最新の臨床医学 5月9日(木)リウマチ・膠原病・運動器疾患

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。

 

とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。

しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート②>

 

4月14日(日)

10:40~11:40am

 

ACL3:リウマチ・膠原病医に知って欲しい妊娠前、妊娠中、授乳期における産婦人科的知識と診療

    

演者:斎藤 滋 先生(富山大学産科婦人科)

 

リウマチや膠原病は女性に発病することが多い疾患である。

 

40歳以降になると妊娠しづらくなり、体外受精でも出生率は5%、流産率も50%を超えるようになる。

 

疾患の活動性が高い状態で妊娠すると、流産、死産、早産、妊娠高血圧症候群、子宮内退治発育不全等の合併症を引き起こすことになる。関節リウマチの女性の不妊率は31.5%と高率である。

 

リウマチは寛解に達したら妊娠可能であり、妊娠率も向上する。

 

妊娠時には禁忌となる薬剤から許容できる薬剤に切り替えることが必要

しかし、計画妊娠する前に薬剤変更を行うべきである。

 

メトトレキサートは女性でも男性でも妊娠計画の少なくとも3か月前には中止することが推奨される。なお精子形成期間は90日である。

しかし、薬剤添付書に妊娠時や授乳時に禁忌と記載されている薬剤がほとんどであるので問題となる。

そのなかでも、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリンの妊娠中禁忌が、有益性投与に変更になった。授乳中の禁忌はメトトレキサートのみである。抗TNF抗体製剤は母乳保育を中止する必要がないことが記載されるようになった。

 

 

<まとめ>

少子化は日本社会の抱える大きな課題の一つですが、妊娠・出産に対する過剰な制限が、こうした社会現象に拍車をかけているのであれば、医療者の責めは決して小さくはありません。

 

高円寺南診療所時代の30年間に、リウマチの診療は劇的な大変革を遂げましたが、妊娠希望のリウマチ患者さんには、東京女子医大をはじめとする高度専門医療機関を紹介せざるを得ませんでした。

 

幸い、新たな情報と指針に基づいくことによって、妊娠可能な女性のリウマチ治療薬の選択と支援は、杉並国際クリニックにおいても充分に対応することができるようになってきたことは、とてもありがたいことだと感じております。