最新の臨床医学 9月23日(日)心療内科についてのQ&A

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

 

それは日本心療内科学会のHPです

 

心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

ここでのQ&Aは、想定した事例です。

 

Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。

 

※「質問」をクリックするとが表示されます。

 

と書かれています。

 

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。

 

そこで、「質問」「答え」の後に、<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。

 

 

「質問6」

48歳の男性です。

手のひらや足の裏が熱くなり、夜も眠れないときがありますが、人間ドックの結果では異常がないとのことです。

 

何が原因でしょうか? 

 

治療法や改善方法があったら教えてほしいと訴えています。

 

「答え」

男性更年期障害もしくはFSSと考えられます。

 

女性の更年期 (menopausal transition) は生殖期から非生殖期への移行時期であり、年齢では45歳~55歳ごろに該当します1。

 

この時期には発汗やほてり、性機能障害、抑うつ気分、睡眠障害などの身体的・心理的な症状が出現することが知られています。

 

女性ホルモンの補充療法はほてりを中心とした血管運動神経性の症状に有効であることが報告されています。

 

一方、男性ではテストステロンの分泌低下が起こり女性の更年期に該当する時期(andropause)があると言われていますが、性機能障害や認知機能低下などの症状は老化に伴うものと鑑別が難しく、現時点で男性更年期を独立した疾患概念とするのは未だ少数意見と考えられています2。

 

また、近年は機能性身体症候群 (functional somatic syndromes:FSS) と呼ばれる疾患概念が提唱されていて、FSSは“適切な診察や検査を行っても一般的な医学的疾患によって説明できない症状”と定義されています3。

 

他覚的な異常を伴わない機能性疾患では心理社会的因子の影響を受けることも多いため、身体疾患と精神疾患の境界が不明瞭ですが、FSSは心因よりも身体愁訴を基にした概念といえます。

 

FSSでは不安や抑うつとの関連が指摘されています。

 

FSSの症状によるQOLの低下や、長期にわたる症状の継続で医師-患者、家族-患者間の軋轢が生じることなどを通し、不安や抑うつを生じやすくなります。

 

一方で不安や抑うつの存在は、疼痛などの身体症状を増幅して感じさせます。

 

ご質問の方のように身体医学からのアプローチが難しいケースでも、心療内科では全身倦怠感などの身体症状、抑うつ・不安などの精神症状を手掛かりにして患者を評価していくことができます。

 

睡眠障害には睡眠導入薬、自律神経失調症状には抗不安薬、随伴する抑うつ症状には抗うつ薬の投与が行われますが、男性更年期症状=自律神経失調症(身体表現性障害)=不定愁訴症候群もしくはFSS=セルフコントロールが可能なストレス病ととらえ、あまり症状にこだわりすぎないようにすることが重要です。

 

(前川 道隆、芦原 睦)

 

<参考文献>

1.更年期障害.婦人科疾患の診断・治療・管理.日産婦誌 2009; 61: 283-242.

 

2.N Samaras, E Frangos, A Foster, PO Lang, D Samaras. Andropause: A review of the definition and treatment. European Geriatric Medicine 2012; 3:368-73.

 

3.神原 憲治、福永 幹彦.FSSの病態.日本臨床2009; 67(9): 1669-1675.

 

4.宮岡 等 編、「身体表現性障害」、こころの科学.日本評論社、2013年.

 

5.芦原 睦.心療内科がわかる本.PHP研究所、2010年.

