最新の薬物療法

 

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認定内科医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

飯嶋正広

 

新型コロナウイルスワクチン

 

最新の薬物療法のコラムでワクチンをテーマに取り上げることは、本来であれば適切でありません。なぜならば、ワクチンは治療薬ではないからです。それでは、ワクチンとはいったいどのような代物なのでしょうか?

それについては、厚生労働省のサイトのQ&Aで、以下のように説明されています。

 

ワクチン、予防接種とは何ですか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 


ワクチン、予防接種とは何ですか。

 

予防接種とは、感染症の原因となる病原体に対する免疫ができる体の仕組みを使って、病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くするために、ワクチンを接種することをいいます。


一般に、感染症にかかると、原因となる病原体(ウイルスや細菌など)に対する「免疫」(抵抗力)ができます。免疫ができることで、その感染症に再びかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりするようになります。

 

予防接種とは、このような体の仕組みを使って病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くするために、ワクチンを接種することをいいます。

 

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ここで、皆様に気付いていただきたいのは、厚生労働省はワクチンと予防接種を同列に置いていることです。

そして、予防接種による予防効果とは、「その感染症に再びかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりする」ことを意味することになります。逆に言えば、予防効果のないものを接種することは予防接種に該当せず、接種物もワクチンに該当しないということになります。

また、ワクチンとは接種により対象とする感染症の予防効果が証明されてはじめてワクチンとして認められると考えるのであれば、たとえワクチンという名称が冠されていても正式なワクチンには該当しないはずです。

もっと言えば、安易に「ワクチン」という名称を与えることで大きな誤解をもたらしていることを深く認識しておく必要があるのではないでしょうか。せいぜい「ワクチンもどき」(ワクチン候補物質ないしはワクチン類似物質)と表記されるべきではないでしょうか。

 

さて、新型コロナウイルスワクチンには複数の種類があり、以下のように2大別することができます。

 

1)メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン

 

2)アデノウイルスベクターワクチン

 

わが国で広く用いられているのはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであり、ファイザーのコミナティ®、モデルナのCOVID-19ワクチンモデルナ®です。

 

この「ワクチンもどき」は、病原ウイルスであるSARS-CoV-2のウイルス粒子表面のスパイク(棘、突起)蛋白を作る指示を出すmRNAはもともと不安定な核酸であることから、これを特殊な脂質(ポリエチレングリコール)の膜の中に入れて、安定させたものを接種に用います。

 

一方、不活化ワクチンは培養したウイルスを殺しただけで、4種混合ワクチンなど赤ちゃんが打つワクチンと同じような製法で作っている。

 

これを体内に注射すると、mRNAはヒトの細胞内に融合し、細胞内のリボソームという小器官でアミノ酸の連鎖が作られ、そうしてスパイク蛋白が形成されます。このスパイク蛋白は生体にとっては異物であるため、これに対して抗体が作られます。この抗体がSARS-CoV-2への免疫として働くことが期待されています。

 

 

このワクチンもどきのメリット:

ウイルス粒子全体ではなくスパイク蛋白部分だけに対する抗体が産生されること

 


このワクチンもどきのデメリット:

1) 強力な免疫の誘導に伴い、特に2回目の接種で、全身症状が出易いこと

 

2) mRNAの安定化に使用される特殊な脂質であるポリエチレングリコールは、人間の体にないもので、アレルギーや高熱、心筋炎などに影響する

 

3) ワクチンの保管条件が厳しいこと(-80℃ないし-20℃などの特別に低温の冷蔵庫が必要)

 

4) 長期予後(晩発性の副反応など)が未確認である

 

 


開発中の国産ワクチン

日本医療研究開発機構(AMED)からの研究費を受けて開発が進んでいます。塩野義の組み換え蛋白ワクチン、塩野義のmRNAワクチン、アンジェロス社のDNAワクチン、KMバイオロジクスの不活化ワクチンの4つです。わたしは、最後の不活化ワクチンに大きな期待をかけています。

 

その理由は、不活化ワクチンは副反応が少ないからです。なぜならば、不活化ワクチンは培養したウイルスを殺しただけで、4種混合ワクチンなど、従来、赤ちゃんが打つワクチンと同じような製法で作っているからです。第2/3相試験で2回接種が終わっていてその途中経過(2022年3月17日現在)ですが、発熱して寝込んだり会社を休んだりするなど、日常生活に支障が出た人はゼロとのことです。微熱や接種部位の多少の痛みなど、インフルエンザワクチンと同程度の副反応と認識していただければ良いとの認識で良いものと考えられます。