診療実践 「私はアレルギー体質なのですが甲状腺もアレルギー病なのですか?」

昨日と本日、二人の方々から関連する質問を受けたので解説します。

 

本日のご質問の主は、花粉症と喘息とアトピー性皮膚炎を合併しています。

これらはアトピー素因といって共通の基盤はⅠ型アレルギーです。

アレルギー体質というのは多くの場合、これを指しています。

アレルギーの病気はアレルギー反応のタイプによって4ないし5つに分類されます。

 

この患者さんは、その他に慢性甲状腺炎<橋本病>の合併があり、

ご兄弟に特発性血小板減少性紫斑病<ITP>、いとこがバセドー病、

母親が甲状腺髄様がんの方がいらっしゃるという家族歴のことで心配されたようです。

慢性甲状腺炎<橋本病>、特発性血小板減少性紫斑病<ITP>、バセドー病はいずれも

Ⅱ型アレルギーです。

Ⅱ型アレルギーの中で、自己抗体による刺激によって細胞の機能亢進をきたすバセドー病などはⅤ型と定義することがあります。

 

甲状腺髄様癌の約2/3はたまたまできた癌(散発性の癌)ですが、約1/3は遺伝性の癌です。

遺伝性の場合は常染色体優性遺伝といって血縁者の半分に同じ癌ができる可能性があります。

ですからアレルギーということより、家族歴に注目することが大切です。

髄様癌の他に褐色細胞腫(副腎の腫瘍)や副甲状腺機能亢進症を合併したり、分厚い唇や細長い体型などの身体の異常を伴ったりすることがあるので医師に相談することが大切です。

 

この方々のように家族関係がしっかりしていると病気の予防や早期診断の上で大いに役立つ情報が得られます。

現代社会では少子化とともに核家族化、おつきあいの希薄化によって大切な家族歴が得にくくなっているのは残念です。

 

それからアレルギーというのは実に様々な病気と深いかかわりがある、ということを覚えておいていただきたいと思います。