心療内科指導医<消化器心身症>を語る、胃食道逆流症No1<GERDの課題>

7月20日(月)  

胃食道逆流症(GERD)は、胃内容物の食道への逆流によって惹起される疾患です。

GERDは、かつては欧米に比較して日本では頻度の低い病気と考えられていました。

しかし、近年、有病率が急激に上昇していて、現在では成人の約10ないし20%が罹患していると推定されています。

この傾向の背景としては、一般的に指摘されていることは、病気の認知度が高まってきたこと、食生活の欧米化、ピロリ除菌の普及に伴うピロリ感染率が減少することによる胃酸分泌の増加が原因であろうということです。

 

しかし、私はそれだけでは説明できない症例が増えていることに注目しています。

それは最近、①慢性咳嗽、気管支喘息、反復性呼吸器感染症などの呼吸器症状、②咽喉頭違和感、耳痛、耳鳴などの耳鼻科的症状、③非心臓性胸痛など循環器的症状など、GERDに起因する食道外症状が注目されているからです。

 

これらのことから私は胃食道逆流症を単に消化器内科領域の病気であるとして取り扱うことには限界があることを経験してきました。

この疾患群は総合内科的な守備範囲をも超え、心身医学的アプローチを要するケースが増えていることを認識すべきであると考えています。

 

一概にGERDといっても、食道粘膜障害を有する逆流性食道炎(RE)と、逆流症状を有するものの内視鏡所見では粘膜障害を認めない非びらん性胃食道逆流症(NERD)に区分され、これら両者の病態には重なる部分と重ならない部分がありますが、十分に議論を尽くされていないためか、この事実は医師の間でもあまり知られていません。

杉並国際クリニックを受診されるGERDの患者さんのほとんどは、消化器内科や人間ドック等で内視鏡検査を受けて異常なしとされたために転医してこられたケースがほとんどです。

つまり、非びらん性胃食道逆流症(NERD)が圧倒的に多いのですが、あちこちの病院を受診しても改善せず、やっとの思いで杉並国際クリニックにたどり着くパターンが典型例です。

もう一つの代表的なパターンは、複数の疾患や多くの症状を抱えている方で、全身状態が改善するにつれて、逆流性食道炎の症状が気になりだして診断に至るケースです。

 

わが国における最新の「GERD診療ガイドライン」は2015年に発行された改訂第2版です。そして、REに関しては、1996年に提唱されたロサンゼルス分類がもとになって改訂された内視鏡的重症度分類が現在最も使用されています。

そしてGERDの診療上の課題は、食道粘膜障害を有する逆流性食道炎(RE)と、逆流症状を有するものの内視鏡所見では粘膜障害を認めない非びらん性胃食道逆流症(NERD)との鑑別が容易でないことに加え、REに対してNERDの病態理解と評価法、さらには治療成績が芳しくないことです。

 

心療内科専門医として取り組むべきGERDは、NERDが中心となりますが、治療抵抗性のREも対象になります。