医学の根本は内科学にありますが、凄まじい進歩に、本日も驚くばかりでした。
これに対して外科も不滅であるとは思いますが、かつて外科医が担当していた領域を、内科医がどんどん開拓して素晴らしい成果を挙げています。
その代表がカテーテルや腹腔鏡による手術です。
内科の守備範囲は、とどまることなく拡張し、膨張を続けています。
それだけに最先端の医学を現場の医療に活かすことは、やはり簡単なことではないです。
しかし、本日も来週からの診療に直接役立つ大きな収穫が得られました。
先月、例年通り2週間の中欧研修を貫徹しましたが、そこで大いに集中力が鍛えられた模様です。
日本内科学会は、すべて日本語によるレクチャーと発表なので、連動しないと考えていましたが、そうではないようです。
もっとも、医学の世界、とりわけもっとも理屈っぽい内科理論は、日常の日本語とは言い難く、一種の外国語であるといっても良いかもしれません。日本語で議論する方がややこしく感じることがあるくらいです。
以下は、講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の感想や思い付きは朱書きとしました。
今回は、最後の教育講演11~13を除いて、一通り復習してコメントを加えました。
教育講演11~13を含め、記録が不十分なレクチャーは、今後、逐次、各領域の「最新の臨床医学」で報告と解説を試みたいと思います。
第2 日 ―平成30 年4 月14 日(土)
― 講演会場(京都市勧業館(みやこめっせ)第3 展示場)
シンポジウム2.9 時00 分~11 時00 分(120 分) 循環器領域におけるCatheter based therapyの現状 ………司会 榊原記念病院 住吉 徹哉・大阪府済生会富田林病院/近畿大学 宮崎 俊一
1.冠動脈疾患に対するカテーテル治療の現状と今後… …………東邦大学 中村 正人
冠動脈疾患に対して、心臓外科的な血行再建ありきの時代が終焉し、個別化時代へと突入しました。
循環器内科では経皮的冠動脈形成術(PTCA)、なかでも薬剤溶出性ステント(DES)の登場により、冠動脈インターベンション(PCI)のアキレス腱とも称された再狭窄の問題解決に向けて大きく前進しました。
学会2日目の最初のレクチャーは、中村先生の動画のインパクトで、私の脳は完全に覚醒状態になりました。
しかし、新しい技術の弱点は短期的な成績を向上させても、それが必ずしも長期成績を約束するものではないことです。
医療コストも問題です。つまり、長期予後や患者の幸福度についてどれだけ貢献できるか、ということの検討が必要だと思います。
2.大動脈弁狭窄症に対するTAVIの現状と課題… …………榊原記念病院 桃原 哲也
経カテーテル大動脈弁植込術(TAVI)は、術後30日死亡率が約1.5%であり、日本での成績は世界のトップクラスです。2013年から保険償還されています。
しかし、これは完璧な治療ではなく、植込み特有の合併症やアクセスサイトの血管損傷等が課題です。
低侵襲であり、数日で退院できるというメリットがあるが、超高齢社会にあって認知症やフレイルが進行しているケースでの対応など、適切な適応とコスト面についてどのように考えるか等の課題が残っています。
桃原先生は、最新技術に対してメリットとデメリットや限界、課題についても考察されていました。
最新医療技術に対して望ましい公平な態度だと思いました。
高円寺南診療所の役割は、最先端の医療技術の進歩を見守りつつ、可能な限り、そのような技術の恩恵に頼らなくてよいような日常の健康維持増進を図るための工夫と努力を継続することだと考えました。
「医療が進歩しているのだから、予防にこだわらずに、好き勝手な生活を送っていても何とかなる」と考える人が増えていくとしたら、間違いなく日本の医療は崩壊するでしょう。
3.僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療… … 国立循環器病研究センター 安田 聡
僧房弁閉鎖不全(MR)は、心臓弁膜症で最も頻度の高い疾患で、日本での患者数は80~100万人と推定されます。
症候性重症MRには手術が推奨されますが、手術リスクが高い等の理由では手術は行われていません。近年では、クリップによる経皮的カテーテル修復術(TMVRe)が開発され、より多くの患者で治療が可能となり、心不全の新たな治療選択として注目されています。
一方、クリップによるTMVRe治療では、弁輪形成術を行えないため、MR再発の要因ともされています。僧房弁の弁輪拡大、弁尖を牽引する腱索や左心室乳頭筋などの損傷がある場合など、適応とはならないケースもあります。
僧房弁閉鎖不全(MR)が最も頻度の高い弁膜症であることから、改めて心臓超音波検査の活用の重要性を考えました。
高円寺南診療所の超音波診断装置もカラードプラー法が使えるので、僧房弁輪の計測のみならず、僧房弁閉鎖不全に特有の逆流の評価など、これまで以上に丁寧に観察することができます。
それによって、より早い段階で、僧房弁機能や無症候性心不全(ステージA・B)の診断をすることにより、これまで以上に早期介入をはかりたいと思います。
4.New Deviceによる心房細動治療の進歩………………………京都大学 静田 聡 教育講演8.11 時00 分~11 時20 分(20 分) 座長 富山大学 戸邉 一之
肺静脈を標的とした心房細動に対する最初のカテーテル・アブレーション(フランス、1998)以来、心房細動発生の原因のほとんどが肺静脈内の袖状心筋からの異所性興奮であることが明らかになってきました。
その後、肺静脈と左心房の接合部を全周性に焼却することによる肺静脈隔離術が心房細動根治のための標準術式になりました。
静田先生は、最近の技術革新について興味深いレクチャーをしてくれました。
心房細動に対して、高円寺南診療所としても新たな取り組みが必要となってきました。
より安全で確実な心房細動根治術を実施できる高度医療機関を都内に複数見出し、必要に応じて適切な時期に紹介できるシステムを構築する準備に取り掛かりたいと思います。
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