下部尿路症状に関するスクリーニングの必要性と当クリニックの方針 ③

 

(杉並国際クリニック令和3年初版)その3(全5回)

 

尿失禁は「不随意に尿が漏れる状態」です。これは健常人でみられる軽微なものから高齢者の重度なものまで、病態としては幅が広いです。国内の尿失禁患者数は推定400~500万人といわれ、超高齢社会においては、今後もますます増加していくものと思われます。

 

尿失禁には以下の6種類があります。

 

腹圧性尿失禁:膀胱支持組織の脆弱化を原因とする腹圧時の不随意な尿失禁

 

切迫性尿失禁:強い尿意(頻尿、尿意切迫感)とともに尿が漏れ出てしまう不随意な尿失禁

 

混合性尿失禁:上記1と2の両方を有するもの

 

溢流性尿失禁:膀胱に尿が充満して、尿が尿道から溢れて漏れる状態

 

機能性尿失禁:認知症や身体運動機能低下のため、膀胱尿道機能に関係なく、トイレ以外の場所で失禁する状態

 

反射性尿失禁:徴候も尿意も伴わず、不随意に膀胱が収縮して失禁するもの

 

問診だけで尿失禁の患者さんの約70%の尿失禁タイプを鑑別することができるといわれています。そこで、尿失禁がみられる場合には、標準化された問診票を活用することによって、初期のうちから原因を把握しておくことが有用であると考えます。

 

尿失禁と頻尿はしばしば合併するため、過活動膀胱症状スコア(OABSS)は4つの質問のみで、尿失禁の種類と程度をある程度把握できるので便利であることに気が付きました。

 

たとえば、質問1は頻尿の頻度を問うもので、尿失禁の分類以前に確認しておきたい項目です。質問2は、夜間頻尿の頻度、質問3・4は頻度の多い切迫性尿失禁や混合性尿失禁を示唆します。

 

過活動膀胱症状スコア(OABSS)質問票

 

を添付します。