最新の臨床医学:血液学<骨髄異形成症候群(MDS)>

高円寺南診療所の患者さんは各職場での人間ドックや地元の医療機関で受けた住民健診(杉並の結果を持参してくれる方が多いので日常診療でとても助かっています。

 

人間ドックや健診が大切なのは、症状が現れにくく、気づきにくい病気がたくさんあるからです。

 

 

そして50歳以上になると病気の数も増えてきます。

 

最も基本的な検査として血算(血球算定)があります。

 

血球系は3系統あり、赤血球、白血球、そして血小板です。

 

貧血(赤血球の減少)、好中球(白血球の主役)減少、血小板の減少が同時に観察されることがありますが、これを汎血球減少症といいます。

 

 

汎血球減少をきたす疾患は、貧血(再生不良貧血、巨赤芽球性貧血)、発作性夜間血色素尿症、骨髄線維症、癌の骨髄転移、脾機能亢進症、血球貪食症候群、膠原病(SLE)の他に骨髄異形成症候群(MDS)があります。

 

重症感染症でも生じます。

 

また薬剤が原因となることもあります。

 

 

このなかで、骨髄異形成症候群(MDSという病気は、血液病学の専門医でなければわかりにくい病気だと思います。

 

その理由は、多彩な患者群を含み不均一な疾患群から構成されているからです。

 

そして芽球が増加して急性骨髄性白血病に近い病態(前白血病状態)や、骨髄低形成で再生不良性貧血との鑑別が困難になる病態があるからです。

 

さらに癌化学療法(特にアルキル化薬)や放射線照射に続発する場合は、治療関連MDS(二次性MDSと呼ばれ、対応は容易ではありません。

 

 

幸いなことに、治療法が進歩し、以前は造血細胞移植のみでしたが、

 

高リスク症例に対してアザシチジンDNAメチル化阻害薬)で血液学的改善が得られるため、これが適応となります。

 

 

低リスク群としては、del (5q)、すなわち5q欠損がある症例(5q-症候群:5番染色体長腕部欠失を伴うMDS)があります。

 

このタイプは中年女性に多く、骨髄中の芽球は5%未満で白血病転化(急性骨髄性白血病への移行)が起こりにくく、また無効造血の他、高度な大球性貧血と比して低分葉巨核球で血小板は正常あるいは高度であることが多く、レナリドミドが著効します。

 

このタイプは約3分の2の患者で輸血が不要となり、異常核型も減少あるいは消失し、予後は比較的良好です。

 

赤血球輸血が頻回になる場合は、鉄過剰症を予防するために除鉄療法を検討して、生存期間の改善をはかります。

 

 

骨髄異形成症候群は、無効造血のため、通常は貧血(ヘモグロビン減少)となります。

 

染色体核型、血球減少、骨髄有核細胞の芽球の割合などは予後因子として重要です。

 

骨髄所見で好中球の偽ペルガー核異常など形態異常を認めます。