・高血圧・糖尿病・心不全・メタボリックシンドローム・家族歴等がそれぞれ独立したリスク要因です。このリスク要因は、遺伝的素因および後天的素因に分けることができます。

 

とりわけ心房細動の最も強い発症リスク因子として、年齢、弁膜症を含む心不全の有無ならびに高血圧が挙げられます。

 

心房細動は遺伝的素因の寄与が高いとされますが、遺伝的素因に関しては介入の余地はありません。そこで、後天的素因に関しては、生活習慣改善等のリスク因子の治療により心房リモデリングを抑制することで、心房細動の発症や進展を抑制できる可能性があります。心房細動に対するカテーテルアブレーション後に積極的な生活習慣改善を試みると、心房細動の再発が有意に抑制されるという報告があります。

 

以上をまとめると、心房細動は加齢を背景として、高血圧や糖尿病等のリスク因子が複合して心房の線維化が生じ、トリガー興奮が加わって発症するという経過をたどります。

 

しかし、さらに、いくつかの病態において心房細動が発症することが知られています。つまり、一定の基礎疾患があって心房細動が二次的な病気として発症することがあるということです。

 

1)開心術の周術期には心房細動の合併が多いですが、これは開心術に伴う心房の炎症が主な原因と考えられます。

 

2)僧房弁狭窄症では左心房に対する圧負荷が心房の線維化と炎症を強力に惹起することから、高率に心房細動を合併します。

 

3)甲状腺機能亢進症に心房細動の合併が多いことも知られています。

 

したがって、明確な基礎疾患がある場合には、心房細動の治療に加えて、基礎疾患の治療も行う必要があります。

 

また、心房細動の中でも、発作性の心房細動には、主として夜間等の副交感神経優位なときに発作が生じるタイプや運動中等の交感神経活動優位なときに発作が生じるタイプがあります。これらは、互いに逆のメカニズムで発作を生じさせているので、いずれのタイプかを吟味しておくことが必要です。