遷延する症状で苦しむ方のために

 

前回はこちら

 


新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応を疑う症状に対する診療体制の構築について

 

 

本日のタイトルは、厚生労働省健康局健康課長が各都道府県衛生主管部(局)に向けて発せられた通知をそのまま引用したものです。

 

なお、通知とは特定人又は不特定多数の人に対して特定の事項を知らせる行為を意味し、対称からしても漠然としています。これに対して通達とは、各大臣、各委員会及び各庁の長官が、その所掌事務に関して所管の諸機関や職員に命令又は示達する形式の一種で、法令の解釈、運用や行政執行の方針に関するものが多いです。 

 

ただし、下線部に関しては私が施したものです。

 

最後にコメントを加えました。

 

 

健健発 0201 第2号 令和3年 2月 1日 各都道府県衛生主管部(局) 御中
厚生労働省健康局健康課長 (公 印 省 略)

 

新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応を疑う症状に対する診療体制の構築について

 

新型コロナウイルス感染症に係る予防接種については、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引きについて」(令和3年1月 15 日付け健発 0115 第 1号厚生労働省健康局長通知)において、接種体制の構築に向けた準備の参考となるよう、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種実施に関する手引き(改訂版)」が 示されたところです。

 

型コロナウイルスワクチン接種後に、副反応を疑う症状を認めた場合、当該被接種者は、まずは、身近な医療機関を受診することとなりますが、必要に応じて身近な医療機関からの紹介により、専門的な医療機関に円滑に受診できる体制が必要となります。このような受診に対応できる専門的な医療機関を予め確保するため、必要に応じ都道府県医師会、関係学会等と連携の上、専門的な医療機関への協力依頼を行っていただくようお願いいたします。

また、本診療体制の構築に要する経費(医療機関への謝金や、相談窓口設置委託料 等を想定)は「新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業」の対象となります。 なお、公益社団法人日本医師会等に対し、本件に関する協力を依頼していることを申し添えます。 (添付資料について)

 

別添1 ワクチン接種後の副反応等に対応する医療体制の確保のための都道府県の準備 

別添2 ワクチン接種後の副反応等に対応する医療体制の確保

 

 

新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応を疑う症状について、被接種者が受診を希望する場合は、まず、身近な医療機関を受診して頂くこととする。その後、必要に応じて、専門的な医療機関を円滑に受診できる体制を確保するよう、都道府県はあらかじめ医療機関に協力依頼を行うともに、住民からの相談に対応出来る体制を整備する。

 

協力を依頼する専門的な医療機関としては、総合診療科や複数の分野の内科診療科を有する等、総合的な診療ができる体制を有する医療機関が適当と考えられる。

 

協力医療機関においては、円滑な受診のため、院内地域連携室等に新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応を疑う患者の紹介に対応するための窓口を設けることや、地域の医療機関等からの相談に対応することなどが求められる。

なお、協力医療機関の相談窓口の設置や連絡体制整備等に要する経費であって、診療報酬の対象とならないもの(連絡調整や相談に関する医療機関への謝金や、相談窓口設置委託料等を想定)については、新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業(都道府県実施分)の補助対象となる。

 

○ 都道府県は、接種医やかかりつけ医が、専門的な医療機関を円滑に紹介できるよう、協力医療機関のリストを作成し、ワクチンを接種する医療機関等に情報共有する。

 

○ なお、都道府県が設置する相談窓口においては、住民から新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応に関する相談を受けた場合は、相談内容に応じて、接種医やかかりつけ医等の身近な医療機関を受診するよう促すなど、適切に対応するものとする。

 

 

コメント 

以上は、2月1日付けの課長通達です。国民にとってとても重要な情報なはずです。しかし、丁度2カ月を経過した令和3年4月1日時点で、全国の都道府県の関連部局以外の部局をはじめ市町村などの身近な自治体や地区医師会等を通して、国民にどれだけ周知されているかについては、甚だ心もとないと言わざるを得ないのが現状ではないでしょうか。

 

その理由の1つとして考えられるのは行政慣行です。国から地方公共団体への通達は、必ず都道府県や政令市に向けて行われることが通例だからです。国が市区町村に直接示達するのは国の威信(面子:めんつ)を損ねるため、市区町村の事務に関するものであっても、必ず都道府県からリレー式に市区町村に通知されなければならないという行政ルールがあるため、住民に周知されるまでには相当の時間を要してしまうことになります。

