糖尿病の診断と治療の原則
糖尿病の診断は、内科医にとっては容易です。しかし、治療開始に至らない、あるいは治療を中断する症例が就労世代に多いため、高齢に至ってからはじめて糖尿病の本格的な継続的治療を始めるケースも少なくありません。医療とつながっている重要性を啓発する必要があります。
糖尿病の治療の原則は、病態や治療の目的に応じた治療計画をたてることです。
糖尿病治療の目的は、糖尿病特有の合併症(網膜症、腎症、神経障害)と動脈硬化性疾患の発症・進展を阻止して、健常人と変わらない生活の質(QOL)を確保することにあります。
そのためには、血糖はもとより、血圧および血清脂質も適切にコントロールすることが重要です。血糖管理目標を定めるにあたって、血糖コントロールの目標値は、HbA1c(%)を指標にすると、
<6.0:血糖正常化を目指す際の目標、
<7.0:合併症予防のための目標、
<8.0:治療強化が困難な際の目標、
インスリン依存状態:
初診段階でインスリン依存状態にあるときは糖尿病専門医へ紹介することが原則とされます。
インスリン非依存状態:
病歴をよく聞き、インスリンの分泌状態やインスリン抵抗性などを臨床的に判断し、個々の患者にあわせた治療を行います。
1)食事・運動療法
食事療法は糖尿病治療の基本であり、成因、病態の如何に関わらず、すべての患者が行うべき治療です。
そのためには、
①1日の総エネルギー摂取量は患者の標準体重をもとに、生活活動強度を考慮して算出することから始めます。
②炭水化物、蛋白質、脂質のバランスを取ります。
③適量のビタミン、ミネラルを摂取できるようにします。
運動療法では、歩行数を毎日記録することによって意識化する習慣を形成することに加え、レジスタンス運動も実施すると効果的です。水氣道®は、水の抵抗を利用することによってレジスタンス運動の継続を容易にします。
食事療法と運動療法を2~3か月続けても、なお目標が達成できないときは、薬物療法(経口血糖降下薬またはインスリン製剤)を用います。
2)薬物療法
経口血糖降下薬を分類してみます。
①インスリン分泌を促進することなく血糖を改善するもの:
・ビグアナイド(BG)類、
・チアゾリジン誘導体、
・α‐グルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)
・SGLT2阻害薬
②血糖依存性のインスリン分泌を増幅するもの:
・インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)、
③血糖非依存性にインスリン分泌を促進するもの:
・スルフォニル尿素(SU)類、
・即効性インスリン分泌促進薬
どのような型の糖尿病であれ、適応のあるインスリン製剤、経口血糖降下薬、インクレチン関連薬を単剤から、段階的に組み合わせて血糖管理目標を目指す必要があります。
目標を達成できないとき、低血糖、体重増加、検査成績異常を認めるときは、糖尿病専門医を紹介することになります。
3) 低血糖
低血糖には特異的でない一般的な症状を伴うため、発見が遅れることがあります。
空腹感、脱力感や頭痛などで始まることが多いからです。これらは、低血糖でなくともしばしば経験する症状だからです。
発汗、動悸、頻脈、手の震えなどは交感神経系の緊張症状です。
これらの低血糖症状は、血糖値が低血糖(≦70㎎/dL)でなくても生じることがあります。
低血糖を来しうる薬物で治療されている患者では、普段と受け答えが違う場合には低血糖も疑っておく必要があります。症状が低血糖によるものか否かの確認には血糖自己測定(SMBG)が有用です。
上記の糖尿病治療薬の中で、単独で用いても低血糖を来すことがあるのは、③の
スルフォニル尿素(SU)類、即効性インスリン分泌促進薬、です。
また、①あるいは②と併用すると低血糖を助長することがあります。
これに対して、①と②を単独で、あるいは①と②を併用した場合、一般には低血糖(血糖値≦70㎎/dL)を来すことはありません。ただし、低血糖症状を来すことはあります。
杉並国際クリニックからのコメント
杉並国際クリニックにおける糖尿病治療の指針は、何よりも安全性に配慮するということにあります。糖尿病においては、低血糖を来さないような血糖管理を目標としています。そのためには、1)食事・運動療法を積極的に推進し、3)低血糖を来しにくい薬剤を選択し、インスリン依存状態に陥らないような取り組みをしています。
とくに水氣道のような運動療法を積極的に推進すし、薬剤の減量をはかるうえでは、低血糖の防止はとても重要です。以前は、スルフォニル尿素(SU)類は古くからある薬剤で安価でもあるため、多数処方してきましたが、インスリンの基礎分泌・追加分泌をともに高めるため低血糖に十分注意すべき薬剤です。最近では、低血糖を来しにくい薬剤を処方することが多くなってきました。とくに、肥満例には、低血糖を起こしにくく、しかも血糖改善に加えて体重減少も期待できるSGLT2阻害薬を処方する頻度が増えてきました。
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