最新の薬物療法

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

 

飯嶋正広

 

糖尿病治療薬(総論)

 

治療薬の進歩は、新薬の開発ばかりではなく、従来から知られていたが、再評価されて広く使われるようになったものがあります。

 

糖尿病治療薬では、何といってもSGLT2阻害薬の再評価および糖尿病以外の病態への適応拡大が大きな話題になっています。

 

フォシーガ®は、すでに海外で広く用いられていて、わが国でも糖尿病の他に、慢性心不全の補助療法、末期に至っていない慢性腎臓病も適応となっています。

 

糖尿病患者は、慢性心不全や慢性腎臓病のリスクも高いため、食事療法や運動療法だけでは十分に血糖コントロールができないケースで、肥満傾向で非高齢者である場合などは、この薬剤の使用を検討します。ただし、尿中に糖を排出するため、尿路感染症を引き起こすことがあるので注意を要します。

 

また、既存の糖尿病薬を組み合わせた配合剤は、単剤では十分にコントロールできない患者の服用錠数を減らせるため服薬の継続が容易になります。


インスリン抵抗性を改善するチアゾリン誘導体であるピオグリタゾンが共通し、以下の配合訳が使われています。

 

+メトホルミン配合(メタクト®)

+グリメピリド配合(ソニアス®)

+アログリプチン配合(リオベル®)

 

糖尿病の薬物治療の問題点は、1)血糖改善効果持続性の欠如(効果が長く続かない)、2)低血糖リスク、3)消化器系をはじめとする副作用が多い、4)注射薬しかないものが少なくない、5)投与頻度が多く、しかも長期に及ぶ、6)薬価の高いものがある、などが挙げられてきました。

 

しかし、近年では、新たな作用機序をもつ治療薬が登場し、個々の患者の病態に応じた治療選択が次第に容易になってきました。その代表的なものについて検討してみます。

 

 DPP-4阻害薬

国産のDPP-4阻害剤であるテネリグリプチン(テネリア®)を私は処方しています。糖尿病患者は腎機能が低下しやすく、場合によっては透析が必要になるケースもあるため、そのような状況に至っても同用量で使用が可能な薬剤であることも選択理由の一つです。多くの患者で血糖コントロールが改善し、血中半減期が長く効果も持続性であり、副作用が少ないというメリットが重なっています。

 

 GLP-1受容体作動薬(インクレチン関連薬)

この薬は、以前は注射薬であったことと、消化器系副作用が問題とされていたために採用が難しいものでした。その後、経口剤が登場し、肥満症や心血管病に対する効果も期待されているため、徐々に使用されるようになってきました。経口薬のセマグルチド(リベルサス®)が有望だと思われます。

 

 ミトコンドリア機能改善薬イメグリミン(ツイミーグ®)

ミトコンドリアを標的にするといった新しい作用機序の薬剤です。インスリンの分泌促進(膵作用)と、肝臓、骨格筋での糖代謝改善(膵外作用)により、血糖降下作用を発揮します。今後は糖尿病専門医による症例の集積データが楽しみです。

 

 GIP/GRP-1受容体作動薬

週1回投与ですむことが魅力的です。2型糖尿病/肥満または併存症を有する過体重に対する効能が期待されています。実用化はまだ先です。

 

 新しいインスリン製剤

次々と開発されていますが、現在、当クリニックでインスリン製剤使用者はいないため、紹介は省略いたします。

 

糖尿病治療薬(各論)については、機会を改めて紹介させていただきます。