骨折リスクの予測法【3】

その3)骨折リスク評価(FRAX)法の限界と水氣道

 

 

骨折リスク評価法(FRAX)は、世界保健機関(WHO)が開発し、日本骨粗鬆症学会のガイドラインで推奨されているからといって、鵜呑みにしないのが、高円寺南診療所の立場です。

 

その理由は自体の計算ツールとしてのアルゴリズム自体に問題があります。

 

 

第一に、その最も根源的な課題は、集団調査による骨折リスク比率を,個別性の強い個人の骨折リスクに一律に当てはめようとするところにあります。

 

第二に,FRAXの検査は12の因子のみで構成されていますが、これらの因子だけ向後10年間の正確な骨折リスク判定が可能なのかという疑問も残ります。

 

第三に、12因子の解析方法の詳細については非公開であるいう不透明さも加わり,疑問が増幅されます。

 

 

以上の課題は「FRAXはその限界を見据えた上で利用していく必要がある1)」とされる所以です。

 

要するに、12因子がよって立つところのアルゴリズムが非開示であるため、FRAXでは取り上げられていない危険因子を考え合わせての解析ができないことが限界点です。

 

 

その他の欠点を列挙してみます。

 

続発性骨粗鬆症の若い人に適していない

 

すべての危険因子(転倒など)が含まれているわけではない

 

2型糖尿病患者では骨折確率が過小評価される

 

10年以内の骨折予測を示すが、期間、治療効果が評価できない

 

大腿骨骨密度を用いる場合とBMIを代入する場合ではリスク評価が異なる

 

 

FRAXは年齢の影響を受けやすいため、80歳以上はほぼ全例で治療開始の対象となってしまいます。

 

よって、80歳以上に対して治療開始カットオフ値を15%とすることには問題があるということで、FRAX使用は40歳以上75歳未満に限定されます。

 

 

高円寺南診療所の立場に最も近い細井博士の見解について紹介します。

 

公益財団法人骨粗鬆症財団理事の細井孝之氏は、FRAXに含まれていない解析因子としては、転倒・転落骨代謝マーカーなどが代表的なところであり、さらに「あくまでも骨量の評価をした上で適用するものであり,スクリーニングの手段としてFRAXを用いるのではないことにも留意すべき2)」としています。

 

 

1)細井孝之:FRAXの臨床現場への応用.FRAXの限界.CLINICAL CALCIUM 2010年10月号,p119-121

 

2)細井孝之:FRAXのわが国での活用.CLINICAL CALCIUM 2012年6月号,p73-79.

 

 

 

高円寺南診療所では、国際的標準である骨折リスク評価法(FRAX)でも評価できない重要な予防因子を強化することを重視しています。

 

DIP法での骨密度計測、腰椎や大腿骨頸部のエックス線検査による評価の他に、血液や尿の検査で骨代謝マーカーを調べています。

 

見落されがちな骨折リスクとしては転倒・転落による骨折のリスクであり、糖尿病続発性骨粗鬆症また、関節リウマチ線維筋痛症の骨折リスクです。

 

 

こうしたリスクのすべてを減少させるために具体的に実践しているのが水氣道なのです。

 

水氣道は、水中での立位での運動が主体ですから、高度な平衡機能(身体バランス、姿勢バランスの崩れからの復元調整力)が要求されます。

 

水氣道の稽古に計画的に参加することによって、こうした能力は確実に向上します。

 

逆に、転倒を恐れるあまり、適切な運動習慣を持てず、不自然で不健康な姿勢での歩行習慣(前傾歩行、杖歩行、つかまり歩行等)が定着してしまうと、かえって転倒のリスクを高めてしまします。

 

水中でも陸上でも、自然で健康的な姿勢で呼吸や歩行パターンを改善しつつ、全人的な健康確保に繋げていくことが水氣道の目的なのです。