4月18日(土)新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に効く漢方No7

<土曜日特集:統合医学(心身医学・漢方医学)カンファランス>

 

先週に引き続き、新型コロナウイルス肺炎の漢方治療について検討を続けていきます。

 

さて中国当局が推奨している「清肺排毒湯」は以下の21の薬味から構成されています。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、紫菀 、冬花 、射干 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮 、藿香

 

これらのうち、藿香、射干、紫菀、冬花の4種はわが国の保険調剤では扱われていませんししたがって、以下に再掲する17種の構成生薬について検討を加えてみました。

 

ただし、上記の17種の生薬のうちで、日本での表記と異なる生薬があります。それらを日本での表記に改めると以下のようになります。

 

白術=白朮、生石膏 (先煎)=石膏、姜半夏=半夏

これらの構成生薬の配合を分析してみると、解表剤、和解剤、補気剤、理気剤、利水剤などの効能を併せ持つ処方であると考えられます。

 

これらのうち、今回は、エネルギーを補充して活性化させる(補気作用)ことによって病邪による消耗から守る働きのある補気剤、および滞っていた気を再び活発に巡らせること(理気作用)により効力を発揮する理気剤について解説します。

 

 

杉並国際クリニックの分析

「清肺排毒湯」の構成生薬には、豊富な気剤が含まれています。

気剤には不足した「気=エネルギ」を補う補気剤と、流れが滞って働かなくなった

「気」の流れを整える理気剤があります。

 

まず、「清肺排毒湯」の構成生薬の中から、以下のような補気剤としての組み合わせを抽出することができます。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮
啓脾湯加減(そう朮、茯苓、山薬、沢瀉、陳皮、炙甘草)

 

 

また「清肺排毒湯」の構成生薬には、以下のような理気剤としての組み合わせを抽出することができます。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮
二陳湯減(半夏、茯苓、陳皮、生姜)

 

以上を元に、わが国で保険処方が可能なエキス製剤を挙げてみます。

 

補気剤 気虚を治す方剤です。

気虚とは一般に機能低下、エネルギー不足です。常用される生薬は、人参、黄耆、炙甘草などです。本来の啓脾湯には人参が含まれています。

 

啓脾湯加減(そう朮、茯苓、山薬、沢瀉、陳皮、炙甘草)として
128啓脾湯(そう朮、茯苓、山薬、沢瀉、陳皮、炙甘草
      +人参、蓮肉、山査子)
      適応:胃腸虚弱、慢性胃腸炎、消化不良、下痢
      痩せて、顔色が悪く、食欲がなく、下痢傾向のある方に処方すると元気になります。

理気剤 気の巡りを改善して気滞(エネルギーが滞り、体が重く感じ、気力も低下する状態)を治す方剤です。

 

 

二陳湯減(半夏、茯苓、陳皮、生姜)として
81二陳湯(半夏、茯苓、陳皮、生姜
      +甘草)
      適応:悪心・嘔吐
      厳密には適応外ですが、「胃のもたれ」に良く効きます。