最新の臨床医学:腎臓病学<多発性嚢胞腎(PKD)>

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は高血圧の発症頻度が高いです。

 

逆に言えば、高血圧の患者さんの診療において、この病気を発見することがあります。

 

尿検査や血液検査などで腎機能が問題になるような場合、腎臓の超音波検査を行うことはスタンダードです。

 

高円寺南診療所で経験したこの病気の症例は、すべて高血圧がきっかけで発見しています。

 

 

この病気を疑うきっかけは、代表的な高血圧である本態性高血圧に比べて発症年齢が低いことです。

 

また、親から、<自分の体質が似ている、悪い所は良く似るものだ>と言われたというエピソードをうかがって、常染色体優性遺伝を想起して発見したこともあります。

 

ADPKDはPKD1遺伝子またはPKD2遺伝子の変異によるものとされています。

 

したがって、根本的な治療方法はありません。

 

超音波検査で腎の容積を計測しておくことは、その後の経過観察をするうえでも重要です。

 

しかし、診断ではなく治療経過の観察には、単純CTやMRIがより適切です。その場合は、適切な専門医療機関を紹介しています。

 

 

高血圧を伴うADPKDでは、降圧治療によって腎機能障害進行を抑制する可能性がありますが、どの降圧剤がより優れているのか、どの程度血圧を下げたらよいのかについての明確な基準はありません。

 

 

ADPKDで腎機能Ccr60mL/分以上かつ両腎容積750mL以上のケースでは、トルバプタンが腎容積の増加と腎機能低下を抑制する効果が示され、その使用が推奨されています。

 

ただし、重篤な腎障害(eGFR15mL/min/1.73m²未満)のある患者では禁忌であり、また肝障害にも注意が必要とされます。

 

 

参照:エビデンスに基づく多発性嚢胞腎診療ガイドライン2014(厚生労働省研究班)