金曜シリーズ < よくある問い合わせ ⑭ >


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私は、年明け早々に、企業の衛生委員会でのテーマとして慢性肝臓病、「奈良宣言2023」、ALT(GPT)値という3つのキーワードについて説明しなければならない局面に遭遇しました。ただし、限られた時間での説明は不可能であるため、このサイトを閲覧していただけるようにアナウンスしました。


早速、実際の質問に対して、まずはムッシュGPTに回答してもらいました。


質問者:(L社衛生委員会委員)
私は会社の健康診断で肝機能障害を指摘されました。その根拠はALTの数値が50だからだそうです。私は全く飲酒しないので納得がいきません。何が原因となっているのか可能性についておしえてください。



ChatGPT
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の値が上昇する原因はさまざまで、飲酒だけがその一因ではありません。他にも様々な要因が影響を与える可能性があります。以下は、ALTの上昇の可能性があるいくつかの原因です:


1. 脂肪肝: 脂肪肝は、肝臓に脂肪が異常に蓄積する状態です。これは飲酒以外の要因によって引き起こされることがあります。肥満、高脂血症、糖尿病などが脂肪肝の原因となります。


2. 薬物やサプリメントの使用: 一部の薬物やサプリメントは肝機能に影響を与えることがあります。特に、一部の抗生物質、抗炎症薬、抗高血圧薬などが肝酵素の上昇に関与することがあります。


3. ウイルス感染: 肝炎ウイルス(A、B、Cなど)に感染すると、肝臓の炎症が引き起こり、肝酵素の数値が上昇する可能性があります。


4. ストレスや炎症: 長期間のストレスや慢性的な炎症も肝臓に影響を与え、肝酵素の上昇を引き起こす可能性があります。


5. 他の肝疾患: 肝硬変や肝臓の腫瘍など、他の肝臓関連の疾患も肝酵素の上昇を引き起こす可能性があります。


これらは一般的な原因であり、詳細な診断は医師の診察と適切な検査が必要です。ALTの単独の数値だけでは特定の原因を結論付けることは難しいため、医師に詳細な検査を受け、病歴を伝えることが重要です。

 

ドクター飯嶋のコメント:
ALTというのは肝臓の酵素、さらに言えば、肝臓という臓器を構成する基本単位である肝細胞に含まれる酵素です。

 

ですから、肝細胞を形作る細胞膜が何らかの原因で損傷を受けると肝細胞のALTが血液中に放出されることになります。

 

私が医学生の頃は、ALTというよりGPTと表記されていたので、この話題についてChatGPTと対話するのは、偶然のごろ合わせのようですが、因果のようなものを感じます。


ムッシュGPTが回答してくれたように、肝機能障害の原因は飲酒だけではなく様々な原因によります。まずは、メタボリック症候群(肥満、高脂血症、糖尿病など)と脂肪肝によるALT上昇との関連が大切なポイントです。


次に、健康増進や病気の治療目的の、サプリメントや薬剤による、広い意味での<薬物性肝障害>も少なくないことを強調しておきたいと思います。


ちなみに<薬物性肝障害>という用語は、<薬剤性肝障害>という用語と区別して用いられるようになっています。サプリメントは<薬剤>ではありませんが、<薬物>として身体に作用することがあるので注意していただきたいポイントの一つです。

 

それから、見落とされがちなのは、心身医学的な因子です。私は心療内科の専門医・指導医であるため常識になっていますが、一般の内科医は肝臓専門医を含めて、ストレスによる肝機能障害を軽視しているのではないか、と感じることがあります。

とくに、企業の産業医としては、ストレスチェックによる高ストレス者の面談時においては、喫煙や飲酒習慣に加えて健診データを提出していただきALT値を確認するようにしています。


「酒量が多いのでサプリメントを開始しました」とか「ストレス解消のため晩酌は欠かせません」とか、心身の健康のために役立つと考えての行動が、皮肉にも有害な行動選択であった、ということに気付いていただき、適切な対処行動がとれるようにアドヴァイスすることもあります。

 

次回3月15日(金)は、サプリメント摂取と肝機能について取り上げます。