 

また、行政通達によっては、今回のように、十分に具体化できていない段階で、さみだれ式に発令されることがあるためです。通達の受け手である全国の関連部署は、迅速な対応を検討するのではなく、次の通達(2月1日の通達の次が、3月24日に発令されています)を待つだけ、ということになりかねません。

 

さらに、以上のような通達行政の弱点を補完すべき役割や機能を担うことが期待されている主要メディア(新聞やテレビ・ラジオなど)なのですが、新型コロナワクチンに関するネガティブとも受け取られかねない情報の発信については何故か消極的な空気が漂っているように感じられます。
 

そこで、厚労省も、必要に応じ都道府県医師会、関係学会等と連携の上、専門的な医療機関への協力依頼を行っていただく、としています。私は上記のような現状を鑑みるならば、関連学会等との連携は「必要に応じて」ではなく、必須であると考えています。
 

今月25日~27日に開催される第66回日本リウマチ学会総会・学術集会のプログラム・抄録集が私の手元に届きました。そこで新型コロナワクチン接種後にさまざまなリウマチ性疾患が発症ないし増悪していることについての発表演題が23件見られました。リウマチ学会に限ってもこれだけ多数の発表例があるため、今後は、アレルギー学会その他の発表抄録についても目が離せません。
 

また、当該通達は、協力を依頼する専門的な医療機関としては、総合診療科や複数の分野の内科診療科を有する等、総合的な診療ができる体制を有する医療機関が適当、と記述しています。
 

この点に関して、厚労省の意図する内容は必ずしも明確ではないのですが、新型コロナワクチン後遺症患者の診療に適当とする医療機関の要件として、  

1)専門的医療機関、2)総合診療科を有する医療機関、3)複数の分野の内科診療科を有する医療機関、とされています。
 

新型コロナワクチン後遺症患者の診療を担当する臨床科として内科を特定していることが注目されます。それでは、内科のうちの複数の分野というのは、具体的にはどのような分野でしょうか?それについては具体的な言及がなされていません。
 

医学の素人である患者は、自分の症状を手掛かりとして、思い思いの診療科を受診するのが通例です。したがって、必ずしも内科の各専門分野の専門医を受診するわけではありません。その場合に、実際的なのは、日常的に内科以外の診療科とのかかわりが深い内科の専門領域です。
 

たとえば、アレルギー科を標榜して総合アレルギー医を志向しているアレルギー専門医であれば、喘息などの内科領域の疾患だけでなく、眼のアレルギー、鼻のアレルギー、皮膚のアレルギーにも対応可能です。またリウマチ科を標榜している専門医である内科開業医の多くは、リウマチに代表される膠原病の他に、整形外科など運動器関連の諸疾患についても対応可能であることが多いです。また、未知の病態について効力を発揮しやすいのが漢方や鍼灸などの東洋医学であるといえるでしょう。例えば内科医であっても、漢方専門医であれば、他の内科疾患と同時に婦人科疾患に対応することも可能です。
 

ただし、私は新型コロナワクチン後遺症患者の診療に適するのは、専門的医療機関における総合診療であるとは考えていません。現状の「総合」とは、寄せ集めに過ぎないからです。専門医と言う船頭が多すぎると、その船が山に登ってしまいかねません。これは、医師の責任逃れには好都合な体制であるともいえます。なぜなら、診療における責任の所在が不明確だからです。複数のワクチン接種を推進するのも、証拠隠滅のためには有効であり、責任を逃れるために有効なアプローチといえます。
 

それでは、どうすればよいのでしょうか?私の答えを端的に申し上げれば、「総合」を超えて「統合」を志向することです。なぜならば、新型コロナワクチン後遺症患者の苦しみは、身体的苦痛のみならず、精神的苦痛も計り知れないからです。そのため、メンタルケアについての配慮が必要であるばかりでなく、日常生活ばかりでなく学業や労働に支障をきたしている方に対する国家的支援が不可欠だからです。そこで、文字通り、内科医が主として対応するのであれば、真の意味での心療内科専門医の積極的な登用をはかるべきではないかと考える次第です。