認定内科医、認定痛風医
アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医
飯嶋正広
見落とされがちな微量栄養欠乏症<亜鉛>No.6
今回は、亜鉛の栄養管理の実際について、診断基準から、治療、管理にいたる一連の流れについてまとめ、併せて、杉並国際クリニックでの実践例についてご紹介してみたいと思います。
<亜鉛欠乏症の治療の実際>
亜鉛欠乏症の症状があり,血清亜鉛値が亜鉛欠乏または潜在性亜鉛欠乏であれば,亜鉛を投与して,症状の改善を確認することが推奨される.
1. 下記の症状/検査所見のうち1項目以上を満たす
1) 臨床症状・所見:
皮膚炎,口内炎,脱毛症,褥瘡(難治性),食欲低下,発育障害(小児で体重増加 不良,低身長),性腺機能不全,易感染性,味覚障害,貧血,不妊症
2) 検査所見:
血清アルカリホスファターゼ(ALP)低値
2. 上記症状の原因となる他の疾患が否定される
3. 血清亜鉛値
3-1:60µg/dL未満:亜鉛欠乏症
3-2:60 ~ 80µg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏
血清亜鉛は,早朝空腹時に測定することが望ましい
3-3:80~130µg/dL:亜鉛充足(日本臨床栄養学会基準)
3-4:250µg/dL以上:亜鉛過剰(亜鉛摂取の減量を開始する)
4. 亜鉛を補充することにより症状が改善する
Definite(確定診断):
・上記項目の1.2.3-1 ~ 4をすべて満たす場合を亜鉛欠乏症と診断する.
・上記項目の1.2.3-2 ~ 4をすべて満たす場合を潜在性亜鉛欠乏症と診断する.
Probable(推定):
・亜鉛補充前に1.2.3.をみたすものは、亜鉛補充の適応になる.
<亜鉛欠乏の治療指針 >
亜鉛として
・成人50 ~ 100mg/日,
・小児1 ~ 3mg/kg/日
または体重20kg未満で25mg/日,
体重20kg 以上で50mg/日を分2で食後に経口投与します.
ただし、症状や血清亜鉛値を参考に投与量を増減します.
慢性肝疾患,糖尿病,慢性炎症性腸疾患,腎不全では、しばしば血清亜鉛値が低値になります。
血清亜鉛値が低い場合,亜鉛投与により基礎疾患の所見・症状が改善することがあります.
したがって,これら疾患では,亜鉛欠乏症状が認められなくても,亜鉛補充を考慮してもよいと考えられます.ただし、杉並国際クリニックでは、亜鉛欠乏症に至っていない、潜在性亜鉛欠乏症に対しては、経口亜鉛剤投与開始に先立って、食事療法を指導しています。
亜鉛を多く含む食品には魚介類、肉類、藻類、野菜類、豆類、種実類があります。特にかき(養殖/生)には100gあたり14.5㎎と亜鉛が多く含まれるほか、魚介類や肉類に亜鉛が多く含まれています。
・豚レバー(生100g)あたり6.9㎎
・うなぎの蒲焼(1串100g)あたり2.7㎎
<亜鉛投与による有害事象>
・消化器症状(嘔気,腹痛)
・血清膵酵素(アミラーゼ,リパーゼ)上昇
・銅欠乏による貧血・白血球減少
・鉄欠乏性貧血
が報告されています。
血清膵酵素上昇は特に問題がなく、経過観察でよいとされます。
亜鉛投与中は、定期的(数か月に1回程度)に血清亜鉛、銅、鉄を測定します。
血清亜鉛値が250µg/dL以上になれば、減量します。
また、銅欠乏や鉄欠乏が見られた場合は、亜鉛投与量の減量や中止、または銅や鉄の補充を行います。
しかし、本指針を広く周知してもらうために、今回,学会承認の指針として改定されました。従来から亜鉛製剤としてポラプレジンク(プロマックⓇ)と酢酸亜鉛(ノベルジンⓇ)が保険診療で使用可能であったが、ポラプレジンクは胃潰瘍、酢酸亜鉛はWilson病のみが保険適応でした。
2017年3月に酢酸亜鉛製剤(ノベルジンⓇ)の適応拡大が承認され、「低亜鉛血症」の疾患名で処方可能になりました。
亜鉛薬剤を適切に処方するためにも「亜鉛欠乏症の診療指針」は必要であり、その点においても本指針発行は非常にタイムリーでした。
以上により、日常外来診療において、適正な血清亜鉛のために、どのような検査をしておけばよいかが、明らかになります。下記を参考にしてください。
杉並国際クリニックにおける低亜鉛血症の標準検査項目
1)診断のための検査項目(2項目)
血清亜鉛、血清アルカリホファターゼ(ALP)
2)亜鉛投与による有害反応の早期発見のための必須検査項目(6項目)
血清銅、血清鉄、膵アミラーゼ、膵リパーゼ、血中ヘモグロビン、白血球数
3)基礎疾患のスクリーニングための参考検査項目(6項目)
肝機能(AST,ALT)、腎機能(血清クレアチニン、推定糸球体濾過率)、
耐糖能(血糖、HbA1c)
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