聖楽院主宰 テノール
飯嶋正広
今回は、音大での第4回目(5月3日)の報告です。
第4回レッスン
祝日(憲法記念日)であるにもかかわらず、武蔵野音大のキャンパスは平日と少しも変わることがありませんでした。学食のインテルメッツォも、学内の書店も通常営業であり、学生の様子も普段通りでした。
さて、指定のレッスン室に向かうと、定時になっても来訪者の気配がありました。大柄な若者が帰り支度をしていました。
レッスンはすでに4回目を迎え、王さんが休みのため、久しぶりに岸本先生と一対一の個人レッスンになりました。先程の若者は身長190㎝を越す中国出身の偉丈夫で、博士課程の学生、しかも、ロシア声楽の勉強のため、新たに岸本先生のレッスンを受けることになったとのことでした。
本日のレッスンは、通例通り、発声練習から始まりましたが、岸本先生の発生訓練は、その後に続く楽曲の歌唱レッスンのためにとても有効に作用していることが次第に感じられてきました。
以下がレッスンの流れです。
#1.歌曲「Cредь шумного бала.(騒がしい舞踏会の中で...)」の歌唱
前回、活舌が悪かったところを修正して歌唱しました。
#2.歌曲「Cеренада дон-жуана(ドン・ファンのセレナード)」の歌詞
レッスンでは初めての歌唱でした。テンポの速い曲で、歌曲として大曲でもあり、難しい曲であると認識していました。幸い金曜日夜のめいた音楽院でピアニストの森嶋さんに音取りをしていただいたお蔭で、予め、曲の流れの概要はつかんでおくことができたのは良かったです。
この曲は、岸本先生がチャイコフスキーコンクールの本選で歌った記念すべき曲であることを教えていただき、とても感銘を受けました。
この曲についての指導を受けた後、今後のレッスン曲について相談をさせていただいたところ、チャイコフスキーからラフマニノフへ移行することのご提案をいただきました。これは自然な流れに沿うものだそうです。
先週、すでに岸本先生が編集されたラフマニノフの楽譜は入手していたため、その歌曲集の中から候補曲を選んでいただくことになりました。
#3.歌劇「エフゲニー・オネーギン」第2幕から、「レンスキーのアリア(青春は遠く過ぎ去り)」
前回のご指導で、この曲は歌曲のようにレガートに歌うように心がけました。いつもより、余裕をもって歌うことができたように思います。レガートに歌うためには、歌詞を滑らかに朗誦できるようになることが前提です。
ロシア語の発音とキリル文字による言語認識に馴染みの少ない多くの日本人声楽家にとって、欧州の他の言語以上に、この最初の段階の仕込みに力を注ぐ必要があるように思います。ですから、先を見越した早目の準備が必要になります。そこで、夏休みの期間中の勉強の仕方について岸本先生に伺ったところ、意外なご提案をいただきました。
8月22日(月)に予定されている岸本力門下生による定例コンサートへの参加許可です。武蔵野音大の別科を終了しても、二期会会員の皆様方たちと同じステージを踏むことは叶わないであろうと予測していたところ、想定外に早い段階でその機会に恵まれることになったのです。
そこで、レッスン時間は満了であったのですが、王さんが欠席のため、彼のレッスン時間の分を私のために提供してくださいました。
#4.歌曲「отчего?...(何故?)」の歌唱
この曲は、最初に教えていただいたロシア歌曲であり、武蔵野音大入学前からレッスンを受けていたお蔭で、少しずつ私の心身に浸透しつつあるのを感じます。
レッスンの後、学内の書店に立ち寄り、新たにラフマニノフ歌曲集の第一巻目が出ていたのを発見したため、チャイコフスキー歌曲集とともに購入しました。
チャイコフスキー歌曲集は岸本先生の師匠であるソプラノ小野光子(おのてるこ)先生の編集によるものです。
参考:小野光子(1927-2017)
鎌倉で生まれ。1949年東京芸術大学卒業。ソプラノ歌手。 父は築地小劇場の左翼演劇運動に携わった小野宮吉、母は東京音楽学校を卒業し当時国際的活躍も期待されたソプラノ関鑑子、戦後「うたごえ運動」の指導者として著名。
東西の冷戦時代に、母がレーニン平和賞を受賞したことも与って、モスクワ音楽院に留学、以来ロシヤ歌曲との長いつきあいが始まった。留学時代を終え、数年後さらにソ連国内を隈無くといっていいほど広範囲に180回の演奏旅行でまわっている。こうした行動を支えたのは、持ち前の強靭かつ柔軟な意志と行動力である。
この記事を書き終えた直後に、岸本先生からのメッセージが届きました。
ラフマニノフの曲ですが、私の「ラフマニノフ歌曲選集2」のp21の「リラの花」、p62「私は悲しい恋をした」、p76「夢」、を勉強して下さると楽しいです。岸本力
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