神経・精神・運動器
テーマ:抗てんかん薬の処方について
<抗てんかん薬はどのように使われているか?>
高円寺南診療所で、抗てんかん薬を処方している患者さんのほとんどは、
双極性障害、線維筋痛症、片頭痛、三叉神経痛の方であり、
てんかんの治療目的のみの方は少ないです。
ただし、双極性障害の方でてんかん気質の方は少なくありません。
そのような場合は、てんかんと双極性障害の双方に有効な抗てんかん薬を使用しています。
その代表が、バルプロ酸(デパケン®)、カルバマゼピン、ラモトリギン(ラミクタール®)です。
また、バルプロ酸はてんかんと片頭痛の両方の予防薬ですが、
体重増加を来すことがあります。
これに対してトピラマート(トピナ®)は
体重減少を来す傾向があるため、肥満の方にはこれを使います。
てんかんとは、慢性脳疾患の一つです。
大脳神経細胞の過剰発射(神経生理学的な興奮)の結果
生じる反復性発作(てんかん発作)を主徴とします。
てんかん発作は、慢性反復性の発作であり、
慢性非誘発性発作とも呼ばれることがあり、病因として急性疾患は除外されています。
これに対して、中枢神経系を侵襲する急性疾患あるいは代謝障害によって生じる発作は
急性症候性発作と呼ばれますがてんかんには含まれません。
てんかんの症状はてんかんの発作によって、
意識障害、痙攣(けいれん)、神経症状、自律神経症状、精神症状などが一過性に生じます。
<発作型の分類>
発作は部分発作と全般発作に二大別します。
部分発作とは、発作が一側大脳半球の一部から始まるものです。
〇単純部分発作:内側側頭葉由来の前兆として、未視感・既視感
〇複雑部分発作:側頭葉を中心に発作間歇期にspike & waveを認めます。
側頭葉てんかんは、意識障害を伴う自動症を呈することが多い複雑部分発作の一病型です。
やはり側頭葉を中心にspike & waveがみられます。
〇二次性全般化発作:カルバマゼピン
全般発作:バルプロ酸、クロナゼパムが推奨されています。
〇欠神発作:脳波は全般性の3Hz棘徐波複合です。
バルプロ酸、エトスクシミドを処方します。
〇強直間代性発作:口腔内泡沫、流延。フェニトイン、バルプロ酸が用いられます。
てんかんの約70%は抗てんかん薬で発作が抑制され、
難治(薬剤抵抗性)てんかんは10~20%とされます。
注意しなければならない抗てんかん薬は、前述のバルプロ酸です。
これはカルバペネム系抗生物質との併用は禁忌です。
また女性で挙児希望があればバルプロ酸は避け、
ラモトリギン、レベチラセタム(イーケプラ®)に変更し、葉酸の投与が推奨されます。
さらに高齢者の有病率1%とされる高齢者てんかんは、
高齢で初発するてんかんで、その90%以上は部分てんかんです。
これには発作型は複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作が多いです。
てんかん分類では、側頭葉てんかんが最多です。
側頭葉てんかんの前兆としては、上腹部不快感や既視感が知られています。
部分発作であれば、ラモトリギン、レベチラセタム、ガバペンチン(ガバペン®)を用います。