遷延する症状で苦しむ方のために

 

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認定内科医、認定痛風医

アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医

 

飯嶋正広

 

見落とされがちな微量栄養欠乏症<亜鉛>No.5

 

<亜鉛欠乏症の診断の実際>

 

亜鉛欠乏症を疑うべき症状は多彩です。

 

以下は、私が系統的に分類したものです。

 

1) 皮膚・粘膜症状:皮膚炎,口内炎,脱毛症,褥瘡(難治性のとこずれ)

 

2) 免疫機能障害:易感染性(感染症に罹り易く、しかも治りにくい)

 

3) 栄養障害:食欲低下,発育障害(小児で体重増加 不良,低身長),貧血

 

4) 感覚障害:味覚障害

 

5) 生殖系障害:性腺機能不全,不妊症

 

また『亜鉛欠乏症の診療指針2018』に示された検査所見として「血清アルカリフォスファターゼ(ALP)低値」が挙げられています。

人間ドック等でも採血項目に入っていますが、施設間でばらつきはあるものの基準値は概ね100~320U/l近辺でしょう。この範囲を下回らなくても、関連を疑わせる諸症状があり、かつALPが200U/l未満程度ならば積極的に血清亜鉛値を測定した方がよい印象があります。

 

しかしながら、多くの亜鉛欠乏症例では、上記のような症状が顕れません。

 

慢性肝疾患,糖尿病,慢性炎症性腸疾患,腎不全では,しばしば血清亜鉛値が低値であることが報告されています。ですから、私は、これら4つの疾患を持つ方には、積極的に血清亜鉛濃度を測定することにしています。そして、実際に血清亜鉛値を測定してみると低値であることが多いです。

 

 

Q1.

亜鉛不足はどうやって調べればよいのでしょうか? 

 

A1. 

亜鉛不足は、血液検査で調べることができます。

健康な人の血清亜鉛(血液中の亜鉛)の基準値は、
日本臨床栄養学会では80~130μg/dLとしています。

この血清亜鉛値が低下し、体内の亜鉛が不足した状態を「低亜鉛血症」と言います。

 

 

Q2.

亜鉛不足の重症度はどのように評価すればよいのでしょうか? 

 

A2. 

血清亜鉛値のデータを確認してみましょう。
   

血清亜鉛値が80µg/dL未満であれば、低亜鉛血症です。

ただし、これにも重症度があります。

軽度のものが、潜在性亜鉛欠乏(亜鉛不足)で、

血清亜鉛は60 ~ 80µg/dL未満です。

 

さらに血清亜鉛が低下したものを、亜鉛欠乏症といい、

血清亜鉛が60µg/dL未満となった状態です。

 

血清亜鉛は,可能であれば早朝空腹時に測定することが望ましいです。