ムッシュGPTと学ぶOpenAIの世界 ⑧

 

前回はこちら

 


糖尿病に限らず一般の患者さんにおいて時折観察される傾向の一つとして、期待している治療法については、メリットの情報のみに関心が向きやすく、デメリットの情報については無視しがちであるということです。

 

これとは逆に、不審を抱いている治療法については、メリットの情報については耳に入りにくく、これとは逆に、デメリットの情報ばかりを集めようとする傾向があるように思われます。

 

いずれの場合にも、メリットとデメリットとの両方の情報を集めて、自分自身の諸条件に照らし合わせて冷静かつ客観的に比較衡量することが大切だと考えます。


私の個人的な印象に過ぎませんが、日本人は、自分の耳に心地よい情報に飛びつきやすく、不快あるいは不本意な情報には耳を傾けない傾向があるような気がしています。これは、国際社会において、日本国への信頼や日本人の能力や信用に対する評価を著しく低下させる要因になっているのではないか、と危惧しています。


今回は、ChatGPTの特性について検討を加えることをテーマとする月曜日シリーズとして、これらの課題(和文質問と英文質問に対する回答内容の違い、質問の仕方の工夫)を検討してみます。


まず、大多数の読者のために、Aさん(米国人)の質問の和訳を再掲します。

ムッシュGPTの英文回答の後にも、和訳を掲載します。

 


Aさんの質問(日本語訳)

私は糖尿病患者です。主治医から適切な治療を受けており、セルフケアを怠らなければコントロールは良好です。しかし、私は食欲旺盛で、しばしば血糖値を大きく上昇させてしまいます。そこで、食欲を減退させる注射タイプの糖尿病治療薬があると聞き、興味を持ちました。その注射薬の利点と欠点を教えてください。

 

Aさんの質問(英文オリジナル)
I am a diabetic patient. I am receiving proper treatment from my doctor and am in good control as long as I do not neglect self-care. However, I have a voracious appetite, which often causes my blood glucose levels to rise significantly. So I was interested to hear that there is an injectable diabetes drug that decreases appetite. What are the advantages and disadvantages of that injectable drug?

 


ChatGPT
It's possible that you're referring to medications known as GLP-1 receptor agonists, which are a type of injectable medication used in the treatment of type 2 diabetes. While these medications primarily focus on improving blood sugar control, they often have secondary effects on appetite and weight.

 

Advantages:
1. Blood Sugar Control: GLP-1 receptor agonists can help lower blood sugar levels by increasing insulin secretion and reducing the production of glucagon, a hormone that raises blood sugar.


2. Weight Loss: Many people using GLP-1 receptor agonists experience weight loss as a side effect. This can be particularly beneficial for individuals with type 2 diabetes who are overweight, as weight loss can improve insulin sensitivity.


3. Appetite Reduction: GLP-1 receptor agonists can lead to a reduction in appetite, which can help control overeating and contribute to weight loss.


4. Cardiovascular Benefits: Some GLP-1 receptor agonists have demonstrated cardiovascular benefits, including a reduction in the risk of major cardiovascular events.


Disadvantages:
1. Injectable Formulation: GLP-1 receptor agonists are typically administered via injection, either subcutaneously or intramuscularly. Some people may find this inconvenient or uncomfortable.


2. Gastrointestinal Side Effects: Common side effects include nausea, vomiting, and diarrhea. These symptoms may improve over time, but they can be challenging for some individuals.


3. Cost: Injectable medications can be more expensive than oral medications, and insurance coverage may vary.


4. Limited Long-term Data: While these drugs have shown efficacy in improving blood sugar control and providing cardiovascular benefits in the short term, there is still limited long-term data available on their safety and effectiveness.


5. Hypoglycemia: While GLP-1 receptor agonists themselves do not typically cause hypoglycemia (low blood sugar), they are often used in conjunction with other diabetes medications that can. This can be a consideration when managing multiple medications.


It's crucial to discuss your specific situation and preferences with your healthcare provider. They can provide personalized advice based on your medical history, current health status, and treatment goals. Additionally, they can help you weigh the potential benefits and drawbacks of any medication in the context of your overall diabetes management plan.

