最新の臨床医学:4月8日<貧血(1)鉄欠乏性貧血…女性を診たら貧血を忘れるな!>

日本人の貧血の頻度は、成人男性7~10%、成人女性20%弱です。

 

男性は70歳以上、女性は40歳代で最も多いです。

 

貧血の原因として最も重要なのは鉄欠乏です。

 

鉄欠乏の目安は、血清フェリチン値が15ng/mL未満です。

 

鉄欠乏の男性は4%、女性で約20%です。

 

もっとも、これらのデータは一般人口における割合ですから、

 

病院を受診する方の割合はグーンと高くなるわけです。

 

このように、女性を診たら貧血を忘れてはならないのが、少なくとも内科医の心得です。

 

とくに40歳代の女性では、鉄欠乏が40%台にも登り、月経のある女性の半数が鉄欠乏であることは、余り意識されていないようです。

 

鉄欠乏性貧血に関しては日本鉄バイオサイエンス学会が作成した「鉄剤の適正使用による貧血治療指針改定第3版」が公表されています。

 

 

<鉄欠乏性貧血について高円寺南診療所で説明していること>

 

①男性および閉経後の女性では消化管出血が原因であることが多いです。

 

②悪性腫瘍が原因であることもあるので、消化管およびその付属臓器(肝・胆・膵)のスクリーニング検査をお勧めします。便潜血検査、上部消化管造影検査、腹部超音波検査

 

③治療薬として経口鉄剤を用いることがありますが、その副作用として、悪心、便秘、腹部膨満、腹痛、下痢、嘔吐などがあります。

 

④経口鉄剤には向き不向きがあるので、必要に応じて内服薬の変更や服用時間の変更(朝から就寝前など)を工夫する必要があります。

 

⑤内服薬で改善しない場合は、鉄剤の静脈内投与が必要となる場合があります。

 

⑥出血による鉄欠乏性貧血の場合、出血が持続していなければ、貧血は2か月以内に改善します。

 

⑦貧血は表面的には改善されても、鉄の貯蔵をはかるために、さらに3~6か月間鉄剤を内服する必要があります。

 

➇貧血改善後にも再発することが多いです。

 

 

通常であれば3か月に1回、最低でも半年に1回は血液検査を行う必要があります。

 

なお鉄分の多い食事については、臨床栄養学のテキストをご参考になってください。

 

1)  食物と栄養学基礎シリーズ10 臨床栄養学

吉田勉監修、飯嶋正広・今本美幸 編著 2013 学文社

(9疾患・病態別栄養ケア・マネジメント/9・10血液系の疾患・病態/

 9・10.1 貧血 192頁)定価(本体3000円+税)

 

2)わかりやすい臨床栄養学 第5版

吉田勉監修、

飯嶋正広、井上久美子、今井克己、近江雅代、恩田理恵、小林三智子 共著

三共出版 2017年3月10日 第5版

(各論編 11血液系疾患/1貧血 鉄欠乏性貧血 179頁)

定価(本体2900円+税)