漢方治療に関しては一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へのHPを検索してみました。
ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。
ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。
そのため、以下のQ&Aを採り上げ、解説を加えてきました。
今回からは、三和生薬株式会社のHP「よくあるご質問」をご紹介いたします。
高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてきました。
Q
漢方薬でよく聞く「証」とは何ですか?
A
「証(しょう)」とは漢方独自の用語ですが、病人が示す様々な状態(=特徴)のことを言います。また、その人に備わっているもともとの体質や体力などを指す場合、あるいは抵抗力を指す場合もあります。
いずれにしても漢方では薬(処方)を選択する場合の重要な目標となるもので、4つの大きな診断法(望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、問診(もんしん)、切診(せっしん))があり、更に「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「表裏(ひょうり)」「寒熱(かんねつ)」「気血水(きけつすい)」などの独特の概念で証(しょう)を決定するので、西洋医学のような病名がなくても処方が選べます。
また、同じ病名でも違う処方になることもあります。
<高円寺南診療所からのメッセージ>
実は、30年間におよぶ診療でこのような質問を受けることはありませんでした。そのかわり、<この漢方薬は何の薬ですか>とか<この漢方薬はどんな病気に効くのですか>という質問はたくさん受けてきました。
そんな質問に対しての答えは、それはあなたの「証」に合っている漢方薬だと思われるからです、とこたえて納得していただけたらどんなに便利でしょうか。
西洋医学になれている多くの皆様にとって、薬は症状に対応するものであるとか、病名に対応するものである、という発想を持たれることは当然のことでしょう。しかし、漢方は別の発想をします。
解説では、「西洋医学のような病名がなくても処方が選べます。」とありますが、いきなりそのような発言をしても、多くの患者さんは当惑してしまうことでしょう。
そのために「証」を説明する必要があり、Q&A形式にまとめたのではないかと推測します。
患者さんの「証」に基づく治療方法を、<髄証療治(ずいしょうりょうち)>といいます。
「証」を別の言葉で言い換えると、その人の医学的特性です。治療反応性であるともいえます。
解説では、精神的側面について言及していないのが物足りなく思われます。実際には、「証」とはその人本来の体質ばかりではなく気質、さらには体調ばかりではなく気分にも関連しています。
ですから、その人の「証」に叶った処方薬の素晴らしさは、その人に備わっているもともとの体質を改善し、体力や抵抗力を高めるばかりでなく、人柄が良くなり、気分が安定してくることを経験できるからです。
「証」の見立てのための目安となる指標として、「陰陽」「虚実」「表裏」「寒熱」「気血水」が紹介されていますが、実はこれらは、漢方薬だけでなく鍼灸治療方針の決定にも用いられています。
なお水氣道の稽古プログラムにも積極的に取り入れています。たとえば、水氣道の動作は、膝関節や肘関節などの中間関節が伸展(実)させたり屈曲(虚)させたりを交互に行う動作があります。
冷えてきたら(寒)温まる(熱)動作に転換します。腹側(裏)の体操や運動と背側(表)の体操や運動も交互に行うことによって、全身のあるいは全心身の調整をはかることを目標としています。
また、「氣・血・水」の概念をもとに、理氣航法、調血航法、活水航法などの鍛錬技法を水氣道は生み出し、さらに発展を遂げていることは、水氣道の参加者の方は、すでに良くご存じのことでしょう。
回答に述べられているように、漢方は西洋医学とは異なる視点から処方されるため、西洋医学では異なる病名であっても、証が近ければ、同じ処方がなされることがあります。これを異病同治といいます。逆に、西洋医学では同じ病名であっても、異なる薬を処方されることがあります。これを同病異治といいます。
大切なことは、西洋医学の方法と漢方医学の方法とは異なる次元ではありますが、両方の医学の本質を弁えて、上手に併用することです。それによって、高齢社会でありストレス社会でもある現代の医療問題の大部分を効率的に解決する手立てとなり得るので、こうした統合医学の普及が急務だと思われます。
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