 

チャットGPT
2型糖尿病の治療に使われる注射薬の一種であるGLP-1受容体作動薬のことを指している可能性があります。GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の治療に使用される注射薬の一種です。これらの薬は主に血糖コントロールを改善することに重点を置いていますが、食欲や体重に対する二次的な作用があることも少なくありません。

 

利点
1.血糖コントロール:
GLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を増加させ、血糖を上昇させるホルモンであるグルカゴンの産生を低下させることにより、血糖値を下げるのに役立ちます。


2.体重減少:
GLP-1受容体作動薬を使用している人の多くは、副作用として体重減少を経験しています。体重減少はインスリン感受性を改善するため、体重過多の2型糖尿病患者にとって特に有益です。


3.食欲減退:
GLP-1受容体作動薬は食欲を減退させるため、過食を抑制し、体重減少に貢献します。


4.心血管への有益性:
一部のGLP-1受容体作動薬では、主要な心血管イベントのリスク低下など、心血管への有益性が示されています。


欠点
1.注射剤:
GLP-1受容体作動薬は通常、皮下または筋肉内注射により投与される。人によっては、これを不便または不快と感じるかもしれません。


2.胃腸の副作用:
一般的な副作用には、吐き気、嘔吐、下痢などがある。これらの症状は時間の経過とともに改善することもあるが、人によっては困難な場合もあります。


3.費用:
注射薬は内服薬よりも高額になることがあり、保険の適用範囲も様々です。


4.限られた長期データ:
これらの薬剤は短期的には血糖コントロールの改善や心血管系への有効性が示されているが、安全性と有効性に関する長期的なデータはまだ限られています。


5.低血糖:
GLP-1受容体作動薬自体は通常、低血糖(低血糖)を引き起こしませんが、低血糖を引き起こす可能性のある他の糖尿病治療薬と併用されることが多いです。
複数の薬剤を管理する場合は、この点を考慮する必要があります。

 

あなたの特定の状況や嗜好について医療従事者と話し合うことは非常に重要です。医療従事者は、あなたの病歴、現在の健康状態、治療目標に基づいて、個別のアドバイスを提供することができます。さらに、糖尿病の全体的な管理計画との関連で、それぞれの薬剤にはどのような潜在的な利点と欠点を比較検討することもできます。

 

 

ドクター飯嶋のコメント:
米国人のAさんの質問は、日本人のBさんの質問より、質問の内容が、より個人的で、限定的であるため、回答の守備範囲を絞り込みやすくなります。その分だけ、的の当たった質問者にとって有益な回答情報が得られやすくなります。


ムッシュGPTは、不要な主語をも敢えて省略して「2型糖尿病の治療に使われる注射薬の一種であるGLP-1受容体作動薬のことを指している可能性があります。」と見事に切り込んでいます。ご名答です。Aさんが質問したかった注射薬とは、まさにGLP-1受容体作動薬だったのです。

 

このように、OpenAIと上手に付き合っていくために、ユーザーとして求められるのは、質問の仕方を工夫することです。

 

質問者は、独りよがりな漠然とした質問をしても、ある程度の回答を得ることができます。ただし、そのような場合の回答の質は、質問のレベルによって規定されてしまうことを知っておくこと必要があるでしょう。


つまり、質問者の質問の質によって、回答の質が決定されるということなのですから、改めて「質問」という文字はよくできているものと感心します。


もっとも、このばあいの「質問」の「質」とは「問いただす」という意味なのではありますが、問いただすことによって、得たい情報の精度が高まり、文字通り、質の向上に繋がる訳です。


ですから、ChatGPTを意識的に活用することによって、質問の仕方を向上させるスキルが身につくことが期待できます。初回の質問の回答に満足がいかなかったり、見当違いの回答内容だったり、その他、期待していた内容でない場合には、質問の仕方を工夫して、改めて質問してみることが勧められます。


このような、反復操作の課程で、より有益なフィードバックが得られるのではないでしょうか?


また、Aさんからしっかり学んでおきたいことは、質問の際に、一面的な価値判断ではなく、相対立する両面(長所と短所、メリットとデメリット、など)の情報を得るための条件設定をしていることです。


GLP-1受容体作動薬は、確かに有益な薬剤ですが、望ましくないポイントや注意点、その他、運用面すなわち、制度上の限界などについてもムッシュGPTは回答してくれています。


私自身も、OpenAIの活用に当たっては、このような様々な知的スキルを身に着けていきたいと考えているところです。