水氣道実践の五原理・・・統合性の原理(破論)
(心身統合・心技体の原則)
「心・技・体」という言葉は、もともと明治時代の柔道家の言葉が語源だといわれます。 しかし、実際にその使われ方となると、本質から離れて歪曲されていると感じることがあります。
「心・技・体」と表立って発言している人の中には、その実は根性論による「強いられた努力」による鍛錬法を強行するための大義名分にしている方がいます。日本のスポーツ界でも精神的にも肉体的にも厳しく追い込み、それに耐えることで力をつけていこうという「根性を叩きこむ」というやスパルタ主義でのしごきが長年もてはやされてきました。猛烈なしごきと絶対的な上下関係で運営されているチームは、いまだに少なくなさそうです。
日本で「精神論」や「根性論」が暴走し始めたのは、無謀で不利な戦いに突入することが回避できなくなり、さらに勝ち目のない戦を終わらせることができない空気の中で起こりました。
絶対的に不足している物資や情報(インテリジェンス)を前提とする作戦計画の遂行のために、体(体格)にも技(武器)にも劣った日本人が唯一自負できる心(武士道や大和魂)を軸として最大限に鍛え上げる精神論を奨励する気運が国民の美徳としてもてはやされました。
その結果、純粋で従順な精神を持つ、大勢の有為な若者の貴重な命が犠牲になってしまいました。
日本は戦争に敗れても、その敗因を理論的に徹底分析することなく、工夫や改良を加える余裕も見いだせないまま、ひたすらに、がむしゃらに戦後七十有余年を経てきました。
戦後復興期を経て命がけの精神状態と硬く結びついた精神論は目覚ましい経済復興を遂げる原動力として生き残ってきました。国民全体の栄養状態は改善して体格も向上(機能的な向上を伴わない体)し、学問や科学技術も大いに進歩(人間性の向上に結び付かない技)したため、国民文化については一向に進歩しないまま、一時は世界の経済戦争にまで優勝(「ジャパン・アズ・No1」)したかに見えました。
こうした表面的な成功体験を通して確信的に認識されることになった「精神論」は、日本においては、精神文化の一端として色濃く残っています。したがって、敗戦と共に吟味されるべきかつての精神論のままの形で激変した戦後社会を必死で生き抜いてきたということができるでしょう。
その結果、私たちには何が残されたでしょうか。そして何が失われつつあるのでしょうか。
今からであっても、一人一人がきちんと丹念に吟味していくことが望まれます。しかし、現代社会を生きる私たちの感性は、私たちを取り巻く目まぐるしい環境の劇的変化や、矢継ぎ早に届けられる表層的な、場合によっては操作された膨大な情報によって、混乱に陥っています。
私たちにもできることは、まず、私たちが混沌の世界に生きることを余儀なくされているという現実に気づけるようになることです。そして、私たちにとって真に価値のある財産は何かを、信頼関係によって構築された共同体の中での共通体験や基礎的訓練、そしてさらなる発展的修錬を通して全人的に知り、身に着けることです。
そこで、私たちは過去からどんな財産を遺贈されていて、私たちがそれをどのようにそれらを継承・発展させ、さらに、どのように次世代に繋げていくことが大切なのかを、各人が、そして家族やコミュニティ単位で真摯に取り組むことが不可欠だと、私は考えています。
水氣道は団体で実践する自己啓発活動であり、自己鍛錬や護身術のみならず互助的共同体形成や集団防災訓練に通じるものです。そのため「軍隊式」も「気合」も「根性」は、これらを単純に否定するのではなく、むしろ、それらの本質的存在価値を引き出すことが肝要です。
たとえば、水氣道は、段級制を採用しています。これは、たとえば救世軍(Salvation Army:救世陸軍=陸援隊)が陸軍の階級制をとっているのように水氣道は、海軍ならぬ水軍としての階級制を採用しています。これっは日本武道である剣道・柔道とは本質的に異なり、上級者が下級者を教え導き支援します。
また、それが不得手であるならば、さらに進級することはできない仕組みになっています。そのかわり、下級者に奉仕をする実績に応じて、新たな技が授けられる仕組みになっています。
そのために水氣道では、いつでもイキイキと工夫を凝らし、どこでものびのびと改良していくことに心がけ、稽古体系の中に採り入れています。そして団体稽古の推奨と同時に競技性の否定という水氣道固有の稽古方針に基く実践によって、正しい「心技体」の理解に基づく指導方法が前提としての正当性や妥当性が担保されることになります。
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