日々の臨床9月24日日曜日<感覚系の診察>

神経・精神・運動器の病気

 

<感覚系の診察>

 

感覚系の診察は、専門家ではない一般の皆様には難しいようですが、それにもかかわらず、

 

深い関心をお持ちの皆様方のリクエストに応えて解説を試みさせていただきます。

 

 

さて高円寺南診療所院長の飯嶋正広が、平成22(2010)年に東京大学から授与された博士(医学)は、まさにこの感覚障害に関する研究によるものでした。

 

零細かつ多忙な50歳の開業医が、しかも基礎実験ではなく臨床でチャレンジできる研究手段は限られていました。

 

この間も水氣道は休まずに継続していたので、多くの関係者に驚かれました。

 

しかし、私はこのように答えています。

 

それは、「いろいろな制約があるからこそ、人間は工夫することを学べるのだ」ということです。

 

また「良い着想というものは、案外シンプルな自然観によってもたらされるものだ」

 

ということを経験しました。

 

そして、自分にとって大切なライフワークは、多少の困難に見舞われても中断しない、継続は力なり」ということも実感しています。

 

 

東大医学部から二つの学位、修士(保健学)、博士(医学)をいただくことができた最大の理由は、

 

優れた良き配慮と職員ならびに患者の皆様の存在なしには語れません。

 

 

その後、水気道は国家に登録され水氣道®となり、

 

また、そこから聖楽院構想が生まれ、

 

現在順調に発展し、診療所での医療の限界を補完しています。

 

 

 

《 感覚の種類について 》

 

感覚はまず表在感覚と深部感覚に分類します。

 

表在感覚とは触覚や温・痛覚です。

 

深部感覚とは意識できるより深部の身体感覚です。

 

ここで<意識できる>としたので、お気づきになられるかもしれませんが、

 

感覚には意識することが難しい感覚もあります。

 

 

運動覚、振動覚、位置覚、平衡覚、二点弁別覚が代表的です。

 

といってこれは主に関節に存在する深部感覚です。

 

 

 

《 感覚の初歩的な検査法 》

 

触覚は、ティッシュペーパ、毛筆の筆の部分(知覚筆)などを用いて簡単に検査できます。

 

痛覚は、つまようじ、針(知覚棒の針の部分)などを用いて簡単に検査できます。

 

振動覚は音叉を使い、音叉に与えた振動が減衰する過程で、どこまで振動を感じるかをストップウォッチで計測します。

 

位置覚は、患者さんに目を閉じていただくか、目隠しをして、

 

患者さんの足や指を背屈、底屈させ、どちらに動いたか答えてもらい、正しく言い当てられるかをみます。

 

 

 

《 平衡覚について 》

 

平衡覚はロンベルグ試験といって二段階の検査があります。

 

まず、患者さんに爪先を揃えてまっすぐ立って貰い、体が動揺しないかどうかをみます。

 

次に、目を閉じてもらい、身体の動揺をみます。

 

なお、開眼時にはない動揺が、閉眼にてみられればロンベルグ徴候陽性徴候といいます。

 

ロンベルグ徴候陽性の場合は、末梢神経障害脊髄後索障害前庭神経障害などを疑います。

 

 

なお、マン試験というものもあってこれも二段階の検査です。

 

まず患者さんに爪先を揃えてまっすぐ立ってもらい、体が動揺しないかをみます。

 

ついで、閉眼してこれを行うときに動揺するかどうかを診ます。

 

開眼時には見られない動揺が、閉眼で診られればマン試験陽性です。

 

この試験の方がロンベルグ試験より鋭敏に深部感覚障害を検出することができます。

 

なお開眼・閉眼のいずれも動揺がみられる場合は小脳障害を疑います。

 

しかし、高齢者は目立った障害が無くてもふらつくことがあるので、その解釈は慎重に行うことが求められます。

 

 

ここで、再び水氣道について触れますが、水氣道は他の一般的な運動や健康法とは異なるポイントの一つは、

 

運動能力を向上させるために、上記のような様々な感覚機能をも同時に積極的に訓練していることです。

 

メタボリック症候群の他に、近年ロコモティブ症候群とかフレイル症候群といった運動機能低下に基づく健康寿命の短縮が問題になっていますが、

 

運動機能だけではなく感覚機能を同時に錬磨していくことの必要性が注目されていないことは、とても残念なことだと思います。

 

フィットネス検査は、スポーツジムなどでよりも第一線の医療機関が、

 

しっかりと定期チェックしたうえで健康管理や医療に積極的に活用していくことが望まれます。