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認定内科医、認定痛風医

アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医

 

飯嶋正広

 

 

腎疾患の治療について(No2)

 

残念なことに腎臓病向けの単独の特効薬はありません!

 

第119回日本内科学会講演会(2022年)の教育講演5.慢性腎臓病治療の新たな展開(菅野義彦:東京医大)によれば

「慢性腎臓病の概念・・早期発見早期治療介入が可能になった。・・一つの治療法で解決できるわけではないが、効果のそれほど強くないいくつかの治療法を総合的に組み合わせて行うことで、腎機能を一定期間維持することは可能になりつつある。また腎保護は腎臓のみならず関連する他の臓器の機能保持にもつながると考えられ・・ようやく他領域での治療レベルに近づいてきたと考えている。」と述べられている通りです。


それでも、具体的な治療の手立ては、すでにあります。

それは、

1)弱った腎臓を助ける他の臓器の支援を受けやすくすること、
2)腎臓病に合併する病気の手当てをすること、
3)腎臓に負担をかける薬剤を減量したり、見直したりすること、です。

 

モデルとなるのは、慢性腎臓病(CKD)における治療原則です。

 

まず、慢性腎臓病の治療目標としては、末期腎不全(ESKD)心血管疾患(CVD)を抑制することです。漢方、とくに中医学の考え方では「心腎不交」に相当しますが、これを未然に防ぐことに通じます。


具体的に必要な治療は、❶集学的治療(慢性腎臓病の原因となる病態の是正)、❷生活習慣改善、❸食事療法、❹高血圧治療、❺脂質異常症治療、❻糖尿病-耐糖能異常治療、❼貧血治療、❽骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)治療、など多岐に及びます。

 

腎不全が進行すると、血清カリウムや血清リンが増加し、代謝性アシドーシスや尿毒症をもたらし、二次性副甲状腺機能亢進症、貧血(腎性貧血)が進行していきます。


脂質異常症は、慢性腎臓病(CKD)における心血管疾患(CVC)の発症を高めるため、慢性腎臓病においては脂質異常症の治療は必須です。

 

糖尿病-耐糖能異常について、まず糖尿病は糖尿病性腎症の原因であり、慢性腎臓病の悪化因子でもあります。また糖尿病はそれ自体で心血管病の強力な危険因子です。また、腎機能が低下すると低血糖の危険も増加するため特に留意して血糖コントロールを図る必要があります。

 

骨・ミネラル代謝異常は、骨病変だけではなく、血管の石灰化なども促進するので、生命予後を悪化させる、つまり寿命を縮めてしまう全身性疾患です。私のクリニックでは、半年に1回を目安にして、頸動脈超音波検査で経過を確認をしています。

 

血液透析中の方であれば、高リン血症である場合が多いため、食事療法や高リン血症治療薬で血清リンをコントロールしてから活性型ビタミンD₃を用います。

 

当クリニックでは、高リン血症が見られない25OHビタミンD欠乏症や骨量低下の場合でも、活性型ビタミンD₃の投与は低用量から開始するようにしています。