金曜シリーズ < よくある問い合わせ ⑬ >

 

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今年初めの1月10日号の特集は、<慢性肝臓病の克服を目指して>
という私にとって興味深いタイトルでした。


なぜ、興味深いかというと、外来診療の際だけでなく、顧問を務めている企業の健康講話等においても、しばしば話題に取り上げられ、質問をお受けすることが多いからなのです。

 

ただし、この領域は、近年、用語や概念が大きく転換したため、混乱が生じやすいので医師としては、説明の際に慎重を期さなければならないテーマでもあります。

 

私たちの五臓六腑のなかでも、寿命をささえる重要な臓器として、肝臓と腎臓は昔から経験的に注目されてきました。極めて重要なことを「肝心要(かんじんかなめ)」と表現することも、その名残りではないでしょうか?

 

その一方の腎臓について<慢性腎臓病>についての認知は、少なくとも内科医の間では確かなものになりつつありますが、意外にも<慢性肝臓病>という概念は新しい内容が含まれています。しかし、肝臓の健康管理のお話をする際には、<慢性肝臓病>について避けて通ることはできません。

 

そこで、今回は<慢性肝臓病>について、一般的にどのように理解されてきたか、という観点から、ムッシュGPTに回答して貰いました。

 

ただし、注意すべきなのは、ムッシュGPTは<慢性肝臓病>として回答しているとしても、実際には<慢性的な経過をたどる肝臓の代表的な病気>についてまとめてくれるはずなので、それを前提としてお読みいただきたいと思います。

 

 

慢性肝臓病とはどのような病気なのでしょうか?


ChatGPT
慢性肝臓病は、肝臓が炎症や損傷を長期間にわたり経験する状態を指します。通常、肝臓は体内の多くの重要な機能を担っており、代謝物質の処理、毒素の除去、タンパク質の合成、免疫機能の維持などが含まれます。


慢性肝臓病の主な原因は、以下のような要因によるものです:


1. 慢性ウイルス感染:

B型肝炎ウイルス (HBV) やC型肝炎ウイルス (HCV) の慢性感染が肝臓の損傷を引き起こすことがあります。


2. アルコールの慢性摂取:

長期間にわたり過剰なアルコール摂取は、肝臓に損傷を与え、慢性肝臓病を引き起こす可能性があります。


3. 脂肪肝症:

過剰な脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝症は、アルコールの摂取がなくても、糖尿病や肥満などに関連して発生することがあります。


4. 自己免疫疾患:

免疫系が誤って肝臓を攻撃する自己免疫性の疾患も慢性肝臓病の原因となります。
慢性肝臓病はしばしば無症状で進行し、初期には気付かれないことがあります。しかし、症状が現れるとしても、疲労感、食欲不振、体重減少、腹部の不快感などが含まれることがあります。重篤な場合、肝硬変や肝癌などの合併症が発生する可能性があります。


診断や治療は、慢性肝臓病の原因や進行度に基づいて医師が行います。早期の発見と管理が重要であり、特に原因に対する治療や生活スタイルの変更が含まれることがあります。

 

 

ドクター飯嶋のコメント:
私が予測した回答より、一歩前進した理解をムッシュGPTが前提としていることが確認できました。


ここでムッシュGPTは「慢性肝臓病」を「肝臓が炎症や損傷を長期間にわたり経験する状態」であると前置きしていますが、細部はともかく基本的には、このような理解から説明を出発しても問題はないと考えます。

 

ただし、わが国の日本肝臓学会は2023年6月に「奈良宣言2023」を発表し、「慢性肝臓病(CLD: Chronic Liver Disease)」をより明確に定義しました。


これは「肝炎ウイルスや脂肪肝、アルコール、免疫異常等さまざまな原因により生じる肝臓の慢性炎症状態」とすることに加えて、一般の住民健診や職場健診の血液検査等で広く測定されているALT(GPT)値に注目し、これが30U/Iを超える場合にCLD診断の糸口とするように推奨するようになったことは重要な変革なのです。

 

この「奈良宣言2023」というキーワードは、少なくとも内科医にとって、今年はさらに注目され、普及していくことになることが予想されますが、この2023という数字は、ムッシュGPTの判断材料の範疇外の情報であることを意味します。

 

この件に関しては、OpenAIであるChatGPTのシステムに関する話題であるため、月曜日のシリーズである3月11日のテーマとして検討することにします。