日々の臨床 6月22日木曜日<咳喘息と神経性咳嗽>

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:咳喘息と神経性咳嗽

 

<心身症との鑑別が難しい咳嗽>

 

 

アレルギー内科の専門医は、喘息診療のエキスパートです。

 

喘息には<咳喘息(せきぜんそく)>というタイプがあり、早期に診断して対応することが大切です。

 

しかし、喘息(ぜんそく)という名称の括りに対して心理的に抵抗を感じるためか、

 

診断に納得されず、咳止めだけの処方を希望される方がいます。

 

十分な説明によって、御自分の病態を正しく理解していただく必要を感じております。

 

 

 

咳喘息の診断は「咳喘息に関するガイドライン」で基準が示されています。

 

1)喘鳴を伴わない咳嗽が8週間(3か月)以上持続、

 

聴診上wheeze(ゼイゼイと聞こえる呼吸の雑音)を認めない

 

 

2)気管支拡張薬が有効、

 

この2つを満たすものとされています。

 

 

特徴:

咳喘息は、典型的な喘息とは異なり、慢性的に続く咳が主体であり、喘鳴や呼吸困難は伴いません。

 

また呼吸機能検査(スパイログラム)で喘息特有の閉塞性パターン(気流閉塞)は示しません。

 

しかし、喘息の亜型または前段階と考えられています。

 

実際に、約3割が本格的な気管支喘息に移行します。

 

咳喘息では喀痰中、気管支肺胞洗浄液、気管支粘膜生検において好酸球の増多を認めます。

 

 

 

治療:

鎮咳にはβ2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が有効です。

 

咳喘息に対しては吸入ステロイド薬による長期管理が推奨されています。

 

 

ところで、慢性の咳嗽を来す疾患や病態は多いため、

 

咳喘息と診断するためには、他の疾患を否定する必要があります。

 

神経性咳嗽もその一つです。実際の症例を示します。

 

 

 

S.W 30代男 医療従事者

 

(個人情報保護の配慮により、本人の許可を受けました)

 

 

診断:神経性咳嗽(しんけいせいがいそう)

 

 

主訴:「咳がおさまらない。薬が効かない。」

 

 

医療面接:以下は、問診の結果得られた情報です。

 

〇日中に多く、夜間は少ない。

 

〇話をしていると咳が出易く、黙っているときには少ない。

 

〇話をする機会が多いのは職場、家では余り話をしない。

 

〇職場は多忙でストレスフルであり、絶えず緊張を強いられている。

 

〇「職場の対人関係は何とかコーピングできている」との発言、

 

 しかし、実際には積極的なストレス対処ができているのではなく、消極的に回避している。

 

コーピングという言葉を、回避して悩みを一時的に紛らわせることだと誤解していた。

 

〇最近、トラブル続きで、今日も嫌なことがあった。

 

 

 

病態:

神経性咳嗽とは長期間にわたる発作性・反復性または慢性連続性の

 

乾性咳嗽(タンを伴わない咳)を呈する疾患です。

 

心理社会的因子の関与がみられ、咳嗽の出現に季節性がなく

 

睡眠中には起こらないなどの特徴があります。

 

 

鑑別:

慢性の咳嗽を来す疾患や病態は多いため、

 

神経性咳嗽と診断するためには、他の疾患を否定する必要があります。

 

つまり、内科的なアプローチを経ないと診断できない病気です。

 

特に鑑別が問題となるのは咳喘息やアトピー咳嗽です。

 

これらは、治療的診断によって鑑別することができます。

 

前者では気道過敏性が認められ気管支拡張薬が効きます。

 

後者では気管支過敏性はなく、ヒスタミンH1受容体拮抗薬やステロイド薬が有効です。

 

 

慢性咳嗽のその他の原因としては、胃食道逆流症や百日咳が増加しているので注意しています。

 

さらには降圧剤のなかでACE阻害薬の副作用で生じることもあるので、

 

他の病院を受診している方には、お薬手帳を見せていただいております。

 

 

S.Wさんはアレルギー体質であるため、喘息の治療を継続しつつ、

 

神経性咳嗽に対して心身医学的サポート(水氣道®、認知行動療法など)が有効です。

 

対人関係が得意でなく、コミュニケーションにおいてストレスフルになりがちな方には、

 

聖楽院でのヴォイストレーニングも有効です。

 

これは、咳喘息にも神経性咳嗽にも役立つ、コーピング技法です。