内分泌・代謝・栄養の病気
<続発性骨粗しょう症>
骨粗しょう症とは、骨強度が低下し、骨折の危険性が高まる骨格疾患です。
骨強度は骨密度(約70%)と骨質(約30%)により規定されます。
しかし、骨質は、臨床的に測定することは困難なため、骨密度の計測が重要になります。
骨折のリスクファクターには、転倒のリスクとなる運動機能低下、筋力低下などロコモティブ症候群との関連性が高いです。
逆に若年者であっても長距離走選手では、長期間のエストロゲン分泌低下を来たし、骨強度の低下を来すことが知られています。
分類:
原発性骨粗しょう症と続発性骨粗しょう症があります。
原因が明らかなのは続発性骨粗しょう症です。
高円寺南診療所はリウマチ専門医による診療を行っているため、リウマチの症例が多いのですが、
多忙を極めるためか大学病院や地域拠点のリウマチ科から紹介されてくるリウマチ患者さんの骨密度が検査されていないことが多いです。
しかし、リウマチの患者さんは、リウマチというだけで骨粗しょう症のリスクが高いです。
しかも、抗リウマチ薬の主薬(アンカードラッグ)として頻用されているメトトレキサートや、
炎症の活動性が高いなどの理由で用いられる副腎皮質ステロイドは骨粗しょう症のリスクとなるため、
必ず骨密度は測定して、測定結果に基づき適切な対応をとる必要があると思います。
原因:
①内分泌性(副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病など)
②栄養・代謝性(胆汁鬱滞性・排せつ障害性疾患、慢性腎疾患、ビタミンA・D過剰摂取、
③薬剤性(ステロイド、メトトレキサート、ワルファリン、ヘパリンなど)、
④その他(関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、血液疾患、先天性骨形成不全など)
評価:
治療適応となるのは椎体、あるいは大腿骨近位部の脆弱性骨(骨折再発のリスクが高いため)
骨折リスク評価ツール(FRAX:fracture risk assessment tool)による10年間骨折リスク15%以上の場合
両親のいずれかが大腿骨近位部骨折の既往がある場合は
骨密度が若年成人平均(YAM)が80%未満
脆弱性骨折が無い場合は
骨密度が若年成人平均(YAM)が70%以下
骨吸収マーカーNTXや骨形成マーカーは骨粗しょう症の診断あるは治療薬開始の判断基準に含まれていません。
治療:
日常生活の改善(食事療法・生活療法)と薬物療法があります。
①食事療法
天然型ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進し、転倒リスクを減らします。
積極的なカルシウムの摂取(牛乳、乳製品、大豆、小魚、干しエビ、小松菜など)
ビタミンCは骨組織の基礎となるコラーゲン合成、架橋形成に必要です。
ビタミンKはオステオカルシンのɤ-カルボキシル化に必要です。
②適度の運動
骨量低下の防止、骨折防止に継続的な運動が有用です。
水氣道®は水中での立位での有酸素運動で、浮力の助けにより膝などの荷重関節を保護しつつ、
安全に垂直跳躍運動をすることなどの力学的負荷により、骨量を増やすことができます。
また、転倒・骨折予防のための理想的な訓練にもなっています。
②薬物療法
カルシウム製剤:他の治療薬の効果を発揮するためには、カルシウム欠乏の場合では是正が必要です。
活性化型ビタミンD3:腸管からのカルシウム吸収を促進し、椎体・前腕骨の骨折防止効果をもつエルデカルシトールなどの製剤があります。
ビタミンK2:骨質を改善するが骨折防止のエビデンスは乏しいとされています。
女性ホルモン製剤:閉経後早期に、更年期障害の改善の目的で使用されます。
ビスホスホネート:副作用に食道粘膜障害があり、服薬後30分は横臥してはいけないので、寝たきりの患者には使用しにくいです。
テリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤):骨形成促進作用をもち骨形成マーカーが上昇します。
また、骨粗しょう症患者の骨折を抑制します。間歇的な副甲状腺ホルモンの投与は骨形成を促します。
デノスマブ( 完全ヒト型抗RANKLモノクロナール抗体):RANKL(Receptor activator of NF-kB ligand )の機能を抑え、破骨細胞前駆細胞に発現数RANK受容体の活性化を抑制します。
6か月に1回の皮下注射製剤です。
副作用として低カルシウム血症に伴うQT延長、テタニー、意識障害があり、適応するには慎重な検討が必要です。
ラロキシフェン(SERM)は、骨および血清脂質に対してはエストロゲン様に作用し、骨折抑制効果と脂質改善効果を示すが、
子宮内膜や乳腺に対しては抗エストロゲンとして作用し、子宮体がんやエストロゲン受容体陽性乳がんの発生を促進しなません。
注意すべき副作用は血栓、塞栓症であり、ハイリスクな寝たきり患者や臥床が必要な手術前後には使用しなません。
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