『嘱託産業医』の相談箱

 

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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

企業の禁煙推進戦略 No.3

 

姑息的でない、根本的な対策が求められている!

 

Q2.喫煙室を整備しても、企業で完全な「分煙」は難しいのでしょうか?

 

喫煙スペースや喫煙室から漏れ出る煙、喫煙後の呼気に含まれる煙について、喫煙室の扉を開け閉めする際には「ふいご」の効果によって煙は室外に押し出されるため、完璧な分煙は実現できないことがわかっています。

そして、肺に残っている煙が喫煙後の呼気に約2分間、吐き出されますので、すぐに自席に戻れる場所で喫煙すると受動喫煙が発生しますし、煙が吐き出され終わった後も口臭や衣服のタバコ臭による三次喫煙による被害が続きます。

まず、ハード面として“喫煙スペースの廃止”が必要です。

 

 

Q3.企業の対応方法でのソフト面ではどのような方法があるでしょうか?

 

ソフト面では、勤務中や休憩時間や出勤途中、営業先で喫煙できる場合、三次喫煙の被害はなくならないので、それらを禁止することです。

少なくとも「勤務中はどこに居ても禁煙」というルールが必要です。

その上で、従業員の禁煙を企業が支援することが大切になってきます。

これだけ「吸いづらくなった世の中」で、今でも吸い続けている人たちは、もうイヤというほど「タバコの害」について聞かされていると思います。

それでもタバコをやめていないわけです。

つまり、まだタバコを吸っている人たちは、言ってみれば「自力では禁煙できないスモーカー(ニコチン依存症)で治療が必要な病人」なのです。

ですから、単にタバコの害を説明するだけではなく、禁煙補助薬と内服薬で苦しまずに禁煙できること、禁煙することによって多くのメリットが得られることを伝えることで、禁煙する気持ちを促し、禁煙治療費を会社が援助することが必要です。

 

 

禁煙治療について

(ニコチン依存症治療には保険が適用されます)

 

平成18(2006)年4月から禁煙治療に健康保険が適用されるようになりました。施設基準を満たした保険医療機関で、患者基準を満たした患者さんは、初回から12週間にわたり計5回、「ニコチン依存症管理料」として禁煙治療に保険が適用されます。

 

平成28年4月診療報酬改正について

平成28(2016)年4月から診療報酬の算定方法が改正され、若年層のニコチン依存症患者にもニコチン依存症治療を実施できるよう、対象患者の喫煙本数に関する要件が緩和されました。

 

保険適用の禁煙治療を受けることのできる方

次の3項目全てに該当する場合、保険が適用されます。

 

1. 「ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト」 でニコチン依存症と診断された方(10点中5点以上)

 

2. 35歳以上の者については、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が、200以上である方。

ただし、2016年4月から、34歳以下に対しては、ブリンクマン指数による条件が撤廃されました。

 

3. ただちに禁煙することを希望している方であって、「禁煙治療のための評価手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方

 

ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト

 

5項目以上当てはまる場合、ニコチン依存症と診断されます。

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その際には、産業医の衛生講話や衛生管理者のプレゼンなども有効に活用していくと効果的です。

 

やはり、喫煙は企業にとって多数の「リスク」があるため、ソフト・ハードの両面から支援していくことが大切になるのです。