 

 

<高円寺南診療所の見解> 

身体症状症、内臓型冷え性

 

「手のひらや足うらが火照って眠れない」のは内臓型冷え性を疑います。

 

この症例は、ひょっとすると名古屋在住のさる知的専門職に従事されている方かもしれません。

 

東京新聞のコラムで高円寺南診療所を受診され、通院の都合上、名古屋の中部労災病院の芦原睦先生に紹介させていただいたケースが想起されました。

 

その方は、精力的に仕事をこなす方でしたが、<冷え性>の存在を認めるには至らなかったことを思い出します。

 

身体を冷やすライフスタイルであるにもかかわらず、ほてりのためにますます冷やしたがるので対応に苦慮した記憶があります。

 

 

内臓型冷え性の症状の特徴:

 

1)手足の先が火照りやすいこと

 

2)おなかが冷えていることが多いが自覚がないこと

 

そのため3)冷え性であること自体に気が付かないこと。

 

お腹が本格的に冷えてくると、下痢や便秘になりやすいです。腸管は人体で最大の免疫機関でもあるので、免疫力が低下し、風邪を引きやすくなります。

 

その他、疲れが抜けず、顔色も赤黒いことが多いですが、青白くはないので、周囲の人々も体調不良に気づきにくいことがあります。

 

睡眠の質が低下し、その不眠ストレスを飲食によって解決しようとする傾向があります。

 

習慣的飲酒者や過食発作を伴うこともあります。その結果、肥満を伴うか、外見では目立たなくても『隠れ肥満』といって内臓脂肪が蓄積していきます。

 

つまり、冷え性に気が付かない間は、痩せにくいのが問題です。

 

 

内臓型冷え性のセルフチェック法:

冷えの自覚症状がない方の自覚を促すことは簡単です。

 

まずはご自分の掌(てのひら)でおなかを触れてみましょう。

 

すると、お腹の肌が驚くほど冷たいことに気づくことがあります。

 

また、お臍(へそ)の周囲はそれほど冷えていなくても、両脇腹が極端に冷えていると、温度差に気づくことができます。

 

それでも冷えを感じない方は、御自分の掌が暖かく感じられるかを確認してみましょう。

 

掌に触れたお腹が、しっかり暖かく感じられるようでしたら、内臓型冷え性か、もしくはその予備軍である可能性があります。

 

 

内臓型冷え性の原因:

1)クーラーや冷たいものを摂ることにより、腸など内臓を冷やすこと。そのため夏に起こりやすいです。最近では、秋口になって気温低下に気づかずに発症する例も増えています。

 

2)持続的なストレスが原因となり、また、朝寝坊や二度寝の習慣があると、交感神経の働きが疲弊して次第に弱まってくるために、手足の血管を収縮力が弱く、むしろ拡張傾向にあるため血液が鬱滞(うったい)します。

 

3)朝食抜きの生活習慣があると内臓の副交感神経の働きも不調となるために血液を身体の中央(腹部)に集められなくなります。

 

その結果、血液がますます足にたまり、滞るため、熱を帯び(血熱)て手足が火照るという結果をもたらします。

 

 

内臓型冷え性の対策:

身体の内側と外側の両方から温めましょう。

 

内蔵型冷え性の方に多いライフスタイルは、朝食抜きのシャワー党です。

 

浴槽(湯船)に浸かりながら、温かいお茶などの飲み物を飲むと、発汗しやすくなります。発汗するということは、収縮していた体表の血管が拡張することを意味します。

 

ついでに、そこで軽くストレッチ体操を加えると、内臓の冷えは解消し易くなります。

 

朝食ではしっかりと蛋白質を摂取すると、熱を産生し易くなります。食事により熱の産生を促す方法は、全身のバランスの良い体温分布を維持し易くします。

 

こうした方には、定期的に水氣道®に参加することをお勧めいたします。

 

生活リズムや食生活の見直しによる養生をはじめることが急務ですが、適度な鍛錬も必要です。

 

水氣道はおよそ30℃の水中で行う有酸素運動なので、冷えに気づかない熱がりの方でも快適に運動を続けることができます。

 

また、水圧を受けて行う運動なので下半身から腹部への血液の環流を促進します。

 

しっかりとした姿勢で、きちんとした呼吸法とともに水氣道の形にしたがって行えば、体表ばかりでなく、内臓マッサージにもなるので、胃腸の調子が良くなり、夜も良く眠れるようになるので根本的な解決になることが強みです。