9月23日(水)
水氣道
およそ二カ月の中断を余儀なくされていた水氣道も、新規の稽古場所が加わり、参加者の人心も改まり、「気・血の技」を中心に更なる技の発展を遂げています。
私は武道の中でも合気道に最大の敬意を払っています。
合気道二代目の植芝吉祥丸氏が執筆し、父である開祖の植芝盛平翁が自ら監修した
「合気道」の復刻版が手元にとどきました。
合気道は合気柔術から発展し、究極の日本の武道としての打ち立てられたもののようです。それは本部道場ができるまでの仮住まい(昭和四年頃か)をしていた目白に、講道館の嘉納治五郎師範が来訪した描写からもうかがい知ることができます。嘉納氏は道主の演ずる合気道を一見して、「これこそ自分が理想としていた武道、即ち柔道だ」と言われたというくだりです。
さて、合気道の本部道場の一隅に掲示されていたとされる「合気道練習上の心得」を現代仮名遣いに直し、わかりやすく書き直して紹介いたします。
一、 合気道は一撃よく死命を制するものなので、練習に際しては指導者の教示を守り徒(いたずら)に力を競ってはいけない
二、 合気道は一をもって万に当たる道なので、常に前方のみならず四方八方に対する心掛けで練磨する必要がある
三、 練習は常に愉快に実施する必要がある
四、 指導者の教導はわずかにその一端を教えるのに過ぎず、これの活用の妙は自己の不断の練習により始めて体得できるものである
五、 日々の練習に際しては、まず体の変化から始め、逐次強度を高め、身体に無理が生じないようにする必要がある。そのようにするならば、いかなる老人であっても身体に故障を生じることなく、愉快に練習を続け鍛錬の目的を達することができる
六、 合気道は心身を鍛錬し、至誠の人を作ることを目的とし、また技はことごとく秘伝とすることによって、徒(いたずら)に他人に公開し、あるいは市井の無頼の者が悪用することを避けるようにすべきでる
そこで、水氣道をこの合気道の心得と比較して解説することを試みます。
一、 合気道は「合気道は一撃よく死命を制するもの」であるのに対して、水氣道は、そもそも他者と接触しないので、命に関わることではありません。また水氣道は競技でもないため、相手と力や技を競う必要はありません。それでも、不慮の事故はどこでも起こりえます。そのため水氣道でも「練習に際しては指導者の教示を守」ることは大切です。
二、 合気道は「一をもって万に当たる道」であるのに対して、水氣道は「一をもって水氣と一体の生命を得る道」です。水氣に心身のすべてを委ねる者同士が、誠意をもって学び合い、導き合うことを心がけて稽古する必要があります。それによって「一を知って十を悟る」ことができるようになります。
三、 合気道は「練習は常に愉快に実施する必要がある」、水氣道もこれと同じです。
四、 合気道では、「指導者の教導はわずかにその一端を教えるのに過ぎず、これの活用の妙は自己の不断の練習により始めて体得できるものである」、水氣道もこれと同
じです。水氣道では、このことを特に「水に委ねて、水に学べ」と言っています。
五、 合気道の日々の練習は「まず体の変化から始め、逐次強度を高め、身体に無理が生じないように」します。水氣道もこれと同じです。その結果期待できることは、合気道では「いかなる老人であっても身体に故障を生じることなく、愉快に練習を続け鍛錬の目的を達することができる」とします。水氣道でも同様の目的を持っていて、水氣道を生涯エクササイズと位置付けています。
六、 合気道は「合気道は心身を鍛錬し、至誠の人を作ること」を目的とますが、水氣道もこれと同じです。また、合気道では「技はことごとく秘伝」としますが、これに対して「通常の技はことごとく公開」します。水氣道では悪用されることはないためです。ただし、水氣道でも稽古熱心で、かつ、階級資格と能力とに応じた役割を果たしている稽古者には、より多くの技の伝達が可能となります。
「道場を開けば、道場主はどうしても経営その他の事務や雑事に追われて武道に専念することができなくなり、その実力はぐんと低下するものである」というのが、道主日頃の持論であったそうです。私自身も、新型コロナ禍にあって、そのことを強く感じていました。ですから、連休等を活かして、郷里の水戸で、一人自主稽古に励むよう心がけています。
それは、水氣道が広く社会に知られて受け入れられるようになるまでは、私自身が、自分の実力を落とさず、さらに磨きをかけ続けていかなければならないと考えるからなのです。
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