診察室から〔番外編〕 ウィーンの禁煙事情

ウィーンの街は、美しい街並みで有名ですが、ドナウの流れも空気もきれいです。

 

 

私の定宿であるAustria Trend Hotel Ananasの入り口では、かつては多数の宿泊客が常時紫煙をくゆらせているので咳き込むほどでしたが、最近ではかつてに比べて人数が減り、快適になりました。私の部屋のテレビスクリーンをオンにすると、真っ先に表示されるのが禁煙についてです。

 

それから、地下鉄の駅の構内での禁煙の掲示も目につきます。

 

診察室では、初診の患者の皆様にも、喫煙者には禁煙をお勧めしていますが、外国での禁煙のトレンドについても、〔番外編〕として、ご紹介しておきましょう。

 

ウィーンの高級ホテルは若干プライドが高いためか、原文のニュアンスでは多少厳しい表現のような印象を受けましたが、日本語に馴染むように、なるべく自然な表現に訳してみました。

 

 

#1.ホテルの例

 

Sehr geehrter Gast,

 

Wir möchten Sie darauf hinweisen, das Sie ein Nichtraucherzimmer bewohnen.

 

Alle Zimmer unserer Hauses sind Nichtrauchzimmer.

 

Sollten Sie dennoch in Ihren Zimmer rauchen,sind wir gezwungen,

 

für eine Spezielreinungr eine spezielreinung 50 EUR in Rechnung zu stellen.

 

Durch Zigarettenrauchen verursachte Aktivierndes Brandmelders wird Ihnen der

 

Feuerwehreinsatz zusätzlich verrechnet. Dieser beläuft sich

 

in der Regel ab 350,00 EUR.

 

 

お客様各位

 

お客様がご利用いただいているのは禁煙の客室でございます。

 

私どものホテルは全室禁煙となっておりますのでご注意いただきたく存じます。

 

それでもあえてお客様の室内にて喫煙される場合は、

 

特別クリーニング代としてお客様に50ユーロをお申し受けます。

 

喫煙されると火災警報が作動し、防火体制手数料が加算されることになります。

 

通常では350ユーロになります。

 

 

コメント:ホテルならではの慇懃な表現です。

 

法的規制について触れることなく、これはまさにホテルの掟です。

 

船や飛行機が独立の行政組織のように機能することもありますが、

 

ホテルにも独自のルールがあって、

 

宿泊客といえどもそのルールには従う義務がある、ということです。

 

 

 

#2.地下鉄のホームの掲示板の例

 

Rauchen Kann Ihr Geldbörsel belasten.

 

Rauchen im Bereich der U-Bahn kann Sie 50 € kosten.

 

Weggeworfene Zigaretten können in Miatkübeln 

 

und dem Gleiskörper Brände verursachen.

 

Das gesetztliche Rauchverbot in allen Fahrzeugen und U-Bahnstationen

 

Ist daher unbedingt zu befolgen!

 

Die Stadt gehört Dir.

 

 

Wiener Linien

 

www.wienerlinien.at

 

 

喫煙するとあなたの財布に負担が掛ります

 

地下鉄の管内で喫煙すると50ユーロが課されます。

 

投げ捨てられたタバコがゴミ箱に集められることがあり、

その吸い殻が原因となって火事を引き起こすことがあります。

 

喫煙禁止法により、すべての車両および地下鉄構内では

これを厳守することが義務付けられています。

 

街はあなたのものです。

 

ウィーン交通局

 

 

コメント:いかがでしょうか。私は喫煙者ではないですが、ウィーン交通局の掲示文の方が好ましく感じられました。

 

日本で良くありがちな、当局が立法規制に従わなければならないことを盾に取って振りかざしているわけではありません。

 

このメッセージを逆にたどれば、こうなります。

 

 

あなたが愛する街なのですよ。

 

⇒その街に火事を起こしたくはないですよね。

 

⇒あなたの財産も減りますよ。

 

日頃、<喫煙者には愛を>と呼びかけている私は、

 

ウィーンの地下鉄が益々大好きになりました。

 

 

まとめ:ウィーンの禁煙の掲示を見ていて気付いたのは、個人や集団の健康被害のことには一切触れていないということです。

 

つまり、喫煙による健康障害や他者加害については常識だからなのでしょうか。

 

<健康のために吸い過ぎに気をつけましょう>などとやむなく無責任な表示をしている日本のタバコ会社とは大違いです。

 

吸い過ぎなければ健康は維持できるかのような誤解を与えているとすれば、明らかな詐欺です。

 

<吸い過ぎ>という定義や根拠のあいまいな表現を好むのも日本人の残念なところです。

 

日本人の禁煙意識、あえてする喫煙に伴う義務と責任感についてはまだまだ遅れていると考えざるを得ませんでした。