日々の臨床 7月4日火曜日 <原発性マクログロブリン血症>

血液・造血器の病気

 

テーマ:原発性マクログロブリン血症

 

 

初診時にリンパ節腫大、肝脾腫のみを身体症状として認める患者さんがときおり来院されます。

 

発熱を伴うことも、伴わないこともありますが、

 

発熱を伴わない場合が、むしろ要注意です。

 

それは慢性リンパ性白血病(CLL)悪性リンパ腫

 

疑わせる症状を呈していないかどうかを確認する必要があるからです。

 

 

本日、ご紹介する原発性マクログロブリン血症は、

 

約半数の症例で、初発時にリンパ節腫大、肝脾腫を認めることが多い他、

 

貧血を認めることがあります。

 

 

その場合、患者の20~40%に過粘稠性症候群

 

(出血傾向、視力障害、精神神経症状など)の確認のために、

 

内科医も眼底検査をします。

 

眼底静脈が怒張しソーセージ様変化を呈していれば、

 

赤血球連銭形成を来たしているはずであり、

 

過粘稠性症候群ひいては原発性マクログロブリン血症を強く疑います。  

 

 

>過粘稠性症候群:血清の相対的粘稠度(ねばつき度)が3以上になると出現する諸症状です。

 

出血傾向・凝固異常(異常なM蛋白が血液の凝固因子と結合するため)、

 

視力障害(眼圧変化、眼底出血)、

 

精神・神経症状(頭痛、めまい、意識障害、脳波異常、しびれなどの末梢神経症状)の他、

 

レイノー症状(IgM著増によるクリオグロブリン増加のため)

 

 

 

原発性マクログロブリン血症では、

 

骨髄中の特定の形質細胞(成熟B細胞と形質細胞の中間段階にあるリンパ形質細胞)が

 

腫瘍性に増殖して他の血球系統を抑制するため貧血がみられます。

 

ただし、増殖の場は骨髄よりリンパ組織が中心であるため、リンパ節が腫れてくるのです。

 

この異常増殖細胞は単クローン性の免疫グロブリン蛋白であるIgMを産生します。

 

 

原発性マクログロブリン血症で問題になるのは、

 

過粘稠性症候群の他に、免疫力低下による易感染性です。

 

正常な免疫グロブリンが低下するために起こります。

 

 

 

診断:同様に高γ-グロブリン血症を呈する多発性骨髄腫との鑑別が重要です。

 

 

マクログロブリン血症は骨髄腫の1割程度の頻度ですが

 

40~70歳代(男女比2:1)に多く発生します。

 

マクログロブリン血症の特徴は、リンパ組織の病変が主体で、

 

M蛋白がIgMであり、赤血球の連銭形成、過粘稠性症候群、眼底変化を示すことです。

 

これらに対して、骨破壊が少ないことも多発性骨髄腫との鑑別上有意義です。

 

 

治療:軽症例(IgM上昇や貧血が軽度)では無治療で経過観察とします。

 

中等症以上では以下の化学療法を用います。

 

アルキル化薬(シクロホスファミド、メルファラン)、

 

プリン拮抗薬(フルダラビン、クラドリビン)、分子標的薬(抗CD20抗体であるリツキシマブ)

 

過粘稠性症候群を認める場合は血漿交換が適応となります。