7月1日(水)
以前からのお話ですが、患者さんから、「こちらは皮膚科や耳鼻科や眼科もやっているのですか」と尋ねられることがあります。
アレルギー科という専門領域は内科の他に、小児科、皮膚科、耳鼻科、眼科の各領域に及ぶ総合診療科です。内科のアレルギー専門医は喘息の診療を中心に置きますが、狭い意味での内科的診療では喘息の治療成績を挙げることはできません。
わが国における大規模なアンケート調査では、喘息患者の70%近くで鼻炎の合併が報告されています。つまり、喘息患者の3人に2人以上が、同時に鼻炎に罹っているということです。また、花粉症時期に喘息が増悪する例も多く、鼻炎のコントロールは重要です。
抗アレルギー薬に加え、吸入ステロイド剤(アラミスト®など)を用いますが、当クリニックでは有効率80%以上に達します。
残りの20%の例では、杉並国際クリニック独自の方法があります。1)吸入、2)30秒間の息こらえ、3)鼻呼吸(唇は閉鎖しておく)の3ステップを毎晩入浴後に試みていただくだけで、アレルギー性鼻炎のみならずほとんどの症例で喘息症状が改善しています。
水氣道®や聖楽院でのボイトレ・歌唱レッスンを続けてきた方は息こらえを45秒、60秒と段階的に延長していきます。安全性の確保のために、パルスオキシメータ―(動脈血中酸素飽和濃度測定器)でモニターしながら行います。
その際、97%以上を絶対安全圏とし、95%以下で息こらえを中止していただいております。
息こらえをすると、動脈血中の酸素濃度が直ちに低下するだろうと予測している人がほとんどですが、実際には、肺内の酸素分圧が上昇し、その分、血中により多くの酸素が取り込まれるため、酸素濃度が1~2%程度増加することがありあります。
その場合でも、息こらえをさらに続けると、当然のことながら低下してきます。
さて、話を花粉症に戻しますが、花粉症は季節性アレルギー性鼻炎に分類されます。
種々のアレルゲンが同定されていますが、日本では主として、春のスギ、ヒノキ、ハンノキ、夏のイネ科、秋のキク科の花粉症による鼻症状や眼症状に悩まされる例が代表的です。とりわけスギ花粉症は今や国民病と称されるほど罹患率の高い疾患として注目されています。
とくに日本のスギ花粉症は欧米の花粉症と比べて花粉アレルゲンの暴露量が比較にならないほど大量であるため、重症度が高い症例が多く治療内容も大きく異なっています。
そこでわが国では、欧米のガイドラインではなく、「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版」および「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」が参考とされています。ただし、通年性アレルギー性鼻炎では、欧米のガイドラインも有用だと思います。
通年性アレルギー性鼻炎とは、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状が、季節を問わずあらわれる疾患です。通年性アレルギー性鼻炎の主な原因(アレルゲン)は、ダニ、真菌(カビ)、昆虫、ペットの毛などが知られています。
鼻の症状だけでなく、目のかゆみや涙目をともなうこともあります。日本人の4人に1人は通年性アレルギー性鼻炎であり、日常生活や国民経済活動に大きな影響を与えています。
花粉症という疾病そのものが生命予後を脅かすものではないとされていますが、喘息を合併する場合には、その答えは当てはまりません。
しかも自然治癒率は低く、治療を中断すると再燃する可能性があります。薬物療法が奏功しない重症例においては舌下免疫療法(SLIT)が推奨されますが、根本療法であるため重症例に至らないうちに治療を導入する考え方もあります。
舌下免疫療法は、スギ花粉舌下液(シダトレン®)に始まり、常温保存可能で保持時間が1分間であるシダキュア舌下錠®も処方可能となりました。またダニアレルギー性鼻炎に対してアシテアダニ舌下錠®、ミティキュアダニ舌下錠®を使用することができます。
なお、スギ花粉舌下液(シダトレン®)による舌下免疫療法を開始するタイミングとしては、スギ花粉のシーズンを十分に過ぎた7月以降が良いと考えます。
<明日へ続く>
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