専門性の原則に関連して、今回は、トレーニング手段を構成する<体力>と<技術>について述べてみたいと思います。
一般的なスポーツ理論によると、パフォーマンスの向上には<動き>の変容が必要であり、この<動き>の変容には<体力>と<技術>という2つの要因が影響するとされます。しかし、この2つの要因が変化していく過程には大きな相違があります。
一方、ヒトの心身の構造や機能には、ハードウェア的要素とソフトウェア的要素があります。
ハードウェア的要素とは、筋や腱・靭帯、心臓循環器系、呼吸器系、免疫系などです。またソフトウェア的要素とは、神経系です。
ハードウェア的要素である筋や腱・靭帯を強化して発揮できる力やスピードを高めるとともに、心臓循環器系、呼吸器系、免疫系などを改善し、疲労現象に耐え、長時間にわたって出力し続けるための要因は身体のハードウェア的要因となります。
身体をハードウェアとして捉えた場合に基礎となるのが「過負荷の原則」に基づいたトレーニングなのですが、これは体力トレーニングとして認識されています。
体力向上のためには身体構造の改善という時間を要するプロセスを要するため、遅延効果として現れます。
(なお、「過負荷の原則」についてはすでに触れていますが、いずれ改めて解説する機会があると思います。)
ソフトウェア的要素である神経系、すなわち運動神経系や感覚神経系や自律神経系など大脳中枢から末梢神経に至るすべての神経系によって支えられている運動制御機構と運動プログラムを改善するとともに、<動き>の感じやコツを体得させて運動習熟を導くのがソフトウェア的要因です。
こうした神経系の運動プログラムは意識的制御系と無意識的制御系によって構築されています。
このためには、特異性の原則や専門性の原則に基づきながら、<動き>の感じや主観的なコツを体得するための諸々の運動(身振り運動、模倣運動、繰り返し行うドリル系の運動)をトレーニング手段として用います。これが技術トレーニングとしての練習に相当します。
(特異性の原則については、別の機会に改めて説明する機会があると思います。)
水氣道においては、<動き>の感じや主観的なコツを大切にしながら稽古を継続すると、試行錯誤や思考錯誤が連続する混沌世界から突然に<動き>が変わり、稽古効果が即時的に出現することを体感することができるようになります。
このように、<動き>の変容の原因をソフトウェア的要素およびソフトウェア的要因として捉え、専門性の原則に基づいたトレーニングによる技術・技能の向上では即時効果が期待され、こうした効果をもたらすトレーニングは理想的な技術トレーニングとして認識されています。
以上のように、トレーニング手段としての運動には、体力と技術という相互に分断できない二つの側面が内在しています。それは水氣道の稽古の手段においても基本的には同じであるといえます。水氣道の稽古を継続していくことによって、体力と技術が一体的に養成されていくことを感じ取ることができるようになるでしょう。
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